48.思いのほか深刻
カストルさんの魔物講義はまだまだ続く。
「王都の周りだけでも6つの迷宮とそこに住むボスモンスターが確認されていて、迷宮に住むモンスターが人里を襲っています。それを退治して皆を守るのが俺たち冒険者の仕事です」
「なるほど。じゃあ、鳳凰は退治されたからもう安全なんですか?」
「そうとも言えません。迷宮は癪気と呼ばれる悪い気が溜まる所に出来ると言われていて、一度退治して迷宮が無くなっても時間が経つとボスが復活して、また迷宮が活発になります。
ボスが復活してすぐは弱いけれど、時間が経つにつれて周りの魔素を吸って強くなっていくから、どんどん手に負えなくなるんですよ」
「それは……大変ですね」
「大変どころではないですよ? 現に、隣国は毒蛇を退治できずに強大化し過ぎてしまい、とうとう国が無くなりました」
「えっ」
思いのほか深刻な話じゃん。
モンスターに国を乗っ取られるとか地獄絵図以外の何物でもないし。
この世界、そんなにヤバい所なの?
「まぁ、今日はそんな怖いボスが討伐された記念ということで、楽しんで行ってくださいね!
こちらが我らのクランホームです!」
テンションの下がった私に気を使ってくれたのか、カストルさんが大きめの声で案内してくれる。
「おーい、みんな! 女神さんが来てくれたぞー!!」
「アカリさん!」
「はじめまして! いつもありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
「おかげで《鳳凰フラカン》を討伐出来ました!」
「麻婆豆腐マジでおいしいっす!」
私が想像してたような筋肉お兄さんたちに囲まれて、更に大きな声でやんややんやと色々言われて軽くパニック。
てかどうしたらいいの?
「おい! お前ら、鎮まれぇ!」
それを一気にかき消すほどの大声。
出処を探すと、今周りを囲んでいる人たちよりも更にひと回り以上大きくて、キラキラ輝く金髪を逆立てた人が、こちらへ向いて歩いて来た。
深緑の鋭い視線が突き刺さるようで。
……うん、ちょっと、怖い。