21.はじめての栽培
「よし、100個作れたんで1個3万キラで買いますか? と。メッセージ送信っ」
実際はもうちょい丁寧な文書で書いたよ?
「しかし、大丈夫でしょうか?」
不安げなスピカちゃん。
「何が?」
「一般的に、★★★のアイテムというのは非常にレアなものです。そもそも★★★の素材がほとんどドロップしませんからね。
それをこんなに沢山作れると言うことが分かったら何か疑われたりしないでしょうか……?」
「たしかに、変な言いがかりを付けるひとも出てくるかもね。
でも、ここは現実世界じゃないんでしょ?」
「まぁ、はい」
「じゃあ家に押しかけて来たりとかはしないわけだ」
「それはそうですね」
「メッセージで失礼なこと言ってくるとかその程度なら別にいいよ。そんなに困る訳じゃないし。
それより、私の作るものが欲しいって言ってくれる人がいることの方が嬉しいよ?」
「アカリさまがポジティブにそう言える方でとても良かったです。
では、引き続き麻婆豆腐を作りますか?」
「うーん。それが、だいぶ飽きてるんだよね。
それに、この人たちだって一日で100個使い切りはしないだろうから今日はもう作らない!
次はまだ見れてない庭を見たいな。
だって、料理だけして一日終わるのは嫌だもん」
「それもそうですね。ではお庭に出ましょうか。
そろそろ日が傾いてくる時間ですので早くしましょう」
二人連れ立ってでた庭は、当然だけど何も植わっていなかった。ただの土だけ。
「農業には特にスキルはありません。種を植えてから、時間経過で育つのを待つだけですね」
「そこはゲームっぽくないんだね。どのくらいかかるの?」
「やってみた方が早いと思いますのでやりましょうか。こちらににんじんの種がありますので、植えてみてください」
《にんじんの種》★
育つとにんじんになる種。
「どういう風に植えるの?」
種を植えるなんて小学校の観察日記以来だよ。
「この、土が盛り上がったところにパラパラしてください」
パラパラ〜
《にんじんの苗》
収穫まで11:48
「この表示、どういうこと?」
「見た通り、種を植えてから12時間で収穫可能になる、ということです」
「めっちゃ早いねっ!」
「そうでしょうか?」
「普通に一年がかりだと思ってたよ」
「またまた〜 そんなに待って居られませんよ〜」
冗談っぽく笑いながらくるくる飛ぶスピカちゃん。
うん、スキルが無くても、この世界はやっぱりゲームっぽいね。