2.【森羅の叡智】
「わ! かわいい!」
気がついた時に立っていたのは、思わず歓声をあげてしまうほどかわいい家の前だった。
まるで絵本に出てくるみたいな赤い屋根と白い壁の木製のお家。
周りは木々が生い茂る雑木林で、その中を切り開いて作られた庭はまだ何も植わっていないけれど、可愛らしい白い柵で囲われている。
ゲーム、と言いつつマ○クラみたいに荒野に置き去りとかだったらどうしようかと思ってたけど、かなり高待遇じゃない?
「ふむふむ、ここが私のおうちかぁ」
色々見て回ろうと一歩踏み出すと。
ぴこん
真横の赤いポストから、手紙マークの青いアイコンが飛び出した。
私が家の境界を踏み越えた事で受信したのかな?
もしくは、私に見えるようになったのかも。
かなりゲームっぽい世界のようだからアイコンをタップしてみたのだけれど特に変化なし。
「ん?」
普通に裏から開けたら、普通に手紙が一通入っていた。
「こういう所はゲームっぽくないのか」
基準がよくわからんな!
とはいえ手紙を開けてみる。
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親愛なる愛弟子に、なるはずだった君へ
まずは長旅お疲れ様。
そして、遠路はるばる来てくれた君に、こんな形でしか挨拶出来ないことを詫びたい。
様々な事情があって、君とは会えなくなってしまった。
せっかく私が持つ【森羅の叡智】を求めて来たというのに、得られないとは話が違う、思うだろう。
今更言うまでもないことだとは思うが、【森羅の叡智】とは、最高品質の素材が扱えるようになり、世界の全てのものを生産できるようになった者の称号だ。
多くの人が求めるも道半ばで志が折れてきた最高の生産者を目指す君に、直接私の全てを教えられないことを残念に思う。
しかし、今の私ができる限りの形で、【森羅の叡智】を習得する術をこの家に残してある。
君は特に『生産』に才能があるという事だから、きっと全てを活用して【森羅の叡智】を自分のものとすることができるであろう。
諦めず、油断せず、日々全てを糧として、【森羅の叡智】を会得してくれることを、願っている。
君の師となるはずであった、ベガより
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なるほど。
私にはこういう設定が与えられているのか。
旅人だから出自が怪しくても大丈夫なわけね。
そして、全ての物を作れるようになって生産の最高称号【森羅の叡智】を獲得するのが目標、ということも分かった。
現実はゲームのように目的がないと思ってたけどそうでも無くて、システム側というか、多分あのケサランパサランが設定したんだろう。
私としても【森羅の叡智】は是非とも欲しいから、取れるように頑張ろう!