16.販売してみよう
「で、この麻婆豆腐は幾らにしたらいいと思う? 30万は高くない?」
「高いと感じるかも知れませんが、あまり安くするとそれで儲けている人が困りますよ」
「うーん、でも、素材の値段からしたらさすがに貰いすぎでしょ?
3万くらいにして、その分たくさん出すのはどうかな?」
そう言うとスピカちゃんはかなり悩んでいる様子。
「私も市場のことはあまり分からないんですよ。
私が知っているのはこの家にあるものの事だけですから。
この家の中に、生産に関わる本や知識は全てありますが、販売のことについてはほとんど何もありませんので……」
「それもそうね。じゃあ、いっぱい売る方向でいってみようか。
たくさん麻婆豆腐作らないとね! 目標は、20こ!」
単純作業は嫌いと言いつつも、目標や目的があると頑張れる。
何より、お金になるって分かったからね!
私は現金な女なのだ!
さっきと同じ手順で1個目完成。
レア度や効果も同じなので、同じ素材と手順でやれば同じものが出来ると分かったよ。
そして5個目を作り終わった時。
「スピカちゃん、入れるお皿がないよぉ……」
そう、この家にそんなに大量のお皿はない。
「すっかり忘れていました! 安めでも良いのでひとつ先に売ってみて、そのお金でお皿を買いましょうか」
「やっぱりそうしないと無理だよね。私、現状一文無しだし。
検索してみたら、一番安いお皿ひとつ300キラくらいだから、20個買うとして6000キラは要るよね。でも、そんなに安くてもいいかなあ?」
「せめて1万でどうでしょうか? 他の人は30万ですし。もし売れなければ下げる方向で」
「よし、じゃあ1万で売ってみよう!」
怖々売りに出してみて、2人で顔を寄せあって販売画面を見つめていると、ものの2分も経たないうちに売れた。
「やっぱり需要あるんだねぇ……」
2人ともため息まじりにそう呟いた。
自分の作ったただの麻婆豆腐にそんな価値があるとはねぇ。
実際売れたら実感しちゃった。
「とにかく、売れることは分かりましたし、お皿を買って続きを作りましょう」
「それもそうだね」
シンプルな白い陶器のお皿をまとめて沢山売っている人が居たのでそれを20枚買って、また麻婆豆腐の続きを作りはじめた。