127.ポルックスの感動
「アカリ! ありがとうっ!!!!」
医務室に入ってきたポルックスは、開口一番、耳が潰れそうなほどの大声でそう言った。
「いえいえ〜。ポルックスは大丈夫だった?」
「全く大丈夫じゃなかった! 死んだと思ったし、★★★の回復薬がなければ確実に死んでいたからな!」
「それは大変だったねぇ。もう、調子は戻った? 大丈夫?」
「ああ! 薬を使ったら、もう全く悪い所は無くなったよ!それもこれも、アカリのおかげだ!!
ありがとう!!」
とっても感動しているようで、暑苦しいくらいに感謝してくれる。
「私だけで出来たことじゃないよ。★★★をあんなに沢山作れたのはプロキオンのおかげだし、大量生産出来たのはカペラちゃんのおかげだし。
私はただ手を動かしただけで、誰にでも出来ることだから」
「そんなことはない! あなたは救いの女神だ!
神が我ら人間に使わしてくれた天使だ!!」
ヒートアップしすぎたポルックスはまるで話を聞いてくれない。
でも、それだけ大変な目に遭ったのだろう。
それに私が役立てたというのは少し誇らしくもあるけど。
「天使でも女神でもないから。私はただの人間だからね?」
それだけは忠告しておきたい。
変に信仰対象になったりしたら困っちゃうからね。
「今回のことで、みんなに生産の大切さを分かってもらえたかな、と思うんだけど、どうかな?」
私が気になるのはそこだ。
有効だと分かって貰えたら、出来ることも増えるだろうから。
「もちろん、身に染みて感じたよ。俺を含めて、死ぬはずだったのに生きている、と言う奴は沢山居る。
戦死者は、戦いの規模の割には非常に少なかったしな。まあ、★★★の薬がもっと早くにあれば、とは思ったが」
そう、だよね。
私が遅かったばかりに、救えるはずの命が救えなかった。
「いや、違うんだ、申し訳ないっ! アカリにこれ以上何かを求めるのは筋違いだった!」
私の表情が暗くなったのを見て、焦ったポルックスが言葉を重ねる。
「戦いが始まる前から、きちんと準備をしておかなければならなかったんだ。
現に、アカリが★★の薬をカストルに渡してくれていたから、戦線を維持できたのだから!」
「そういえば、纏めて渡したんだった。早速役に立って良かったよ」
「本当に助かったんだ! ありがとう!」
身体の大きなポルックスが大袈裟な動きで感動していると、結構迫力があるよねぇ。
今まで生産に興味無さそうだったポルックスがここまで思ってくれてるのは、チャンスだ。
この国に、生産を広めるための。