124.目覚め
「んぅ……」
目を覚ますと知らない部屋で。
「アカリさまああああぁぁ!!!」
んべしっ
スピカちゃんが勢いよく抱きついてきた。
顔にへばりつくみたいになって鼻がちょっと痛い。
「心配しましたよぉぉ!!」
「んー……。ここ、どこ?」
「夕嵐の双翼の医務室です。戦いが終わって、倒れてしまったとミンタカさまから聞いて、慌てて戻って来たんですよ! 数時間で目を覚ましてくれたから良かったですが……!」
「スピカちゃん、心配掛けてごめんねぇ。ありがとう」
「いえ、アカリさまが無事ならそれだけで充分です!」
ぼろぼろと泣くスピカちゃん。
とっても心配したんだろう。
そうさせたのは私なんだから、黙ってなでなでするだけにする。
「みんなは、大丈夫そう……?」
「ええ、さすがに普段から鍛えているだけはありますね。皆さま、アカリさまのことを心配していましたよ」
「アカリ! 目を覚ましたか!?」
話し声が聞こえたのか、すごいスピードでプロキオンが部屋に突っ込んできた。
「うん。大丈夫よ、ありがと」
「いきなり倒れたからびっくりしたんだぜ!
アカリは救いの女神でとーっても凄い人だけど、やっぱり弱いところもあるんだよな」
「いや、救いの女神って何よ?」
「アカリのおかげで生き残れた奴が、一体何人居ると思ってるんだ? 10や20じゃ利かないぜ?
それに、怪我で離脱した奴らが治癒して戦線復帰してくれたからこそ、何とか勝てたんだ。
怪我したままだったら到底勝てなかったよ」
「そうなんだ……。役に立てたみたいでよかったよ。
それで、何が起こってたの?
戦ってた、ってことしか分からなくてね」
自分のこととは思えないくらいの褒め称え具合にちょっと居心地が悪くなって無理やり話題を変える。
「幹部の説明によると、闇の迷宮《オニキス深淵》の集団暴走じゃないか、ってことだ。
けど、《オニキス深淵》はまだ討伐から3ヶ月くらいで、集団暴走が起きるほど成長はしていない。
何故起こったのかは不明、って言われた」
「なるほど。集団暴走になったら、毎回あんな大変なことになってるの?」
「いいや。起こること自体が稀だけれど、万が一集団暴走になったとしても、城壁を突破されたことは今までに無かった。
それが、今回破られたからこんなに被害が甚大になったんだ」
「へぇえ……」
知らないことだらけな上、まだ頭がハッキリ動いてくれてない。
熱弁してくれてるプロキオンには申し訳ないけど、あまり良い答えは返せなかった。