120.待ち望んでいた音
ぴろん
「はっ!?」
待ち望んでいた音が聞こえた。
メッセージの通知音。
「ミンタカ、ありがとーー!!!」
思わず叫んでしまった。
とうとうミンタカが家に着いて、大量の薬草を送ってくれた。
もし彼女が今ここにいたら、間違いなく抱きついていただろう。というか次会ったら絶対そうする。
一旦、今まで使っていた薬草のカゴを横に避けて、新しいカゴを置く。
そこに入るだけ目いっぱい薬草を出して。
「よし、OK。作るぞ!」
またさっきと同じように手を動かし続ける。
「カペラちゃん、今作ってる薬はレア度★★だから、より重傷な人に使ってあげて欲しい!」
「えっ、★★?」
回復薬でさえ身近ではないのに、★★はもっと意外だったらしい。
でも、彼女は戸惑いつつも指示に従ってくれた。
「掛けるよー? えいっ!」
キュポンと栓を外して薬を振り掛けると、さっきまでとは比べ物にならないほど高い効果だった。
死んでるんじゃないかと不安になるくらいだった人が、何とか身体を起こせるようになったのだから。
「まだまだいっぱい作るからね!」
少し軽めな、ギリ動けない、くらいの傷の人は完治している。
「すまん、本当にありがとう! これで戦線に戻れるっ!」
武器を取って駆け出して行く背中に向かって、叫ぶ。
「もし、夕嵐の双翼のプロキオンって子を見かけたら、私が探してたって言っといて!」
ここにプロキオンが居れば、量は少なくても★★★の薬が作れる。
彼は戦闘はあまり出来ないと言っていたし、こちらに来てくれた方がありがたいんだ。
「了解っ! 絶対連れてくる!」
薬で回復したことに余程恩を感じてくれているのか、力強い返事が帰ってきた。
ミンタカからのメッセージによると、土妖精の皆さんはこの状況を知って、謎の妖精パワーをフル活用して薬草を育ててくれているらしい。
もう一時間もしないうちに畑一面分が届くとのこと。
今ある量でも中々減らないくらいに大量だから、★★の薬草が足りなくなる心配はしなくても良さそう。
もし無くなっても★で作り続けたら良いだけだし。
薬草を買うというお仕事が無くなったカペラちゃんは、帰るかと思いきやそのまま配布係になってくれている。
出来上がった薬を鍋から横に移すだけの時間ももったいない今だから、少しでも手伝ってくれたら本当に嬉しいんだ。
「嬢ちゃん、ありがとよ!!」
「よし、もう一戦行くぜ!!」
元気を取り戻した人々が、戦いへ戻って行く。
これで、少しは助けになれているだろうか。