113.★★の回復薬
「★★ということは、表面に見える範囲の傷はほぼ治るんだ。かなり深くてもな。
それに、小さなヒビなら骨まで治ることもある。それがどれだけ大切なことか、分かるか?」
カストルさんの目つきが真剣どころじゃないくらいに真剣だ。
「★★にして、尚且つ効果の高い薬にするには、大きさを揃えて、ちょうど良いサイズで切って貰わなきゃいけないの。
だから、わざわざプロキオンを指名してるんだよ。他の人には難しいらしいから」
「そうだな、嫌がる奴も多いだろう。
だが、★★の回復薬の為ならやる。一本作るのに、どのくらい必要だ?」
「これくらいだよ」
一掴みを示して見せると。
「よし、分かった。暇を見つけてにはなるが、俺もできる限り生産しておこう。
作ってアカリに送れば良いな?」
「いや、私は経験値が欲しいから錬成させてもらってるけど、急ぎで必要なら錬成までやってもらってもいいよ?」
「今すぐ錬成が出来る奴を探す方が難しい。
ここにいる生産メンバーなら出来るだろうが、麻婆豆腐やポテサラも欲しいからな。
出来ることはやるぞ」
カストルさんがやる気を出してくれているのはとっても有難い。
素材が増えるのもそうだけど、このクランの中での生産の地位が上がってくれたら嬉しいんだよね。
「ちなみに、この前頼んだ素材なんだけど」
「ああ、今取りに行かせているぞ」
「ありがと。それ、この前頼んだよりも沢山欲しいんだよ。出来そう?」
「あれだけ沢山の★★回復薬を売ってもらったんだから、素材狩りくらいいくらでも行く。
どの程度必要だ?」
「この前お願いしたのの、五倍。いける?」
私の予想より、アルマクさんが積極的だったから。
もっと広げても良いかな、と思ったんだ。
「五倍か……。少し時間を貰えるか?
麻婆豆腐のおかげで、ルビー火山での素材はもう集まっているんだ。
だが、他のダンジョンはなかなか進んで居なくてな。
特に、次のスタンピード候補、エメラルド大森林の攻略が遅れている。ルビー火山の《鳳凰フラカン》ほどではないが、《世界樹テペトリ》も長く討伐出来ていない」
「長く、って具体的にどのくらい?」
「ボス復活から一ヶ月が勝負と言われている。その間なら、比較的楽に倒せるな。
だが、半年を越えると《鳳凰フラカン》のように、手が付けられなくなるから、それまでには討伐しなければならない」
「思ってたより短いね」
十年スパンなのかと勝手に想像してたけど、意外とすぐに成長しちゃうんだ。
野菜だって成長が速いんだから、迷宮も速いのかな。
「エメラルド大森林の《世界樹テペトリ》は前回討伐が半年前、倒してから一ヶ月は復活しないから、復活から五ヶ月ほど。そろそろまずい時期に差し掛かっているんだ」
「猶予が一ヶ月しかないのはツラいね。
二ヶ月に一度は討伐しないといけなくて、それが六ヶ所でしょ? 大変だあ」
そりゃあ、戦闘以外のことに目を向けられなくもなるよね。