112.回復薬の効果
クランに着くと、カストルさんが待ち構えていた。
前に来た時はのんびり中を見ながら探したけど、今は最早鬼気迫る形相。
「アカリ、あれは何だ!?」
「いやいや、何と言われても」
「★★の回復薬だぞ!? どれだけの価値があるのか、相変わらず分かっていないんだろうな!」
「うん。HP110回復って、意味ある? って思ってるよ?」
「……まさかお前、自分で回復薬を使ったことがないのか?」
「特に使う機会はなかったね」
「いいか、回復薬の効果は、HPの回復だけじゃない。数値的にはHPが回復するが、現実には傷が一瞬で癒されるんだ」
「へー、それはすごい」
「★の回復薬なら、軽めの外傷は大体治るからな。
血が流れなくなって、更に痛みが無くなって戦線復帰できる。どれだけ価値があるのか分かるか?」
「それなら、作ればいいじゃん」
「アパー草をそのまま貼ってもそれなりの効果はあるからな。あれば買うし、使うが……。作るのは何となくハードル高いんだよ。
そもそも設備もないしな」
「でも、夕嵐は持ってるじゃんか」
「この部屋も、アカリが来るから突貫で作ったやつだぞ? 戦闘に関係ないものにお金を払う気はないからな」
出たよ、この世界の戦闘第一主義。
カストルさんが、理解のある人で良かったよね。
「みんな、ほんとに生産嫌いだよね。
でも、この★★の回復薬は、私じゃなくても、全然普通に作れるんだよ?
今だって、一番大事なところはプロキオンがやってくれてるし」
「あいつが?」
「そう。プロキオンがアパー草を切って下準備をしてくれているの。私はスキルを使ってるだけ。
説明するより見せた方が早そうだし、行こ」
カストルさんを連れて生産室へ行くと、ミンタカは作業をしていたけれど、あとのメンバーはのんびりしていた。
しかも、サブマスカストルさんが来たというのに作業に戻る気配はなし。
文化の違いを改めて感じたよね。
「プロキオン〜? ちょっといい?」
「どうした?」
「プロキオンが切ってくれてるアパー草、あれ今はあるかな?」
「まだ送ってないのがあるよ。はい」
朝から作ったらしき草の山を渡されたから、それをもとにカストルさんに説明する。
「これ、元々は普通にワールドマーケットで買ったアパー草なんだけど、こうして切ってからスキルにかけると、★★になるんだよねぇ。不思議」
実際に、★と★★の水薬を作って見せる。
単純作業なのでぱぱっとやってしまったが、カストルさんはめちゃくちゃ真剣に見つめていた。
「これは、戦闘に革命が起こるぞ」
???
それ、毎回言ってない?