105.生産部門
「で、さっき言ってた生産部門の話なんだけど」
プロキオンには早速作業に取り掛かって貰う事になって、ミンタカ達のいる作業部屋へ行った。
そして、気になっていたことをカストルさんに聞くことにしたんだ。
「ああ、それの話だな。
今までは戦闘スキルを上げることを第一目標にして活動してきたが、上の方の連中はレベル上限が近くなっているようで、ほとんど上がらないんだ。
より格上の魔物を相手にすれば上がるだろうが、それには危険度が高すぎる。
手詰まりになっている所だったんだ」
「なるほど」
「だが、ポテサラや麻婆豆腐なんかのアイテムがあれば状況は変わる。鳳凰フラカンの討伐も出来たし、ルビー火山の迷宮でレベル上げをするのは前より格段に楽になった。
それに《フリルエプロン》を装備するようになってからは、集中の効果で命中率アップやクリティカル率アップがあって、王都周辺の魔物退治も随分進んだ。
これからは戦闘スキルを上げるだけでなく、アイテムの生産にも力を入れるべきだと考えているんだ」
熱く語るカストルさんはクランと王国の未来を真剣に考えていて、とってもかっこよかった。
「私も、出来ることは協力しますよ」
「ありがとう。ただ、アカリには助けられてばかりだから、こちらでできることを増やしたいと思っているんだ。
麻婆豆腐もポテサラも素晴らしい物だから、アカリが作ってくれるものだけに甘えていてはいけない」
「ちなみに、生産部門のメンバーは誰になる予定ですか?」
「トップはベテルギウスで、ミンタカ、アルニラム、アルニタク、それにさっきのプロキオン。
それでどうだ?」
「うーん……アルニタクはあんまり興味なさそうだったから、本人の希望を聞いてあげてね?」
「もちろん。やる気のない奴は伸びないからな。
やる気だけあっても伸びないのが悲しいところだが」
「じゃあ、プロキオンみたいに明らかに戦闘に向いてない人の中で、やりたいって言ってくれる人が居るか、探しておいてくれる?」
「そのつもりだ。出来るだけ早くにメンバーを増やせば作れるアイテムがどんどん増えて、戦闘がしやすくなるはずなんだ。
そうしたら、クランメンバー全員に恩恵があるし、生産職に付きたいと言う人も増えるだろう」
この世界では戦闘が全てで生産は後回し。
そんな常識に囚われずにいち早く生産の重要性に気づいて、さらにそれを広めようと努力してくれるカストルさんは凄い人だと思う。
そんな人に出会えて本当に良かった。