5 第5話:GUNS決勝進出者
本部につき、また美人な案内ロボットに指定された部屋まで連れていって貰った。
そこには羽山とどこか幼さが抜けきれていない男がいた。そいつは俺のことを見るなり駆け寄ってきて、屈託のない笑顔で挨拶してきた。
「こんにちは、あなたが田辺さんですね?ボクは岸宮新って言います。今日はどうぞよろしくお願いします」
「おう、田辺浩一です。よろしく………」
俺が困惑しながら羽山に視線を向けると、空気を読んでくれたようで間に割って入ってきてくれた。
「こちらは今年の養成学校首席卒業生の岸宮新だ。もともと彼にNeoが戻ってくるまでの引き継ぎを頼んでいたが、田辺さんが立候補したため試験を受けてもらうことになった」
『首席』というの言葉を聞いて俺は岸宮新の顔をまじまじと見る。
こいつは俺と全く同じ称号持っている。しかしかつての俺とは違って、自分を律することができているようだ。言い表せない感情が埋めくのを自覚する。
「伝説の先輩の田辺さんに会えてとても誇らしいです!」
首席という言葉を聞いた後だと、こいつの言っていること全てが皮肉に聞こえる。
これはいけない傾向だと思い直し、大人な対応をする。
「初めまして、岸宮新さん。俺も今年の首席卒業生くんにあえてとても嬉しいよ」
「初めまして!あとボクのことは新と呼んでもらって構いません。みんなもボクのことは新と呼び捨てにしていますから」
「分かった。俺も浩一と呼んでもらって構わない。俺たちの間にはたった5年の差しかないわけだからな」
「ありがとうございます浩一さん!」
言葉にいくらか皮肉的なニュアンスを込めたつもりだったが、新に効いている様子は全くない。
気づいた上でいなしているのか、それとも皮肉にも気づかないバカなのかは分からないが、これ以上喋っていても虚しいだけだと思い、俺は口を閉ざした。
俺たちに一瞬沈黙が流れた時、タイミングを見計らっていたように羽山が説明を始めた。
「これからあなた方にはマインデバイスを使ったAR(拡張現実)ゲームを行ってもらう。Neoとして活動するならVRゲームはもちろん、ARゲームも触る機会が多くなるからな。今回はこちらを採用させてもらった」
〈あなたのマインデバイスにhaneyamaが接続の許可を求めてきました〉
メッセージが送られてきた。もちろん俺はYESを選択する。
〈デバイスの同期が完了しました〉
何もなかった白い部屋に、岩と木や草むらなどが出現する。
さながら昔から本当にここにあったように違和感がない。3年前からARゲームはずっとプレイしていなかったから、技術の進歩を感じる。
これはGUNSをモチーフにしているのだろう。所々同じ要素があることに気づく。
現実世界にいるはずなのに、まるでゲームの中に入ったかのような錯覚を覚える。何回もARゲームはプレイしているはずなのに、未だに慣れないのはどういうわけなのだろう。
これがマインデバイスによるARだ。ちなみにこの本部が置かれている都市内ならば、マインデバイスさえあればどこでもARゲームを楽しむことができる。
「これから行ってもらうのは、銃を使ったシューティングゲームの1on1だ。相手のHPを先に削った方が勝者だ。互いに指定の位置についたらゲーム開始とし、開始と同時に銃が配られる。時間制限はない。どちらが先に相手を倒したかをコンマ単位で計測するため引き分けもありえない。ここまでで他に何か質問はあるか?」
「分からないことだらけなんですけど……銃の玉に限りはありますか?サプレッション機能は付いていますか?射程有効範囲はどれぐらいですか?」
「玉に限りはない。思う存分撃ってくれて構わない。またあとの質問には答えられない。ゲームが開始されてから、自分の目で確かめてもらいたい」
羽山が基本的に銃の性能については答えられないと補足する。
俺は心の中でほぼ何も分からないじゃん、と突っ込む。新も同じように思っているらしく、首を傾げている。
「銃関連については分かったので、続けてもらってもいいですか?」
「そうだな。銃の他に目眩し用のスモークと、超至近距離で使えば爆発で相手を一発で倒すことのできる手榴弾が与えられる。ちなみに自分の手榴弾の爆発でダメージを受けることはない。
また岩や木などの障害物は玉を100発打ち込めば壊れるようになっている。そしてこれが上から見たマップだ」
羽山からマップが送信されてきた。そこにはこれから叶と戦う地形が簡易的に表示されていた。
等間隔に高い木があり、その間に岩と低木が並んでいる。そして地面には伏せれば体を隠せるぐらいの草が生えている。
非常にシンプルなマップだ。この地形を利用してどうにかすることは難しいだろう。単純なシューティングの腕前の勝負ということだ。
ただ互いの初期位置はあらかじめ決まった場所にある。ランダムではないというところには気をつけなければならない。
俺がうんうんと唸っていると新が話しかけてきた。
「浩一さんはシューティングゲームの経験ってあるんですか?」
「俺は基本的にどんなゲームでもするんだけどな。でも一応ついこの間までVRのFPSシューティングゲームばっかやってたから、得意な方ではあると思う」
「へぇ、そうなんですか……ならいい勝負ができそうですね!お互いに頑張りましょう」
俺がそうだな、と言っていると羽山が口を挟んできた。
「ちなみにそこの岸宮新はこの前のGUNSの日本予選で一位通過したチームの1人だ。この話は……どうやらその様子だと伝えていなかったようだな」
「……そんな話、今初めて知りました」
驚きの事実を聞かされて、脳が数秒フリーズした。
新を見ると相変わらず屈託のない笑みを浮かべてやがる。
「これをわざわざ伝えるために俺にシューティングゲームの話題をふったのか?」
「まさか、そんなわけないじゃないですか!僕はただ興味本位で聞いただけですよ。そこに他意はありませんって」
「へぇ、そう。結構意外といい性格してるな」
これで俺が新に負けられない理由が二つできた。
一つはあのチャンピオンシップの時のリベンジを果たすためで、もう一つはこのムカつく顔に一泡吹かせてやることだ。
「対戦、よろしくお願いします」
俺はゲームをする前の定型文を言って握手を求める。
新はそれに一瞬だけ驚いた様子を見せたが、またいつもの笑顔を見せて握手に応じてくれた。
「はい、もちろんです。いい試合にしましょう」
俺はその手を少しばかり固く握るのだった。
【☆☆☆☆☆】 ∧ ∧
(・∀ ・) <これをな
ノ( )ヽ
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【★★★★★】 ∧ ∧
ヽ(・∀ ・)ノ <こうするのじゃ
(( ノ( )ヽ ))
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