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48 オーティナティック実況(最終話)



 マリアさんの部屋には4人の子供が騒がしく遊んでいた。男女混合でとても仲良さそうだ。


「みんな、今からこのお姉さんと大事な話があるからちょっと部屋から出てくれる?」


「えー、なんでー」

「マリアも一緒に遊ぼうよー」


 彼らは口々にブーイングしている。マリアさんはそれを笑顔でなだめている。


「はいはい、ちょっとだけだからね?」


 マリアさんが優しく頭を撫でると、子供たちも渋々と言った様子でそれに従った。


「仕方ないなー、今日だけ特別だよ」

「明日は一緒に遊んでね!」


 子供たちがどたどたと部屋から出ていった。親を亡くした孤児たちと聞いていたが、想像以上に元気な子たちだ。


「元気があっていいですね」


「ちょっと元気よすぎるのも困りものですけれどね」


「子供っていうのはあれぐらいなのがちょうどいいんですよ」


「確かにそうですね。初めはみんな暗かったので、今のように元気に遊んでいるのが一番かもしれません」


 マリアさんからの口調からは子供たちへの愛情が見て取れる。言葉は少し悪いが、赤の他人の子供にここまで愛を注げる人は珍しい。


 マリアさんがそばに引っ付いて離れないマモルくんの手を握った。


「ちょっとだけでいいから、Neoさんと2人きりにしてくれる?」


「……大事なお話なの?」


「そう、とっても大事なお話しなの」


「わかった。じゃあ僕、みんなと遊んでくる!」


 マモルくんはマリアさんからパッと離れて、さっき部屋から出ていった子供たちの方へ向かった。


 俺は意外だった。マリアさんにべったりなマモルくんが、こうも彼女の言うことを素直に聞くとは思わなかったからだ。

彼も思っていたよりも子供ではなかったということだ。


「それで、渡したいものとはなんでしょうか?」


「今ご用意しますね」


 マリアさんが自分の指につけている指輪をゆっくりと外した。

 緑色の小さな宝石がはめ込められていて、きれいな装飾がなされている。


「これが、その渡したいものなのですか?」


「はい、そうです。亡くなった息子の形見でございます」


「そんな、息子さんの形見なんて受け取れませんよ」


 俺はもちろん遠慮する。

 宝石なんて貰っても役に立たないし、なにより形見なんていうものは赤の他人の俺が持っていても仕方ない。マリアさん自身が持っているべきだと思ったからだ。


「ぜひ貰ってください」


「しかし……」


「きっと役に立つと思います」


「本当ですか?」


 俺は仕方がないからその指輪を受け取る。

 一応効果を見てみよう。なにか戦闘に役立つ効果があるかもしれない。


 〈マリアの息子の指輪――オーディンをなんとしてでも倒さんという強い思いが宿った指輪。この指輪をつければ、オーディンに味方する者には害を、オーディンに敵する者には利を与える〉


 〈効果――思いの力によって一時的に強力なバフを与える。30秒間、対オーディン兵器:レールガンの攻撃力が5倍、対オーディン兵器:戦術用スパイクを用いた時のスピードが2倍になる。クールタイムは10分〉


 俺は指輪の想像をはるかに超える性能に驚いた。


「いやこれ強すぎるでしょ」


 30秒間攻撃力5倍かつスピード2倍って、有能すぎる効果だ。しかもクールタイムは20分と効果に対してお手軽だ。

 20分間ずっと隠れてクールタイムが終わるのを待って、敵を攻撃するという戦法も取れるかもしれない。


 注目すべきなのは攻撃力だけではない。スピードが2倍というのは攻撃力5倍よりもとてつもない性能だ。

 これがあるだけで回避方法の幅がぐっと広がる。


「貰ってくれますか?」


「もちろんですよマリアさん。あなたの思い、軍人として、また1人の善良な民として確かに受け取りました」


 これはファイヤーZとの死闘に見合う報酬と言えるだろう。

 俺は右手の小指にこの指輪をはめた。



◇ ◇ ◇



「中尉、スパイクは結局ここでも修理できませんでしたが、どうやって鉄道都市まで向かいましょうか」


「それに関してはおれに考えがある」


 俺は与えられた部屋に戻って、ユーゴとこれからについて話し合っていた。


「考え、とは?」


「このスパイクを修理することは難しいだろうし、おれはあのオーディンの自爆に巻き込まれて体がぼろぼろだ。歩くことはできるが、鉄道都市まで移動することは到底不可能だと思う」


「そうですね」


「だからおれはここに残るつもりだ」


「それは本気なんですか?」


「冗談でもなんでもない。おれは本当にここに残るつもりだ」


「そう、ですか……」


 ユーゴと一緒に旅できないのは本当に残念だが、本人がこう言っているなら諦めるしかない。


「わかりました。中尉の意思を尊重します」


「ありがとう」


「しかしここに留まる理由はさっき言った二つだけではないでしょう?」


「いやそんなことはないぞ?」


「どうせランさんともっと一緒に居たいんじゃないですか」


 俺の言葉にユーゴが顔を少し赤らめる。

 どうやら図星のようだ。もちろんスパイクもなく満身創痍のこの状態でワシントンに行くのが不可能なのは事実だろうが、ランと一緒にいたいという気持ちもあると思う。


「まぁ、あいつと別れてもいいなんて言うのは嘘になるだろうがな」


「中尉って素直じゃないですよね」


「……うるさい」


 俺は立ち上がって部屋の扉に手をかける。


「それじゃあ、そろそろ出発したいと思います。ここにずっと居ることはできないですし」


「もう行くのか」


 ユーゴが立ち上がって握手を求めてくる。俺はもちろんそれに応じる。


「無事を祈る」


「はい」


「おれもこの怪我が完治すればなんとかしてワシントンに向かうつもりだ。ずっと先になると思うが、あっちで合流できるかもしれないな」


 俺たちは軽く抱き合ってから、オーディンを必ず殲滅することを互いに誓い合った。



◇ ◇ ◇



 シェルターから出ようとすると、シェルターの方々が見送りに来てくれた。


 ランが俺の手を軽く握った。


「もう行っちゃうの?」


「はい、ワシントンへ向かおうと思います。今までお世話になりました」


「お世話になったのはこっちの方だよ。仇を討ってもらったのに全然お礼もできなかったし」


「いえ、オーディンを倒したのは軍人としての使命があったからです。それ以外の意味はありません」


「Neoさん、本当にありがとうね。シェルターのみんなもあんたにすごく感謝してるから」


 マリアさんが頭を下げてきた。彼女の後ろにマモルくんもいる。


「本当にありがとうございました。この感謝の念は言葉では言い尽くせません」


「そんな大層なことはしてないですよ。それに指輪もいただきました。これはきっと大事にします」


 そのほかの人たちにも挨拶して、俺はシェルターから出た。

 ハシゴをゆっくりと登っていて、地上への扉を押し開けた。


 〈ストーリーイベント【時の止まった思い出たち】をクリアしました〉

 〈【炎】のオーディンの討伐を確認しました〉

 〈対オーディン兵器:レールガン、対オーディン兵器:戦術用スパイクの基礎能力が上昇しました〉

 〈【集合シェルターKA3985】をワープ地点として登録することができます。登録しますか?〉


「YES」


〈【集合シェルターKA3985】をワープ地点として登録しました〉


 荒廃した世界の空気を肺に思いっきり吸い込む。なんだかリアルの世界のパワースポットの空気よりもずっと美味い気がした。


「やっとクリアしたーー!!!」


 コメント:おめ

 コメント:Neoちゃんすごい!!

 コメント:ファイヤーZとの戦いは本当にアツかった!

 コメント:マジでやばい

 コメント:初めて見るストーリーイベントでしたが、クリアできて本当によかったですね

 コメント:これは歴史的瞬間


 俺は両手を高く上に突き上げて、達成感に浸った。

やっと終わったよオーティナティック……次話からようやく本編に戻ります

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