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46 オーティナティック(16)

 ユーゴ・ラマリフェクタはNeoの指示を疑問に思っていた。何故わざわざランのいる方に狙って狙撃するのか。しかし自分は素直に従うしかなかった。理由はわからないが、文句を言わずに従うのが当然だと感じた。(これがNPCにプログラムされたプレイヤーの指示は絶対というものだと彼は知らない)


 Neoがオーディンの炎で瀕死になった時や、オーディンの攻撃がさらに苛烈になった時は流石に心配して声をかけたが、Neoに大丈夫だと言われたためそういうものかと自分を納得させた。


 彼はNeoの指示のほかにも疑問に思うことがあった。ランのことについてだ。

 彼女とはどこかで会った気がするが、詳しく思い出すことができない。昔のことだから忘れているのだろう。


 彼はそう思いながらもレールガンにエネルギーをチャージしていた。


 そして指示されたタイミングがやってきて、オーディンに向かってレールガンを撃った。

 その時のオーディンの異様な光景に恐怖で身がこわばりそうだったが、彼は引き金を引いた。


 自分の攻撃がそのオーディンを倒し切ったことに彼は驚いた。

 これほど強いオーディンと戦うのは初めてであるし、自分の基地を襲ったあのオーディンと同等かそれ以上のオーディンを、限界までチャージしていたとはいえレールガン一発で倒したという事実にショックを受けた。


 実際ファイヤーZはMAX―Zを発動させている時は攻撃力が跳ね上がりプレイヤーの行動を一切封じるという多大な恩恵を得られる代わりに、防御力が極端に落ちるというデメリットを抱えているのだが、ユーゴがそれを知る術はない。


 彼は自分の攻撃が決め手となったことに気分が高揚したが、オーディンの体が赤くなり膨張し始めたところで冷静になった。

 これは自爆の兆候だと悟った彼は、自分のレールガンを投げ出していた。


 走り出したのはランの身を思ってのことだった。彼は自分の危険を顧みず、助けることのできるかもしれない命を守ろうとした。


 ランが危ない、そう焦りながら彼女に駆け寄る。


「ユーゴさん、あたしのことはいいから早く逃げて!」


「おれは軍人だ。軍とは善良な市民のためにある。あんたを放って逃げる事はできない」


「でも………」


「いいからおれの手を掴め!」


「分かった。あたしは本当助けられてばっかだね……」


 そしてランを瓦礫の下から救い出し、オーディンから急いで逃げようとする。

 オーディンはすでに今にも自爆しそうだった。


 ユーゴはその様子を見て焦る。このままでは間に合わないかもしれない。


 そしてファイヤーZが自爆した。


 これではランを救うことができないと考えた彼はランを突き飛ばし、自分の身を盾にして彼女を守った。



◇ ◇ ◇




「おい、嘘でしょ………」


 ファイヤーZがランを巻き込んで自爆した。俺はその事実を頭を抱える。


「これじゃあ、意味ない………全員が救われるハッピーエンドじゃなきゃ後味悪いよ…………」


 いっそのこともう一度やり直そうかと考える。


 またファイヤーZと戦うことになるのは正直嫌だが、最高の結末を得ることができないのは我慢できない。

 俺は自分の思っている以上に、このゲームに感情移入していた。


 コメント:違う

 コメント:よく見て!

 コメント:まだ生きていますよ!


 俺ははっとして顔を上げる。爆発の影響でよく見えなかったが、今は前方をはっきり見ることができた。

 そこにはボロボロになって瀕死のユーゴと、それを抱いて泣き叫んでいるランがいた。


 まだ希望はある。そう思うと萎えていた心に再び火がついた。


「死なないで、ユーゴ!!!」


「ランさん、これはどういう状況ですか?」


「あたしが瓦礫に埋もれて身動きできなくなっていたところでユーゴがっ、助けてくれてっ…………」


 ランは喋るたびに嗚咽まじりの声をあげている。


「わかりました。ランさん落ち着いてください。中尉はまだ助かります」


「本当に?」


「えぇ、本当です」


 俺は自分のために取っておいた回復アイテムを取り出す。


 本当は自分のために使いたい。瀕死だから小石がぶつかった程度で死ぬかもしれないし、しかしユーゴを放っておくわけにはいかない。

 このゲームにおいて多分NPCはリスポーンしない。なら万が一の可能性を潰していく事は大切だ。


「これを使いましょう」


「それは……?」


「応急処置キットと言って、瞬時にHPを回復させることができるんです」


「それってつまり………」


「要するにこれを使えば瀕死状態から抜け出させることができるんです」


「本当?!」


「はい、本当です」


 俺はユーゴに応急処置キットを使用する。

 荒い呼吸で汗が体の穴中から吹き出していたが、これを使うと彼は少し落ち着いた。


「これでとりあえずの危機は脱出しました」


「よかった………」


「とりあえず中尉をシェルターまで運びましょう」


「えぇ、そうね、まだ完治したってわけじゃないもんね」




 俺たちはなんとかユーゴをシェルター内に運び込んだ。

 俺たちが帰ってきたことに気がついたマモルくんが真っ先に迎えにきてくれたが、ユーゴのひどい状態を見ると腰を抜かして部屋に戻っていった。


「あらまぁ、大変。どうなされたんですか?」


「マリアさん、中尉の治療をよろしくお願いします。ここに清潔な毛布や水などはありますか?」


「それなら礼拝所がいいと思いますよ」


「わかりました」

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