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44 オーティナティック実況(14〉

 俺はレールガンを敵に向かって構える。


 まずば第一形態だ。ここはノーダメージで突破したいところだ。

 距離を保ちながら妨害し続ければ、相手に接近を許さず一方的にこちらが攻撃し続けることができる。


 この第一形態は時間経過ではなく、与えたダメージ量が一定値を超えると解除され、第二形態に移行する。

 その仕様のために、俺はダメージを微調整しながらレールガンを撃ち込んでいく。


 ここで相手から攻撃をもらうのは論外だが、1秒の狂いもなく調整することも()()()()()()だ。ここでミスるとMAX―Zを突破できなくなってしまう。


 やつが第二形態に移行する。本番はここからだ。


 オーディンの体に炎が纏われる。

 暗闇の中に赤が映える。あの炎で攻撃されればすぐにゲームオーバーだ。気を引き締めよう。


 まずやつのスピードが大幅に上がり、急接近して来た。これは逃げようとするのではなくて、レールガンを何発か叩き込めば解除される。


 超スピードを妨害されたファイヤーZは炎の球を手から飛ばしてくる。

 こいつに当たると1発で殺されるが、スピードが遅いため避けるのは簡単だ。この炎の球攻撃は束の間の休憩と言っても良い。


 それを全て終えると、また超スピードで接近してくる。それをレールガンで冷静に対処して妨害する。そしてまた炎の球攻撃に入る。



 その一連の行動を3回繰り返すと、やつは炎のバリアをまとった。これが第三形態だ。


 そして炎の球が俺を焼き殺そうと飛んでくる。

 この炎球はさっきのものと違って威力は低い。しかし数がものすごく多い上に、速いため完全に避け切ることができない。

 さっきはここで瀕死状態にまで追いやられたからな。今度はダメージ量を最小限に抑えたい。


 迫り来る弾幕を必死に避ける。

 ここには隠れることのできる障害物や、スパイクで駆け上がることのできる壁などがほとんどないため弾幕を避ける難度は相当高い。


 バリアを削り切らなければ、この弾幕地獄は終わらない。

 ここは焦らずじっくりと相手のバリアを削っていくのが重要だ。


「大丈夫か?!レールガンを撃った方がいいんじゃないか?」

「大丈夫です、さっき言った通り指定したところにオーディンが来た時にだけ撃ってください!」


 ユーゴが苦戦している状況を見て心配してくれる。俺はここでやつにレールガンを撃たれると計画が全て台無しになってしまうので、一応念押しする。


 ユーゴには大丈夫と言ったが、今の俺は瀕死と言っていいほど追い詰められている。


 レールガンで攻撃しても相手のシールドにほんの少しのダメージを与えられるだけなのに、あっちの攻撃を喰らえば俺の命は半分ぐらい削られるからだ。

 つまりほぼ理想の動きをしなければ、この弾幕地獄は突破できない。


 シールドを半分削ったところで、炎球の量がさらに増えた。

 こちらに迫ってくるスピードもグッと速くなっている。


 今の状態ではかすっただけでゲームオーバーだ。折れそうになる心になんとか闘志を灯す。

 あのクソボスを倒してストーリーイベントの結末を見るんだろ?頑張れ俺、お前ならできる!




 俺はなんとかシールドをあと少しのところまで削った。


「なぁ、本当に大丈夫なのか。今にも死にそうだぞ!」

「だから大丈夫ですって!」


 今のユーゴの声に気を取られて炎球に当たりそうになった。危なすぎる、お願いだから黙ってエネルギーをチャージしてほしい。

 NPCの声をオフに設定してやろうかと思ったが、そんな余裕はない。


 レールガンにエネルギーを溜めてぶっ放す。この攻撃でシールドを割った。


「よし、なんとかここまで来た」


 緊張で手が震える。あの地獄をやっと突破したのだ。ここでミスったら本当にキレてしまうかもしれない。


 ファイヤーZの動きが止まる。

 ちなみにここで攻撃しても意味はない。ダメージを与えられないように設定されてある。


「さっきはここでやられたからね。気をつけていかないと」


 俺は気を引き締める。ここでやつを絶対に倒してやる。


「MAX―Z」


 オーディンの両手に炎が纏われる。炎球を避けてシールドを削った後は、この必殺技が発動されるのだ。


 ちなみにファイヤーZがMAX―Zと技名を言った瞬間に、プレイヤーは一歩も動けなくなる。


 本当に初見殺しもいいところだ。

 前回、やっと炎球地獄を突破したと思った瞬間にこの技を発動された俺の気持ちは想像することは容易だと思う。

 自分がファイヤーZにとどめを刺されるところを、ガチギレして叫びながら眺めることしかできなかった。


 奴の必殺技前のモーションが終わって、俺に最期の一撃を喰らわせようとする。

 俺は全く動けないから、それに対抗する術はない。


 だが、この時のためにわざわざユーゴにはレールガンを温存してもらっていたのだ。


「中尉、今です」


 ユーゴから狙撃用レールガンが発射される。オーディンが指定された場所に入ったからだ。


 俺はこのMAX―Zを回避するためには、技の発動中に重い攻撃を撃ち込めばいいと考えた。だが自分では動けないため、ユーゴには手伝ってもらうことにした。

 あとは簡単だ。ユーゴにレールガンを発射するタイミングを教えて、そうなるように調整して、やつを指定した地点まで誘き寄せればいい。


「やっぱ、これだからゲームはやめられないよね」


 必殺技発動中のファイヤーZにレールガンが撃ち込まれる。

 限界までチャージされた1発はやつの体力を削り切った。


 俺は確かにやつの体力がゼロになっていることを確認する。


「はは………」


 ついに、勝った……

 やっとこの戦いに終止符が打たれた……はぁ、マジで長かった。特にあの炎球地獄、時間と場所を調整しながらシールドを削るなんて経験は2度としたくない。

 いやぁ、やりきった。脳汁がドバドバやね。


 さすが世界から評価されている神ゲーだ。このファイヤーZとの戦いは本当に楽しかった。正直難易度は鬼だったが、俺にはそれぐらいがちょうどいい。


 俺は達成感に包まれながらファイヤーZの亡骸に近づく。


 やつはもう既に鉄屑となった。あとは死体撃ちでもして楽しもう。

 そう思ってレールガンを構えると、やつの様子がおかしいことに気づく。

 動けないはずの体が赤く光り出し、熱を帯び始めている。


(あれ、これってもしかして……)


 爆発するっ!!!!


 ファイヤーZが最期の足掻きをしようとしていることを瞬時に察して俺は、すぐに逃走態勢に入る。


「――やばいっ、逃げなきゃ!!!」


 しかしその時には既に遅く、俺はやつの自爆に巻き込まれた。

 大きな爆発音がしたと思ったら、自分の体が熱と衝撃に耐えられなくなっていた。


――やっぱりこのゲーム、クソゲーやわ


 薄れゆく意識の中で、俺は静かにこう悟った。

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