43 オーティナティック実況(13)
一度配信から退席し、ファイヤーZの対処法を読み込み、完璧に理解した俺は、再度オーティナティックのタイトル画面を開く。
ファイヤーZとの戦闘前のセーブデータをロードする。
くくく、ファイヤーZよ、攻略サイトを見ることを卑怯とは言うまいな。知恵を受け継ぐというのは人類最大の武器なのだ。俺はその武器を余すことなく使っているだけなのだよ。
俺は深い穴を覗き込む。しばらくすると地面が少し揺れて、オーディンと思われる影が見えた。
お前を今度こそボッコボッコにしてやるよ!
10分後ーー
〈ゲームオーバー〉
俺は2度めのゲームオーバーの文字を見て、大きくため息をつく。
結果から言うとファイヤーZとの戦いは完敗だった。
「最悪………攻略サイトに載ってた方法、全く意味なかったんだけど」
そうなのだ。攻略方法に載っていたやつの行動パターンと、ストーリーイベント【時の止まった思い出たち】のファイヤーZの行動パターンは全く違う。
俺は攻略サイトを見ることへの葛藤は、全くの無駄だったということだ。
「はぁ…………マジで最悪なんだけど!!!!」
コメント:ガチギレ草
コメント:お咆哮助かる
思わず本能のままに叫んでしまった。まぁ、3年前のネオもこれぐらいの叫び声はあげていた。多分バレることはないと思う。
「そもそも攻略サイトには『MAX―Z』の情報がなかったんだから、おかしいと思うべきだったんだよ」
コメント:草
コメント:これは大草原不可避
コメント:元気出せよ、な?Neoならきっとクリアできるって
彼氏ヅラしたコメント打ってるやつは、まさか今のネオはおっさんだと思っていないだろうな。
「とりあえず今の戦闘で相手の行動パターンをなんとなく掴めて来た。今度こそあいつを倒せるかもしれない」
コメント:頑張れ
コメント:応援してます!
「それじゃあリ・リベンジマッチと行こうか」
俺は励ましのコメントを原動力にして、3回目のvs.ファイヤーZに挑んだ。
――8回目
〈ゲームオーバー〉
俺はまたタイトル画面に戻って来たことに、思わず台パンする。
台パンと言っても、仮想ゲームの中であるから現実の自分の手や机を傷つけるようなことはない。健康的な台パンである。
「行動パターンは割り出せた………それなのにあの『MAX―Z』をどうしても避けることができないんだよなぁ」
コメント:逆にあれって回避できるの?
コメント:発動したら確定で殺されるんじゃない?
「発動中は一切体を動かせないというのがヤバすぎるんだよ、あれってどうやったら突破できるか本当に分かんない」
俺は自分の小さな脳みそをフル回転させる。
通常、俺の脳はほとんどなんの役にも立たないが、ゲームにおいては良いアイデアが浮かぶこともある。
一度状況を整理しよう。ファイヤーZとの戦闘を頭に思い浮かべる。
俺が羽虫みたいに飛び回ってレールガンを撃って、ファイヤーZが羽虫を焼き殺そうとして、人工蛍が空を飛んでいて、ランが瓦礫の下に隠れていて、ユーゴが狙撃用レールガンを構えていて――――
「あ、名案思いついちゃったかも」
コメント:マジ?!
コメント:え、知りたーい!
「ふふ、秘密だよ。あのクソボスを倒す時に披露するから楽しみにしていてね」
要するにMAX―Zを防ぐには、技の発動中に攻撃を加えれば良いのだ。
俺はまたファイヤーZとの戦闘前のセーブデータをロードする。今度こそ、あの産業廃棄物をスクラップにしてやる。
◇ ◇ ◇
俺はやつが現れるまでの少しの時間の間に、ユーゴに指示していた。
「今からエネルギーを溜めて、あの方向にオーディンが来た時にだけそれを発射してください」
俺は何もない方角を指で指し示す。当然ユーゴはそれに首を傾げた。
「それってオーディンがあの穴から出て来た時も、レールガンを撃たないということか?」
「その通りです。あそこにオーディンがピッタリ来た時にだけレールガンを撃って欲しいんです」
「あの方角に?」
「はい」
「……わかった。Neoがそこまで言うならおれはそれに従おう」
「ありがとうございます。本来上官の命令は絶対であるはずなのに」
「別にそんなこと気にしないでくれ。おれは軍人としての誇りを忘れてはいないが、こんな状況になってまで軍のしがらみを覚えているほど記憶力はよくないからな」
彼は皮肉な表情を浮かべて笑った。顔もイケメンだが、受け答えまでイケメンだ。
その時地面が少し揺れた。
俺は急いで穴のほうに向かう。ファイヤーZが姿を表した。
今までの戦闘ではユーゴがレールガンをぶっ放すところから始まっていたから、少し派手さが物足りない。しかしこれも作戦のうちだ。




