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33 オーティナティック実況(4)

 オーディンから命懸けで逃げてきた俺たちは、小さな洞窟に身を隠していた。

 外は強い雨が降っている。雷の音さえ聞こえる。


「新人、怪我はないか?」


「問題ありません。ラマリフェクタ中尉も大丈夫ですか?」


 ユーゴ・ラマリフェクタの顔が曇った。なにか思うものがあるのかもしれない。


「………ユーゴでいい。おれはもはや中尉と呼ばれる資格はない」


「それは、どういうことでしょうか」


「敵に背を向けて逃げるなど、いかなる理由があろうと軍人の恥だ」


 ユーゴが深刻そうな顔でそう言う。


「ラマリフェクタ中尉、そのようなことはおっしゃらないでください。禿げ頭……あー、上官は自らの身を投げ打ってまで我々に未来を託してくださったのです。胸を張るのが彼らへの恩返しというものです」


「新人、貴様は強いのだな……」


「…………」


「だからラギーニ上官もわざわざ貴様をおれに託して逃げろと言ったのだろう。貴様が秘めるその強さに期待して」


 ユーゴからすれば一度に同僚や部下、上司を喪ったのだ。落ち込むのも無理はない。


「ただいつまでも下を向いてばかりではいられない、我々には新たなミッションが下されている」


「ミッション……ですか?」


「実は今日ほぼ同時刻に、連合軍の基地全てにオーディンどもが襲撃してきた。撃退に成功したところもあったが、そのほとんどは壊滅。連合軍は現在、瀕死の状況に追い詰められている。これほどまでの大規模襲撃は連合軍結成から初めてだ」


「それは確かな情報ですか」


「間違いない。お前も確認できるはずだ」


 そう言われても、俺はそれにどうすればいいのかわからずに戸惑う。


「まさか『ホログラム』の使い方が分からないのか?」


「えぇ、お恥ずかしながら」


「連合軍の訓練の時に教えられなかったのか?手をかざして『ホログラム』と念じるだけだ。それでネットワークに接続できる」


 俺は言われた通りに手をかざして、ホログラムと念じる。

 すると手の上に画面が表示された。これはAR技術の一種なのかもしれない。


「その画面をタップして操作するんだ。連合軍本部からメッセージが送られているだろう。それを見ればわかる」


 俺は恐る恐る指を使って操作する。第一世代マインデバイスでも目線を動かせば操作できたのに、なんとも前時代な代物だ。


 〈現在、全世界でオーディンの襲撃が確認された。我がアメリカでも甚大な被害を被っている。連合軍に所属する各員はオーディンの撃退に成功した、最も距離の近い重要基地に合流せよ〉


 そこからは撃退に成功したという基地のリストが載っている。ワシントン、カリフォルニアなどの大都市がそれに当たる。

 もちろん他にもオーディンの撃退に成功したところはあるが、どこも小規模なところばかりだ。大規模な基地のあるところで最小限のダメージに収めることが出来たところは非常に少ない。


 どうやらさっきの襲撃も全世界で起こったものの一部分であるらしい。


「ここから最も近いのはワシントンですね。だいぶ遠い道のりですが、仕方ありません。ユーゴさん、早く出発しましょう」


「………………あぁ、そうだな」


「どうしたんですか、この洞窟にいつまでこもっているわけにもいかないでしょう?」


 ずっと暗い表情で俯いていたユーゴだったが、俺の言葉を聞くと目を血走らせて、胸ぐらを掴んできた。


「なんでお前はそんなに冷静なんだよ!!おれたちを逃すために何十人もの同胞たちが死んだんだぞ!」


 ユーゴにはゲームの中とは思えない気迫があった。


 別にここにユーゴを置いて一人でストーリーを進めるのもいいけれど、多くの人が見ている前でそんな鬼畜プレイをするほどの度胸はない。


「わたしたちを逃すために沢山の人が死んだ………もしそうだったとして、それが何?」


「え…………?」


「彼らはわたしたちに思いを託して死んでいった。その思いは人類のために戦ってほしいという願いだったはず。少なくともこんな洞窟で惨めに泣くことではない、違う?」


 彼は俺に向かって拳を振り上げたが、歯を食いしばったあとしばらくして、その手をしずかに下ろした。


「お前の言う通りだ。すまなかった。先輩だというのに醜い姿を晒してしまったな」


 NPCだと分かっていても、胸にくるものがある。

 とりあえず前向きになったみたいだから、及第点ぐらいの受け答えはできたと思う。


「これからよろしく頼む」


「はい、よろしくお願いします」


「それと、さっきの言葉は聞かなかったことにしてほしい」


「さっきの言葉、というのは?」


 ユーゴが俺と目線を合わせる。


「おれはもはや中尉と呼ばれる資格はないと言ったことだ。確かに連合軍は今回深刻なダメージを負ったが、まだその機能は死んでいない。おれはオーディンがこの地球上から居なくなるその日まで、自分が連合軍に所属しているということを胸に刻むよ」


 俺はただ黙って頷いた。


 外を見ると、すでに雨は止んでいた。残った雨水に光が反射して、ずいぶん綺麗な光景だ。

 荒廃した世界を彩る光は、ゲームの中の世界だと自覚していてもなお心打たれるものだった。



「オーティナティック、超神ゲーじゃん」


 コメント:それな

 コメント:ユーゴくん、マジカッコいい!

 コメント:これで破滅ルート、救い主パターンのチュートリアルは終わりですね


 次はめざせ!ワシントン、と言ったところだな。

【☆☆☆☆☆】  ∧ ∧

        (・∀ ・) <これをな

        ノ(  )ヽ

         <  >


【★★★★★】   ∧ ∧

       ヽ(・∀ ・)ノ <こうするのじゃ

       (( ノ(  )ヽ ))

         <  >

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[気になる点] 話がとんどりますぞ〜 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! チュートリアルが終わりそうになったと思ったら大惨事が起きてた。 何言ってるか(ry [一言] 目指せ! ワシントン!!…
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