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33 オーティナティック実況(3)

俺は周りの人たちが自分たちの部屋に戻っていく様子を見て、ファンの方に語りかける。


「これでチュートリアルは終わりかな?」


 コメント:まだやぞ

 コメント:Neoさん、油断しないで!

 コメント:俺の“勘”はァ、まだ終わりじゃないと叫んでいるゥ!!


 俺は咄嗟にレールガンを構える。コメントから不穏な空気を読み取ったからだ。


 まだ終わりじゃない?


 オーディンと戦う連合軍がどういうところか説明してもらって、兵器の扱い方まで教えてもらった。

 これ以上チュートリアルでやるべきことはないはずだ。そうならば残るは何かしらのイベントがあるということだろう。


「敵襲だぁ!!オーディンが攻めてきたぞ!!!!!」


 誰かが唐突に叫んで、基地内に警報が鳴り響いた。やはりイベントが発生するらしい。

 周囲の人たちも、警報を聞いて臨戦態勢に入る。レールガンをいつでも撃てるように構えている。

 

ドッガァァン――


 この場にいる全員に緊張が走った時、思わず耳を塞ぐほどの大きな音が鳴り響き、粉塵がまちきらされて基地の壁が壊された。


「嘘だろ、あの壁に使われている素材は大砲を撃ち込まれても傷一つつかないんだぞ………」


 俺のすぐそばの若者がつぶやいている。


「オーディンが攻めてきたぁ!!!ここはもう終わりだぁ!!!!」


 基地の壁を壊した犯人は、人型の巨大ロボットだった。どうやらこれがオーディンらしい。


機体は白と青の2色で構成されており、まるで正義の戦隊ロボットかのような姿をしている。

 もっと悪役っぽいみたいなのを想像していたから、少し拍子抜けだ。


「戦えるものは兵器を持って応戦しろ!急げ!!!」


 禿げ頭が叫んでいる。


 なるほど、チュートリアルに実戦まで組み込むタイプか。今までプレイしてきた経験からするとこの手の敵は大抵弱い。


 多分主人公が何発かダメージを与えると敵は倒れて、それをみた上官が何かしらの重要なポジションを与えてくれるという流れだろう。


「新人ども、よく聞け!!レールガンはオーディンの首か手足の関節部分に撃ち込むのが最も有効的だ。よく狙ってそこに当てろ!!」


 禿げ頭からアドバイスをもらう。俺は早速レールガンにエネルギーをためてオーディンの首部分に当てる。


「効いてる感じはしないね」


 周りの人たちも同じようにレールガンで攻撃している。しかしオーディンが倒れる気配はない。たった一体で俺たちを圧倒している。


 オーディンが唐突に腕を突き出した。


「なんか様子が変だね。一体何するつもりなんだろ」


 俺が視聴者さんたちに語りかけると同時に、その手がガシャンと音を立てながらガトリングに変形した。

 俺はこれから起こることの予想が大体ついたが、周りの兵士は初めて見る武器に困惑している。


 ガトリングがゆっくり回転し、弾が乱射された後、この場にいるおよそ100人の兵士の3分の1が銃弾にやられた。


「マジかよ、腕を変形させて別の武器にするとかヒーロー側の特権のはずじゃん。悪役がそれをやるとかおかしいって」


 目の前にはまさに阿鼻叫喚の光景が広がっている。

 今日部隊に編入されるはずの若者たちは泣き喚き、それを統率するべき先達方も敵のあまりの強さに足がすくんでいる。


 死んだ兵士たちの血が床に広がっている。銃弾に貫かれた兵士によって泣きながら延命治療している奴もいる。


 しかしここまでリアルだとVITの規制に引っかかるかもしれない。R18指定されると最悪収益が外される可能性があるから勘弁してほしい。

 こんなことなら事前にVITの配信ガイドラインを確認すべきだった。プロとしてこれは失敗だな。


 俺はそれを横目で見ながら、オーディンの首にレールガンを撃ち込んでいる。

 チュートリアルボスならそろそろ倒れてもらっていい頃だが、こいつはなかなかしぶとい。


「これ本当にチュートリアルボス?」


 コメント:わいがプレイした時と若干違う

 コメント:なんかおかしいですね…


 やっぱりファンの方も違和感を感じているようだ。普通は何発か攻撃を叩き込めば倒せるらしい。


「なんだろ、バグかな?」


 チャットにも戸惑う声が全体の半分ほど見られる。

 しかし後の半分はこの現象がどういうものか理解しているようで、丁寧に教えてくれた。


 コメント:通常のチュートリアルボスはもっと弱いですが、今回のように、まれに破滅ルートと呼ばれるイベントが発生します。100分の1ぐらいの確率ですね。破滅ルートでは通常ルートとは大きく異なる物語の展開を見せます。またこのルートでは、チュートリアル時の行動が大きく今後に影響することが有名です


 博識の視聴者さんによると、この破滅ルートの中でも、人類のとって最も絶望的な状況をテーマにしたのが『オーティナティックⅡ』らしい。


 俺は1パーセントの確率を引いたみたいだ。確かに幸運ではあるが、10000分の1ぐらいじゃないと特別感がないな。

 まぁ、動画的には面白い展開になってきた。


 ガトリング攻撃をジャンプで避け、体を反転させて天井に張り付く。

 地面にくっきりと銃痕がつく。アレに当たったら今頃俺はミンチだ。


 レールガンがギリギリ当たる範囲で飛び回る。この戦術用スパイクというものは俺の思った以上の働きをしてくれる。

 ジャンプは天井まで届くし、走るスピードも何倍にもなる。さらに両足を壁や天井につけると重力を無視できる。これが1番でかい。この機能のおかげで回避パターンの幅がグッと増える。


 このゲームは疾走感がくせになるな。重力を半分無視できる兵器なんて、ゲーム酔いしてしまうと思っていたが、そんなことはない。

 むしろ視界が目まぐるしく変わることで戦闘に飽きがこない。


 俺が調子に乗っていると、オーディンが今度は両腕をガトリングに変えて、俺を撃ち殺そうとしてくる。


「やばいっ」


 反射的に距離を取る。頬に銃弾がかすった。


 流石に今のはひやっとしたぜ。できればチュートリアルぐらいノーダメージでコンプリートしたい。


 俺はなんとか三次元的な挙動で全弾を避ける。その間にもレールガンで攻撃することは忘れない。


しかし全く削れている様子がないな……こいつ本当に倒せるのか?


「新人、ここからは我々に任せろ!!!」


 禿げ頭が教官がベテランの兵士たちを連れて参戦しにきた。

 頼もしい限りだが、あまりに死体が増えると冗談抜きで規制がかかるから出しゃばらないでほしい。


「貴様だけでも今すぐここから退避しろ!!」


 俺が戸惑っていると禿げ頭がさらに大きく叫んだ。


「ユーゴ、この新人を連れてオーディンの居ないところまで逃げろ!!!」


 ユーゴと呼ばれたのは、さっき寝ている俺を起こしにきた先輩の青年だった。


「しかし、自分にも兵士としての責務があります。ここで尻尾を巻いてにげるわけには参りません!」


「いいから早く行け!これは上官命令だ!!!」


 その言葉を聞くと、ユーゴは歯を食いしばってこちらに向き直った。


「新人、ここから逃げるぞ」


 ………さて、ここでYESと言ってもいいのだろうか。場合によってはバッドエンドになる可能性もあるからどうしても慎重になる。


 コメント:これは破滅ルートの中でも珍しい展開ですね。兵器の手本を完璧にこなし、チュートリアルボスから一切のダメージを喰らわずにレールガンを当て続けたらこうなります。界隈では救い主パターンと呼ばれています


 俺は解説(ネタバレ)を横目で見ながら大丈夫そうだと思い直す。

 救い主っていう言葉のかっこよさがいい。


「わかりました。着いていきます」


「おれは連合軍中尉のユーゴ・ラマリフェクタだ。お前は?」


「わたしはNeoと申します。これからお願いします、中尉!」


「よし、着いてこい」


 そう言ってユーゴがオーディンの横を走り抜ける。俺もそれに着いて行く。

 禿げ頭教官の部隊がオーディンを引き付けてくれているおかげでギリギリ逃げることができた。


 VRゲームをプレイする上で大事なことはロールプレイング力だと思う。

 咄嗟に軍人のような受け答えができた自分を褒めてやりたい。

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