31 オーティナティック実況(1)
ここから始まる『オーティナティック実況』は本編にほとんど関係ありません
長いのが苦手な方は読み飛ばしてもらって全然大丈夫ですが、読んだもらった方がより深くこの作品を楽しむことができると思います
スタジオに来た俺は配信の準備をしていた。
例のオーティナティックをプレイする予定だ。完全な初見プレイなので、上手くやれるかどうか心配だが、それよりも期待の方が大きい。
『これからオーティナティックをプレイするよ。重大発表もあるから見に来てね』
俺は配信の告知をVITに投稿する。
重大発表というのはもちろんAR大会のことだ。今日からAR大会3週間前なので、詳細な情報を公開してもいいらしい。
自分のチャンネルから配信開始を選択する。
「こんネオー、トッププレイ所属のNeoです。今日は第1作目の『オーティナティック』をプレイしていこうと思います」
コメント:結構昔のやつで草
コメント:もう6,7年ぐらい前の作品じゃない?
コメント:Neoさんがオーティナティックをプレイしてくれるんですか?!すごい楽しみです(*^◯^*)
「わたしもプレイするのは初めてだから結構緊張するよ」
6年以上前のゲームに懐かしさを覚える人が多い。しかしその中でも、勘のいい人は3週間後のAR大会との関係性に気づいている。
「実はここで重大発表があります」
昨日徹夜で作ったAR大会の宣伝画像を用意する。羽山に作ってもらおうかとも思ったが、忙しそうだから頼みづらかった。
「なんと、3週間後のAR大会で新作のオーティナティックが公開されることに決まりました!!」
コメント:マジ?!
コメント:それはアツい
コメント:最高やん
コメント:キタァーー☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
コメント:ゲーム買うお金がない………子供に給食我慢させようかな
ファンの方からの反応も上々だ。
「さらに公開と同時にオーティナティックのゲーム大会が開催されます。計8人の中でトップに輝いた人には、オーティナティックを制作しているファンタシーハードさんから特別限定商品が贈呈されます。今の時代を彩るストリーマーたち8人のアツいバトルを見逃すな!」
用意していた台本を読み上げて、俺は一息つく。
「という感じです。わたしもここに参加させてもらうことになりまして、練習のために第1作目からプレイしていこうかなって思います」
俺は早速VRゴーグルを装着して、オーティナティックにログインする。
プレイヤーネームはもちろんNeo。これで今日からオーティナティックの世界でも俺はNeoとして生きていく。
〈ログインが完了しました。それでは『オーティナティック』の世界をお楽しみください〉
視界が一度ブラックアウトしてからまた明るくなる。これから新しい世界が始まろうとしているこのドキドキ感は、何歳になってもテンションがあがる。
気づいた時、俺は小さな部屋の3段ベットの一番上で寝ていた。手のつくすぐのところに天井がある。
小さな部屋には俺の寝ている3段ベットと同じものがもう一つあった。
手を見て体を触る。ネオの体ではなくなっている。もちろん元の田辺浩一の姿でもない。
オーティナティックの主人公になったのだろう。アバターは女性の体を選んでいる。
俺は一応ファンの方に、見えているかどうか声をかける。
「声とか入ってるかな。問題なさそう?」
コメント:大丈夫
コメント:問題ないですよ
コメント:Neoちゃんの可愛い声、バッチリ聞こえているよ!
マインデバイスに、視聴者さんのコメントが表示される。俺はそれを見て大丈夫そうだと安心すると同時に、少し困惑する。
可愛い声と言われても、男の俺からすれば反応に困る。Neoとして活動して1週間以上経つが『Neoちゃん可愛い』系のコメントにはいまだに慣れない。
彼らに今のネオの中身はおっさんだという真実を伝えてあげたら、いったいどんな顔をするのだろう。
俺はくだらない考えを頭から振り払った。




