27 第16話:AR大会の概要
オーティナティックシリーズを製作している会社は「VR RPGといえばここ!」みたいな超メジャーな会社です
【羽山雅弘のオフィス】
「田辺さん、よく来てくれた。今日はAR大会の詳細について話そうと思う」
俺は高級革ソファーに体重を預ける。羽山が俺と向かい合うように座った。
机には湯気を立てている茶が2つある。俺はそれを一口飲んでから喋った。
「AR大会まであと3週間ぐらいですね」
「そうだな。今日は、KAGAM I(よるねこ+ライトのチーム)とeNM@さんの参加表明を受けての大会の内容が昨日社内会議で決まったため、その最終調節のためにここまで来てもらった」
「……顔色悪いですけど大丈夫ですか?」
「顔色悪そうに見えるのか?」
「はい、いかにも寝不足って表情ですよ」
ネオの失踪に対応しなければならない上、ネオの担当マネージャーとしてAR大会を進めていかなければならないから、想像できないほどの仕事量を抱えているのだろう。
「確かに最近はあまり眠れていないかもしれないな……」
「無理しないでくださいね」
「わかった、体を壊さない程度に頑張ろう」
肩を揉みながらお疲れですねとねぎらってやりたい。
「話は変わりますが、AR大会まであと3週間程しかありませんけど間に合うんですかね?」
「大まかな流れは、Neoの失踪以前から決定されている。この二つのアーティストの参加による細かい調整だけだから問題はない」
「なるほど」
大抵のことはすでに準備がなされているらしい。失踪事件などの対応にも忙しかったはずなのに、大したものだ。
「こちらがAR大会の概要だ」
【Augmented Reality Stream Festival(通称AR大会)概要】
配信媒体:VIT、マニマニ動画、ProoM
会場:東京BMO
日時:ネット開催4月1日〜4月3日 リアル開催4月4日〜4月5日
「会場は例年通り、3日間のネット開催の後、サイバー都市内の一画でリアル開催が行われる。リアル開催では2日間にわたってストリーマーさんたちがイベントを催し、会場まで足を運んでもらったファンの方々に楽しんでもらう。またその様子はVITのstream社の公式チャンネルでも同時に配信される」
「へぇ、俺が参加していた5年前のやつとは比べ物にならない規模ですね」
「stream社はこの4年で急成長したからな、その成果だろう」
俺は予想以上の規模に驚いた。
「大会のオープニングをKAGAM Iさんたちに、エンディングをeNM@さんに勤めてもらう予定だ」
「ちなみに俺は何をすればいいんですか?」
「田辺さんにはNeoとして、リアル開催で2つのゲスト出演と1つのゲーム大会に出場してもらうことになっている。ネット開催ではインタビューを受けてもらったり、トークショーに出演してもらう予定だ。これでも前年より出番を減らしてもらった。田辺さんの負担になりすぎてもいけないからな」
「それは、ありがたいです。ゲスト出演の方はどうにでもなると思います。問題はゲーム大会ですね………なんのゲームですか?俺は基本的になんでもできるタイプですけど、苦手なジャンルというのも存在するので……」
「安心して欲しい。競い合ってもらうのは、対戦型のロボットVRゲームだ。どちらかと言うと得意なジャンルだったはずだ。それにこれは今度発売される新作ゲームだから、経験の差というものもない。練習できるのは本番の1週間前からだ」
羽山がそのゲームのデータを送ってくる。『オーティナティックⅣ』というタイトルのVRゲームだ。
「世界的な人気を誇るオーティナティックシリーズの第4作だ。プレイしたことはあるか?」
「いや、ないですね」
「それならば前作の『オーティナティックⅢ』か、シリーズ第1作の『オーティナティック』をプレイすることをおすすめする。今回のゲーム大会はオーティナティックの宣伝も兼ねているから、全く知らないというのは問題だ。それに私から見てもこのゲームは非常に面白い。ゲーマーなら一度は触れておいて損はない」
「そうですか………そんなにおすすめならプレイしてみましょうかね」
名前ぐらいは聞いたことのある有名ゲームだ。この際だからプレイしてみるのもいいかもしれない。
「是非そうしてくれ。このゲームはロボットを操縦するSFVRゲームだ。第1作の『オーティナティック』は宇宙から侵略してきた巨大ロボット、通称オーディンに対抗する連合軍に所属した主人公が、オーディンたちを倒して地球を救うというストーリーで、前作までそのストーリーが続いている」
「面白そうですね」
「だが今作はストーリーより対戦に力を入れている。ストーリー要素もなくはないが、メインコンテンツは侵略ロボットの対戦だ」
「主人公たちは出てこないんですか?」
「そうだ。侵略ロボット同士で戦う。VITに宣伝用の公式PVも公開されている」
「へぇ、今それを見てもいいですか?」
「もちろん構わない」
俺はマインデバイスに接続して、そのPVを見てみる。
グラフィックのクオリティの高さが素晴らしい。これだけの神ゲーを世界で一番初めにプレイできるのは、人気ストリーマーの特権だ。
コメントも期待に胸を膨らませるものや、早くプレイしたい!と言う声で埋まっている。
それらがさまざまな言語で書き込まれている。これを作ったアメリカや、日本からのコメントだけではない。世界からの注目も高いらしい。
その中で少し雰囲気の違うコメントを見つけた。
コメント:今作はオーディンを操作してプレイするオンライン対戦がメインですか。それじゃあ主人公組は参戦しないかもしれませんね………少し残念です
主人公は生身で戦うため今作には出てこないらしい。
よく見れば少数ではあるが、こんなコメントがちらほら見受けられた。
「なにか気になるものでも見つけたのか?」
「………いえ、何でもありません」
俺は静かにVITを閉じる。
彼らの気持ちもわからないでもない。せっかくだったら主人公を使いたいというプレイヤーは一定数いる。しかしゲームスタイル的に仕方ないことだ。




