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23 第12話:トッププレイの会合、解散



 一息ついたとき、羽山から指示が飛んできた。


『彼女たちにAR大会についての意思を聞いてほしい。おそらく参加するだろうが、本人がどう思っているか知りたい』



 俺は仕方がないからAR大会の話題を振ってあげた。


「そういえば来月ぐらいにAR大会あるよね。みんなどうするつもりなの?」


「ネオちゃんが毎年開催してるやつ?私は多分参加すると思うよ。あそこで発表されるゲームとかも多いから、一番初めにプレイしたいし」


 莉亜の反応は上々だ。

 あとの2人はどうなのだろう。


「美緒も参加するつもりだよー。たくさんの人に見てもらうチャンスだしね」


「アタシも参加するつもりよ、せっかくだしね」


 その言葉を聞いて安心する。

 きっと本部の方でこの会話を聞いている羽山も、安堵の息をついているだろう。


「やば、もうすぐ11時になっちゃう!」


 美緒が何かに気づいた様子で立ち上がった。


「ミオちゃんどうしたの?」


「美緒、11時から配信する予定なの忘れてた!急がないと遅れちゃう。ごめんだけどもう帰るね!」


「それは寂しいけど仕方ないね。バイバーイ」


 俺たちは美緒が帰るのを見送った。俺もそろそろ帰る時間だ。


「わたしも明日のためにそろそろ帰ろうかなー」


「ネオちゃんも?それじゃあそろそろお開きにしようか」


「そろそろいい時間だものね。アタシも明日は予定があるのでそうしてもらえると助かる」


「オッケー。それじゃあかいさーん」


 俺たちはたこ焼き機と食器を軽く片付けて、莉亜に礼を言って帰路についた。



 エレベーターを降りるときに、MARIEさんが先を譲ってくれた。どうしてそんな気遣いをしてくれるのだろうと思ったが、自分が今ネオの姿になっていることを思い出した。


 きっとレディファーストということだろう。女性の姿になったらいいこともあるものだ。



 帰りの方向が逆だから、彼とはマンションから出た後ですぐに別れた。

 手を振りながらさよーならーと言ってきた。近所迷惑にならない程度に俺も別れの言葉を返した。




 それから誰も見ていないことを確認して、元の田辺浩一の姿に戻った。


 大きく夜の冷たい空気を吸って、それを肺に入れる。大きく呼吸をすると、言いようのない達成感が胸を埋めた。


「流石に疲れましたねー、俺上手くやれてました?」


『多分バレていないだろう。よくやってくれた』


 夜空に月が明るく輝いている。満月よりは少し欠けているが、俺にはとても綺麗に見えた。


『明後日からはまたAR大会のために動いてもらう。明日はしっかり休んでくれ』


「マジっすか。ありがとうございます」


 久しぶりに特に予定のない日だ。めっちゃ嬉しい。


『ただ配信はいつも通りしてもらうが』


「…………了解です」


 毎日やると決まっているから配信があるのは仕方ないが…………これも仕事だ、諦めて受け入れよう。


 配信があると言ってもそれ以外何もやらなくていいのは若干楽だ。それだけでも良しとしよう。



 ◇ ◇ ◇



 浜辺莉亜はネオたちが帰ったあと、部屋の中を掃除しながら考え込んでいた。


 ネオがマリーに敗北した後、言ったセリフ――これになぜか引っ掛かりを覚える。


『容赦なさすぎるでしょ。もうちょっと弱者への配慮があってもいいと思うんですけど?』


 この言葉を最近どこかで聞いたことがある気がする。もちろんネオ本人の言葉ではない。



 彼女は最近の自分の行動を思い返す。どこで何をして、誰と喋ったのか、この引っかかりの謎を解く手がかりはそこにあるはずだ。


 去年チビモンの国内リーグで優勝したことによって、彼女はこれまでよりもさらに忙しくなった。

 ゲーマーとしての枠を飛び越えて、モデルとしての仕事を舞い込んでくるようになった。雑誌に載せるためのインタビューもたくさん受けた。もちろんストリーマー的には忙しいということは喜ばしいことだが、それでもこれは度がすぎている―――



 莉亜は頭を振って、不満を心から追い出す。

 今考えるべきことはこれではない。もっと直近に誰かと会ったはずだ。それもネオと繋がりのある人と。



 彼女はそこで、一昨日久しぶりに浩一と出会ったことを思い出した。彼は3年前より表情がマシになっていた。


 田辺浩一たなべこういちがこの既視感の正体なのだろうか?


『容赦なさすぎるだろ。もうちょっと弱者への配慮があってもいいと思うぞ』


 そうだ。

 彼はチビモン街角リーグで、自分に圧倒的な差を見せつけられたときにこう言った。ネオがマリーに負けたときに言ったセリフとほとんど同じだ。


 これは元とはいえ、男女の関係にあったことが関係しているのだろうか。

 もちろん多少なりとも似ている部分はあるだろう。しかし3年もあっていない相手の言葉が、ここまで移るものだろうか。



 汚れのついた皿を自動皿洗い機にそのまま入れる。ジェル状の食器用洗剤をセットしていることを確認してからスタートボタンを押す。

 机の上とシンク周りを濡れた清潔な雑巾で拭く。部屋の掃除は掃除用ロボットがあらかたやってくれるが、ロボットだけでは掃除しきれないところもある。


 一通りの家事を終えた莉亜りあは再び自分の中の違和感を解決するために考えこんだ。



 田辺浩一たなべこういちがネオになんらかの影響を与えていることはほぼ間違えない。


――私の知らないところで何かが起こっているかもしれない。……いや、それは考えすぎか。


 ネオは最近浩一と会っているはずだ。そのときに言われた言葉が移ったという可能性もある。



 彼女は自分にきっとそうだろうと言い聞かせる。

 今抱えているデジャブ(既視感)は自分の勘違いなのだ。



 しかし胸のモヤモヤが取れない。少しの時間思案していると、いいアイデアが思いついたと手を打った。


 もう一度ネオに会おう。そうすれば何か分かるかもしれない。


 浜辺莉亜はまべりあは明日のスケジュールを確認する。

 特に大した用事はない。早速訪ねてみよう。



バレてるねぇ

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