21 第10話:レトロゲーム最終決戦
莉亜とのバトルの余韻も冷めないうちに、俺とMARIEさんとの決勝戦が始まった。
「……手加減しないからね」
「全力でかかってきていいわよぉ。アタシの本気を見せてあげるから」
使うキャラはさっきの試合から変わっていない。つまりMARIEさんも俺も同じキャラを使って対戦することになる。
浪漫キャラ同士の戦いだ。アツい試合になることは間違いない。
ゲームが始まる。
俺のため技をMARIEさんは危なげなく避けた。さすがに経験者は動きが違う。普通にやってもまず勝てないだろう。
狙うのはタイムアップだ。
逃げの姿勢を取り続けながらたまにカウンターを打ち込む。そのムーブを続けていけば、5分後には俺が勝利しているはずだ。
「あらネオちゃん、随分と消極的ね」
「勝つためなので」
「女の子こそ積極的にアタックしないとダメよ?」
「それは恋愛の話でしょう。これはゲームなのでうまく逃げ続けても勝利の道はあるんです」
「ネオちゃんがその気なら…………アタシからアタックしようかしら」
MARIEさんのパンチが俺のキャラに食い込む。場外まで吹っ飛ばされて、危うく落ちそうになった。
強い。
今わかった。逃げ続けるだけでも難しい。これは相当気合を入れないとあっさり負けてしまいそうだ。
◇◇◇
〈ゲームセット〉
結果はもちろん負けた。1分もたたないうちにやられた。瞬殺だった。やはり本業の人は強いということを思い知らされた。
「くっそぉ…………」
今回は片手だけを使うという縛りもなかったため、本気で攻撃された。
回避してカウンターの動きも使ったが、当然のように対策されていた。
どうにかしようとしたけど、正直なすすべがなかったね。
「惜しかったわねぇ。でもネオちゃんも十分強かったと思うわ」
あはははとMARIEさんが笑っている。
楽しそうで何よりだが、ぼこぼこにやられた身としては落ち込む。
「容赦なさすぎるでしょ。もうちょっと弱者への配慮があってもいいと思うんですけど?」
「配慮〜?そんなものは知らないわぁ。勝った方が正義なのよ」
「うわ、性根が腐ってる。とても大人とは思えないです」
「これがアタシのやり方よ〜(笑)」
俺はMARIEさんのご要望通り、思いつく限りの嫌味を言ってあげた。「クズ人間」やら「このアホンダラ」なんて言ったら、だんだん彼のテンションが下がってきた。
「アタシ、これから死のうと思う………」
「いや、ごめん。わたしもちょっと言い過ぎた」
俺は予想以上に凹んでしまった玄達さん相手に、必死に謝る。腹いせのために言っただけだが、思ったより効果があったようだ。
「冗談よ、ちょっとネオちゃんを驚かせたかったから大袈裟にリアクションしただけ」
「……心配して損した」
先ほどまでの悲しげな表情を引っ込めて、MARIEさんはいたずらっ気のある笑みを見せる。
莉亜がその様子を見て呆れてため息をついた。
「仲良いねぇ……」
「普段からアタシってばこんな感じでしょ?ネオちゃんが本気にするのが悪いと思うのよ」
「それもそうかもね」
どうやらMARIEさんはいつもこんな調子らしい。肝に銘じておこう。
ゲーム機からソフトを取り出し、持ってきたバックの中に入れる。
俺たちはレトロゲームを満足するまでプレイして、機器の片付けをしていた。
VRゲームでは触ることのない機器ばかりだから、片付けすらも楽しい。こんな機会を設けてくれたMARIEさんに感謝しなければならない。
そのMARIEさんは、莉亜から借りたコントローラーをお辞儀をしながら返していた。律儀な人だ。俺と真緒も一緒に遊ばせてもらった身なので、彼と一緒に莉亜にお辞儀をした。
莉亜は少し困惑していたが、こういうのは気持ちが大事なのだ。
片付け終わったMARIEさんは、俺たちの方に向き直った。
「みなさん、レトロゲームの面白さは理解していただけたかしら?」
俺たち女の子3人組が「もちろん」と答えると、MARIEさんは深い笑みを顔にたたえて言った。
「それならアタシも嬉しい。わざわざゲンちゃんから借りてきた甲斐があるもの」
「本当に楽しかったです。GENさんにもありがとうと伝えておいてください」
「楽しんでもらえてゲンちゃんもきっと喜ぶわ」
自分の好きなゲームを褒められた彼の表情は、とても眩しかった。自分の好きなものを貫くことのできる人間は無条件に尊いものなのだと、そのとき理解した。
こうして莉亜の家でおこなわれた、ささやかなゲーム大会はMARIEさんが一位で俺が二位という形で幕を閉じた。
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