18 第7話:オフ会はたこ焼きとともに
ここに集まっている4人でたこ焼きパーティーなるものを開催することになった。
莉亜はどうやら関西人のようで、俺たちにその文化を教えてくれるらしい。
「今日はたこ焼きパーティだよ。みんな遠慮しないでねー」
莉亜がそう言って大きなたこ焼き機を持ってくる。
俺はたこ焼きパーティという単語を聞いたことがなかったため首を傾げた。
「たこ焼きパーティ…………?なにそれ?」
「関西の方では『タコパ』って言ったりするんだけどねぇ。みんなでたこ焼き作って一緒に楽しく食べようねっていうパーティ。私の地元では結構メジャーなものなんだよ?」
「莉亜ってたこ焼き作れるんだ。すごいね」と言おうとしたが止めた。
過去に手作りたこ焼きをNeoに振る舞っていたりすれば、会話に矛盾が生じるからだ。
そう思うと「たこ焼きパーティ…………?なにそれ?」と問いかけたのも迂闊だった。ただこの様子だと、『タコパ』を開催するのは今回が初めてのようだ。
危ない。ギリギリセーフだった。
「ネオさんって、この前アタシたちと一緒にたこ焼きパーティしたと思うけど?あれ、アタシの思い違いかしら?」
MARIEさんから思わぬ指摘が入る。
田辺浩一、早速ピンチがやってまいりました。
ネオはどうやらタコパを経験したことがあるらしい。
「そう言われれば確かにそうかも………ネオって結構前に、一回タコパやったよね?」
莉亜が詰問してくる。俺は出来るだけ平静を装って答える。
「そんなことあったっけ?ごめん、忘れてた」
「ちょっとー、私のたこ焼きの味を忘れるなんて、どいうことかなー?」
莉亜はあははと笑っている。これはなんとか切り抜けた。安心して胸を撫で下ろす。
大丈夫。リアクションにおかしなところはなかったはずだ。
「じゃあ早速たこ焼き作っていこう!」
莉亜がたこ焼き機に、たこ焼きクリームみたいなものを入れていく。後で聞いたが、これはたこ焼きのタネというらしい。
莉亜はなかなか手際が良かった。タネにタコを入れて、チーズも入れた。真緒が梅干しも入れようとしたので、みんなで止めた。
ピンでたこ焼きでひっくり返すのも素早くやっていた。俺も少しだけ手伝ったが、結構楽しかった。
出来上がったたこ焼きを取り分けてソースを塗る。そこにかつお節と青のりをかけたら完成だ。
店でよく見るたこ焼きになった。それを口いっぱいに頬張る。女性の口は小さいから、お得感がある。
「すごい………これ、めっちゃ美味しい」
「でしょー?私も一応関西人だからね。これぐらいは余裕だよ」
莉亜がそう言ってドヤ顔をした。それがなんとも腹立たしい表情で普段の浩一なら悪態の一つでもついてやりたいところだが、今の自分はネオであるという事実が俺を踏みとどまらせた。
たこ焼きは思ったよりもずっと美味しくてひさしぶりにビールが飲みたくなった。
普段ビールを飲む習慣もなく、酒に強いわけでもない。むしろ20歳になって酒を飲み始めたころの、あの楽しかった日々を思い出させるから酒は飲まない。
それでも久しぶりに飲みたいと思ったのは少なからず心境に変化があったからかもしれないな。
隣でMARIEさんが口元に泡をつけながらビールを飲んでいる。
今はネオである俺はそれをただ見ることしかできなかった。
楽しげな雰囲気の中で美緒だけが不満げな表情をしている。なにか悩み事でもあるのだろうか。
「美緒、どうしたの?あんまり楽しんでなくない?」
「いや、大したことじゃないんだけど……」
「なんでもいいから言ってみてよ。人に相談することで悩みが軽くなることだったあるから」
「……わかった」
美緒の目は真剣そのものだ。俺は姿勢を正した。
「このたこ焼き、梅干し入れればもっとおいしくなるのにって思ったの」
「…………」
たこ焼きに梅干しは合わないと思う。
俺は心の中で静かにつっこんだ。
Myao[トッププレイ]
本名、朝倉真緒 女性
流行のゲームでシューティングゲーム以外ならなんでもプレイする。
しばしば行う15時間以上の耐久ゲーム配信は彼女の名物であり、小柄で可愛げな外見と裏腹にゲームと配信では無尽蔵のスタミナを見せる。
ファンの多くは男性であり、とある理由から粘着質なアンチを抱え込んでいる。
stream社に入る前は別のストリーマー事務所に所属していた。




