第2話「逆転移」
「ちっ!あんたか」
俺はあからさまにふてぶてしい態度を取った
「ユウさんには相変わらず嫌われてますね…」
「まぁ、女神様、こいつもいろいろあるから気を悪くしないで下さいよ」
「そうですね、ブドウさん、ありがとうございます」
「それで女神様がこの四人を集めたということは何かおじさん達に様があったんじゃないかな?」
「その通りです、ブドウさん、魔王を倒して下さった皆さんを元の世界に帰して差し上げようと思いまして」
「いや、別に今更帰ったところでこっちの生活に慣れちまったしな」
「じゃああなた方はここで留まるということでよろしいですか?」
「ちょっと待ってくれ」
その女神の問いにいつもは冷静なケンが少し焦った様に割って入った
「頼む、俺は元の世界へ帰して欲しい」
俺様は驚いた
たった一年の短い期間ケンと共に旅をしていたがこいつの事は多少理解していたつもりであった
このクールに見えて強情で意地っ張り、負けず嫌いなこの男が人に頼みごとをする姿を俺様は初めて見た
「しかし、あなた方は四人一組のパーティー、絶対にどちらか一つに決めて頂く必要があります」
「どうす…」
「頼む、俺を元の世界に帰らせてくれないか」
俺がみんなにどうするか訪ねようとする前にみんなの前で頭を地面に擦り着けていたケンの姿があった
「ケンさん!?どうされたのですか!?土下座までして…」
「マホ、男の覚悟を詮索するのは野暮ってもんだ」
「分かりました、お師匠様、深く詮索致すのはよしておきます」
「ヨシ!おじさんは戻るのに賛成だ、ここの兵士も一年で教育し終わったし思い残す事も無いな」
「僕も良いですよ、ここの世界でも世界一のアイドルになりましたが元の世界でも僕の居なかった二年でまた世界一のアイドルを勝ち取りたいですからね、そのあかつきにはユウくんのキスが…///」
「キスには異論があるしケンとも喧嘩ばっかりしてるがそれでも仲間だ!俺も金龍と相棒が気になるからな!俺も戻るのに賛成だ!!」
「では逆転移に賛成して頂けるということでよろしいですか?」
「あんたに頼むのは少しシャクだが俺様達は元の世界に戻る事を選ぶぜ!!」
「分かりました。ではあなた方を元の世界に戻させていただきます」
一瞬の暗闇
「うぇっくしゅん!!」
とにかく寒かった
ヒュン、ヒュン
「痛っ!そして冷た!何だこれ?」
飛んで来た物を拾い上げるとそれは五円玉だった
「おー、五円玉じゃん!久しぶりに見たな!」
(ここに元の世界の金があるということはあの女神の言う通りどうやら帰ってこれたみたいだな)
久々に見た五円玉に帰って来た思いを馳せていると周りから悲鳴が聞こえてくる
「キャー!!変態がいる!!」
「変態だと!?どこにいる!?」
曲がりなりにも元勇者だ、そう俺様のやることは決まっている!
「その変態とは何処に居るんだ!?俺様が退治してしんぜよう!!」
「それはあなたの事です」
隣から聞こえてくる美しい女性の声と共にカチャリと冷たい手錠を俺の手に掛けられたのだった
その女性を見て驚いた
「ナ…ミ…なの…か?」
「ナミ?いえ、私はイヴですが」
(やはりそうか、ナミが居ない事実はこの世界に帰ったところで変わるはずがないよな
しかし、女神といいナミに似た奴が多いな)
「そんな事を言う前にちょっとこちらに来て下さい」
そう言われた俺様は言われるがままイヴと名乗る女性に手錠を掛けられたまま何処かに連れていかれた
「おい、ここは何処だ?」
「わからない?ここは取調室よ」
「どうしてこの俺様がこんな所に連れて来られなきゃいけねぇんだよ!」
「どうしてってこんなめでたいお正月にあなたは…」
顔を赤らめながら話しを続けた
「裸なのですかー!!」
「本当だ!!何で裸なんなんだー!!」
「とりあえず服を着なさい!!」
しぶしぶ俺は用意された服を着た
「囚人服じゃねぇかよ」
「文句言わずに着なさい、どちらにしてもあなたは公然わいせつでしばらく捕まるのですから」
「戻って来てそうそうそれはねぇって…」
「戻って来て…?」
「やはりあなた達は何処かに居たのですね」
「やはり…?」
「暴走族金龍のリーダー"ユウ"世界一最強アイドル"マホ"民間軍事会社ホワイトサンタのCEO"ブドウ"日本極道連合黒虎組組長"ケン"そうあなた達四人は二年前のある日を境に忽然と姿を現さなくなり行方不明扱いとなって巷では神隠しと噂されていたの。一体何処に居たの?」
(行方不明扱いとなっていたのか、しかし異世界で生活していたと言っても信じて貰えないだろうな…)
「それがなんと説明をしたらいいものか…」
「それにあなたが本当に金龍のリーダーで生きていたのならお父さんもあの世で喜んでいるかもね…」
「どうしてあんたの親父が喜ぶんだ?」
「私の父はジュウというの」
「あんたがあのジュウさんの娘だと?それにジュウさんが死んだのか?」
「そうあなたのせいでね…」
「俺のせいだと…?」
「だから私はあなたを許さない!絶対に!!」