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第5話 授業

「はっ!やぁっ!はっ!」


 少女がどこか闘技場のような場所で、1mを越える長さの円錐型の槍を常人では視認できない程の速度で突いたり振ったりしていた。

 その少女とはリーナのことで、ちょうど訓練をしているところだった。

 あの作戦から数日が経ち、リーナもようやく気持ちの整理がついてきていた。


「せいっ!やぁっ!はぁっ!」


 リーナはみんなを守ることができる力を身につけるため、今までやっていた訓練をよりハードにしていた。

 リーナは第一都市にあるエインヘリヤル第一学園、通称『一学』の生徒だった。

 いつも朝練で学園の訓練場を借りているのである。

 訓練場はエインヘリヤルが戦っても大丈夫なように、非常に強固かつ自己修復機能付きという優れものだ。

 もし、今のリーナが全力で勢い付けて槍をついたとしても、ほんの少しだけ壁が削れるだけだ。

 リーナの全力の突きは、厚さ30cmの鉄板を貫くほどの威力だというのにその程度で済むというのは、練習場の凄さがよく分かる。

 それに壁が少し削れる程度なら、すぐに修復してしまうので、実質ノーダメージだ。


「やぁっ!くっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」


 槍に体が振り回され、そのまま地面に倒れこむ。

 ガランッガランッと槍が転がる音が誰もいない練習場に響いた。


「あ、もうこんな時間・・・教室に行かないと。」


 四つん這いになったことで、腕に付けているリングに映し出されている時間がちょうど目に入る。

 あと1時間もしたら、授業が始まる時間だった。

 リーナは転がった槍を手に取って、訓練場を出る。

 汗をかいたので、お風呂に入りたかったリーナは駆け足で自分の部屋へと向かった。


――――――――――――――――――――


 ウィンと教室の扉が自動で開く。

 リーナが教室の中に入ると、少しざわついていた教室がシンと静まった。

 教室にいた全員がちらちらとリーナのことを見ながら、何かを話している。

 みんなもアンナとミナが死んでしまったことを知っているので、仕方ないのは仕方ないのだが、リーナにとって、あまり気分がいい物ではなかった。


「リーナさん、大丈夫ですか?」


「・・・アウロラさん。」


 リーナに話しかけてきたのは、緩やかなウェーブの金髪が特徴の美少女、アウロラだった。

 アウロラとは、ミラを通じて、仲良くなったのだ。

 アウロラもミラも読書が好きで趣味があったらしい。


「最近、訓練をよりハードにしたと聞きました。やりすぎは体に悪いですから、気を付けてくださいね?」


「はい。ありがとうございます。」


 アウロラはリーナの返事を聞いて、とりあえず納得したようで、自分の席に戻っていった。

 アウロラはリーナより2つ年上だ。

 これは留年したという訳ではなく、エインヘリヤル学園は入学条件を果たすと年齢に関係なく、入学することになるので、年齢がバラバラになるのだ。

 条件を満たさないと入れないこともあって、このクラスは10人しかいなかった。

 ちなみに、リーナはまだ16歳、同じクラスの中では最年少だった。


(それにしても・・・先生、遅いですね。)


 いつもだったら、先生が来て、連絡事項などを言っている時間だ。

 なのに、今日はまだ先生は教室に来てはなかった。

 そうやって、数分経つと、ウィンッと教室の扉が開き、先生が入ってきた。


(あの人はっ・・・)


 先生の後ろには、見覚えのある人物がついてきていた。

 赤い鎧は来ていないが、特徴的な赤い仮面をリーナが忘れるはずもなかった。


「えー、今日から私が担任が変更となります。私は副担任としてこのクラスに関わることになりました。」


 リーナを除いた生徒達が驚く。

 それに加え、先生の横に立っている赤い仮面をかぶった人物に興味津々のようだった。


「えー、新しく担任になるのは、今私の隣にいるルージュさんになります。」


 どうぞ、と先生がルージュと呼ばれた人物を教壇に行くように促す。

 赤仮面の人物は教壇に登り、教室を見渡した。


「・・・下はE級、上でもB級といったところだったか。全員、既にエインヘリヤルだと聞いて、期待していたが、過剰な期待だったようだな。」


「あ!?てめぇ、ふざけてんのか!?」


 このクラスにいる男子3人の内の1人、特にけんかっ早い男子のラルゴがキレて、赤仮面の人物を威圧する。

 赤仮面の人物はそれを冷たい目でちらっと見ると、そのまま無視した。


「・・・過剰な期待どころか、期待を抱くことすら無意味だったようだな。これでC級とはエインヘリヤルも落ちぶれたな。」


「てめぇ!ふざけた仮面、かぶりやがって、素顔を見せやがっ・・・」


 ラルゴがズンズンッと自分の席から、教壇に向かい、赤仮面の人物から仮面を獲ろうと手を伸ばす。

 だが、仮面に触れる直前、ラルゴの動きがぴたりと止まった。

 ラルゴは固まったまま、顔面蒼白で、汗をだらだらと流していた。


「・・・席に戻れ。一応、授業中だ。」


 ドスンッとラルゴは顔面蒼白のまま、しりもちをつく。

 ラルゴの異常な様子に、生徒達はとても不気味に感じていた。

 仮面というのも相まって、余計にその不気味さを後押ししている。


「動けないか。まぁ、いい。自己紹介といこう。今日からこのクラスの担任となる。SS級エインヘリヤルのルージュだ。」


 ルージュから圧のようなものが生徒達に襲いかかる。

 その圧に耐えながら、生徒達はゴクリと息をのんだ。

 SS級、それはたった1人しかいないエインヘリヤル。

 4大アルカナの1機、スルトを倒した生ける英雄だ。

 リーナは驚愕していた。

 仲間の死に対して冷たかった奴がまさか尊敬していたSS級だったとは思いもしていなかった。


「お前らを休暇ついでに鍛えてやる。覚悟しろ。」


 その口は三日月のように笑っていた。

 その不気味で恐ろしい笑みはこれから起こるであろう困難を生徒達に知らしめているかのようだった。

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