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第2話 救助

こんにちは。第2話投稿です!


「はぁっ・・・はぁっ・・・」


 ドクンッドクンッと激しく鳴る心臓を抑えながら、リーナは物陰に隠れていた。

 キメラに殺されたわけではなかったのだ。

 キメラが建物を粉砕したのと同時に物陰に隠れた。

 うまいこと、崩れた建物がリーナの姿をキメラから隠してくれたのだった。


「アンナ・・・ミナ・・・」


 死んでしまった仲間の名前を呟き、リーナは泣きそうになる。

 だが泣いている暇はない。

 まだ近くにはキメラがいて、見つかる可能性も残っているのだ。

 逃げ切るまでは安心できない。


「・・・外を確認してみましょう。」


 まるで自分に言い聞かせるように行動を言葉にする。

 そうっとがれきの隙間から外を覗いてみる。


「・・・?」


 外が見えない。

 確かに光が入ってきているのに、外が見えなかった。


(これは・・・いったい?)


 そのまま固まっていると、ウィンと何かが動く音がして、目の前にあった光が動いた。


「っ!」


 外の光だと思っていたものはキメラの眼光だったのだ。

 その場から離れようとすると、横殴りの衝撃がリーナを襲った。


「くっ、ぁぁぁっ!」


 がれきごと吹き飛び、リーナは宙を舞う。

 だが、がれきが盾になってくれたおかげで、リーナは爪で切り裂かれずには済んだ。

 リーナは受け身をとりながら、流れに逆らわず転がりながら起き上がった。

 キメラの位置を確認しようとすると、リーナにフッと影が落ちた。


「あ・・・。」


 リーナは上を向くと、そこにはキメラの前足があった。

 死の気配を感じ取ったリーナには、もう抵抗する意思は残っていなかった。


(これで私も・・・)


 ミラとアンナの後を追いかけられる・・・と思った瞬間、リーナに落ちていた影が消え、ドォォンッとまるで爆発音のような音が聞こえた。


「っ!何が・・・」


 リーナは視界に入ってきた光景を疑った。

 死ぬ前に見る幻覚かと思ったほどだ。

 自分を襲っていたキメラが横の腹に真っ赤な大剣が刺さった状態で横倒しになっていたのだ。

 キメラは起き上がろうとしていたが、今度は何かが大剣が刺さっているあたりに衝突し、また倒れこむこととなった。


「焼き尽くせ、『レーヴァテイン』。」


 爆発音がする中で響く人の声。

 その声がした瞬間、キメラは内部から炎が噴き出し、爆発した。


「きゃあっ!」


 腕で顔を庇いつつ、爆風に吹き飛ばされないようにしゃがみこんで、踏ん張る。

 爆風が収まったので、腕をどけて、起き上がると、キメラがいなくなっていた。

 いや、キメラがバラバラになっていた。


「あれは・・・」


 自分が一抱えする程の大きさをした球体が爆発の中心の近くに転がっている。

 球体はうっすらと光っている。

 リーナは似たようなものを見たことがあった。


「あれがキメラのコア・・・」


 自分達が倒したウルフのコアとは比べ物にならないほどの大きさだ。

 ウルフのコアはかろうじて片手より大きい程度なのだ。

 一抱えもする大きさなんて、リーナは見たことがなかった。

 リーナはよろよろとコアに近づいていく、そして、リーナは気づいた。

 キメラのコアのすぐそばに人がいることに。


「やれやれ、大きめのキメラだったが、そう強い方でもなかったな。」


 キメラの横の腹に刺さっていた赤い大剣を片手で持ち、赤い装備に包まれている。

 自分達が纏っている汎用武装とは違うものだ。


「お前が救助要請を送ってきたリーナ・アイヴァンだな?アンナ・ローゼとミラ・シュティフは?」


 くるりとキメラを倒した相手がリーナの方を向く。

 相手は、銀色と自分と同じで珍しい髪色をしていて、赤い仮面をかぶっている。

 声や身長から自分とほとんど同じ年齢の少年だとリーナには分かった。


「アンナとミラは・・・キメラに殺されました。」


「そうか。じゃあ、撤収準備をしろ。」


 さらっと流す少年の態度に、リーナは怒りが湧く。

 コアを回収しようとしている少年をキッと睨んだ。


「・・・それだけですか?」


「ん?」


「人が死んだのにそれだけですか!?」


(こりゃ・・・面倒なタイプだな。人の死を直接見るのは初めてか。まさか初めての任務か?)


 少年はがりがりと頭を掻き、口を開いた。

 少年はその面倒そうにしている態度が、リーナの怒りをあおっているのに気づいていないが。


「そういう仕事に俺達はついてるんだ。死ぬときは死ぬ。諦めろ。」


「それでも人が死んだことには変わりはないんですよ!?なのに、なんでそんな簡単に・・・」


「俺は一度も会ったことがない相手だ、どう悲しめと?」


 第三者がいれば、何であおるの!?と思うかもしれないが、死に対する感情は自分か親しい人間にしか解決できない問題だ。

 少年は親しくもない相手であるリーナを突き放すような言い方しかできなかった。


「それでも、一緒に戦う仲間じゃないですか!?」


「そうかもな。なら、お前はこれまで別の場所で死んだ仲間の名前を全部覚えているのか?」


「それは・・・覚えてません。でも!」


「なら、この話は終わりだ。コアを回収して撤収する。」


 少年はリーナから視線を外し、キメラのコアの方を向いた。

 リーナは人の生き死にを何とも思ってなさそうな態度をとる少年に怒りが湧く。


「あなたがもっと早く来てくれれば、アンナとミラは助かったかもしれないのにっ。」


「・・・そうだな。」


 立ち止まって、振り向いてきた少年を見て、ハッとした。

 仮面をかぶっていて、口元だけが見えるが、表情は分からない。

 だが、仮面の隙間から覗いている目からは、悲しみのような感情が感じ取れたのだ。


「あ・・・」


「そんな気持ちでやっているようなら、やめろ。誰かに助けてもらう?ふざけるな。自分の身は自分で守れ。」


 少年はその言葉を口にした後は一切、口を開かなかった。


――――――――――――――――――――


「・・・」


 リーゼは電気を消した部屋で下着姿でベッドの上に寝転がっていた。

 少年に言われた言葉が頭の中に居座り続けている。


「アンナ・・・ミナ・・・」


 死んだ仲間、いや、友人の顔を思い出す。

 戦場では泣けなかったが、今はもう安全地帯、自分の部屋にいる。

 いつもだったら、アンナがミナを誘拐して、自分の部屋に連れてくるが、今日からはもう二度とそんなことはない。


(・・・今の私には、静かすぎる。)


 最初の頃、アンナとミナに会う前の自分だったら、静かな方がよかっただろうに、と少し自嘲気味に笑みを浮かべた。

 笑みを浮かべながらも、目から零れ落ちた涙が頬をつたい、ベッドへとしみこむ。


「う、あぁぁぁっ!」


 枕に顔をうずめて、泣き続ける。

 アンナとミナ、大切な友人との思い出が頭に浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。

 大切な思い出が今となっては苦痛の元だった。

 だが、それを忘れることはない。

 アンナとミナの意思は自分が受け継ぐのだから。

 しばらくして、リーナは目が覚めた。

 どうやら、泣いて疲れたせいで、寝てしまっていたようだった。

 月の光が夜を照らしていて、自分の部屋にも少しだけ光が入ってきていた。


「私は・・・みんなを守ってみせる。あんな奴とは違う。私は力をつけて、みんなを仲間を守ってみせる。」


 リーナは天井に向かって手を伸ばし、何かを掴むかのようにグッと握りしめた。

 リーナはある意味、少年のおかげで立ち直れたことに気づいていなかった。

さて、今後リーナはどうなっていくのでしょうか?

次回から数話は設定方面の話になります。

一旦お預けという形になりますが、見放さないでください。

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誰でも送れるようにしてますので。

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