09:本当の結末。
インベーダーの進行を食い止めた地球防衛軍のメンバーたちは、歓喜の声をあげていた。
緊張の糸が解けた様に、泣く者もいる。
人類はインベーダーに勝利したのだ……。
と、いう茶番劇は、今も続いているが、よく通る声で、二階堂が全員に告げる。
「喜んでいる所で悪いが、実はキミ達に伝えなければならない事がある」
その言葉に、全員が沈黙する。
「ここ最近、インベーダーの動きが活発化しているのは解っているだろう。おそらく今のまま、ジリ貧で迎撃だけをしていては、やがて突破されるだろう。そこでだ。一度チームの再編成を含めて、ここの基地を解体し、大規模な基地に転属となる。私はそこで総司令を勤める。キミ達は今すぐ、新たな基地へと向かって欲しい」
何だこの展開は、二階堂は何を言っているのだろう。
急展開すぎるはずなのに、モモタやミナミやカンバヤシは『いよいよ地球もピンチだ』と、ある程度受け入れている様子だった。
「外に車を用意している。カンバヤシ君・ミナミ君・モモタ君!キミたちは、先に行ってくれ!」
二階堂の言葉を受けて間髪入れず『了解!』と、返答する三名。
彼らは、何か荷物を持っていくわけでもなく、フロアの入り口の方へと足早に進んで行った。
「まて!置いてくなっての!」
未だに縛られたままの僕は、思わず声に出して叫んだが、返事があるわけでもなく、僕の声は虚しくフロアに響くだけだった。
「さてさて。話は途中だったな。佐藤ちゃんに花沢クン」
「いや、もういい!!茶番はもう結構です!とりあえず、これを解いてください!もう家に帰してください!僕を騙して一体何の得があるってんだよ」
「あ~らら。また疑っちゃったか。じゃぁ……こりゃ仕方ないかね~。コレを現実だと思ってくれないと、そもそも始まらないんだよ」
「何を言ってんだよ!意味がわからない!」
「いいかい?キミは日常に変化を求めていたんだろ。だから、花沢クンの強引で意味不明な誘いについてきてしまった。でも、変化を求めるのに、バイトを辞める事が先なのか?キミは自分を追い込んだつもりかもしれないが、考えが甘いだけだよ。バイトをした現状で追い込む方法だってあったはずさ。受け身では何も変わらないのさ。自分の力で進むんだ。目の前のチャンスをチャンスと認識できるように、余裕を持たなければいけない」
「なんだよ……人生についての説教ですか?―――アンタが僕の何を知ってるんだよ!」
「わかるのさ」
「僕はわからない!」
「……そうか。では……仕方ないな」
二階堂は大きなため息をつく。
何故、ため息なんだ。何を伝えたかったんだ。
僕には何もわからない。何も伝わってない。
そして、気付いたら花沢がそっと俺の隣に立っていた。
それは、今までとは違う、落ち着いた表情。
そう、初めて会った時に感じた。大人びた雰囲気が漂う、キレイなお姉さんがいた。
「佐藤春樹。もしも、もしもだ……今回の事を『現実』と思った時に、私がキミと改めて出会ったら、私からキミに言う。力を―――力を貸して欲しいと」
花沢は、何を言っているのだろう。
何の事を言っているのだろう。
僕は今までに、何か重大な事を見逃していたとでも言いたいのだろうか。
こんな意味不明な状況で、理解などできるはずもない。
言葉も出ずに、思考がグルグルと回り続ける中、首にチクリとした小さな痛みが走った。
その瞬間、それが注射だと直ぐに理解できた。
理解したと同時だったか、それとも理解する前だったのか、目の前が真っ暗になった。
それから、どのくらいの時間が経過したのだろうか……僕は目覚めた。
周囲を見回し、自分の身体を確認して、そっと身体を起こす。
部屋の中を数歩進み、もう一度周囲を見回し……まるで、誰も使用していない空っぽのオフィスの様な場所に僕はいた。
頭を2・3度掻き毟り、腕組みしてから。そっとため息。
そして、脳内で感じた言葉を誰もいない場所で呟く。
「全然、記憶……消えてない」
===半年後===
電車に揺られ、トンネルに入った所で、窓に自分の冴えない顔がガラスに映り、それに気付いて少しだけ笑顔を作ってみた。
笑った所で、別に何かが変わるわけではないが、本当に何となくだ。
理由など無く、なんとなく……。
半年が経過して、今でも時々思い出す。
あのコンセプトカフェで起こった事は何だったのだろうか、テレビの素人ドッキリ企画だったのか、それとも妖怪の仕業とでも言うのか未だによく解ってない。
けど、あの後直ぐに僕は何となく喫茶店でバイトを始めた。
特に理由なんて……いや、本当は偶然『喫茶店のバイト募集』って広告を見つけて、もしかしたらって思ったんだ。
もしかしたら、あのコンセプトカフェなんじゃないかって。
あの、強引な女性と、よく解らない人たちに、会えるんじゃないのかって。
結局、働く事になった喫茶店は普通の店だったけどね。
あれから相変わらず、僕のやりたい事は見付からないけど、喫茶店で仕事をしながら何かを探そうと思う。
そう、あれは貴重な経験だったんだと、そう思う事にしていた。
バイトに向かう途中、駅の改札を抜けると、駅前の様子はいつもと違って騒がしかった。
人が『何か』に慌てているようだった。
みんな、空に向かってスマホやカメラを向けていた。
中には走り出す人もいる。
人と人がぶつかり倒れる。
車のクラクションも、先ほどからウルサイ。
叫び声……泣き声……怒声……。
僕もみんなにつられて空を見上げると、本来ならあるハズのないモノ……。
いや、あってはならないモノが上空に浮かんでいた。
「あ、あれは……インベーダー」
そう呟くと、突然腕を強く引かれた。
「佐藤春樹!シールドを突破されたの!」
「突破されたら……こうなるのか」
「そうよ」
「……だとしたら、約束だったよね」
「うん。力を貸してくれる?佐藤春樹!」
「あぁ。準備はできてたさ!」
地球防衛ゲーム
‐完‐
最後まで読んで頂き、誠に有難うございます。
2021年の年明けに、お好み焼きを食べながら言われた『連載してみたら』……この言葉に動かされました。
最初は、練習がてら読み切りを公開して、何となく理解したので今回の連載に至りました。
元が過去に書いた作品だから、わりとスグ行けると思いましたが……何気に苦戦したが、何とか最後まで来られました。
日々の更新を楽しみにしてくれた方はいたのだろうか。
正直、わかりませんが、完成した作品を読み終えて、『良いヒマつぶしになったわ』とか、『まぁ、良かったんでね?』くらい、思ってくれると幸いです。
次回作は現在は考えてないですが、また何か連載するかもしれませんし、読み切りかもしれません。
ただ、今後もここに作品は公開して行こうとは思っています。
今のコロナ渦という状況では、踏み出そうにも踏み出せないですが、それでも何かの一歩になる事を信じて。作品を公開していきます。
最後になりますが、作品の評価、Twitterのフォローなど、気が向いたらよろしくお願い致します。
『楽しかった』とか呟いてくれると、めっちゃ感謝します。
長くなりましたが、以上です!
最後までthank youでした!