07:この流れで感じる確信
二階堂との話の最中、突然フロアに鳴り響くサイレン。
少し前と同様に、魔法少女のミナミと、眼鏡モモタが所定の位置に座り、モニターを見ながら状況を確認する。
PCのキーボードを少し叩くと、ミナミは呟いた。
「……嘘でしょ……ありえない……」
その言葉トーンに、花沢が近づく。
「ミナミ。どうしたの?」
「30……いや、50……か、過去にない数の敵影です」
「そんな……」
ミナミが見ている画面が、巨大モニターに表示されると、二階堂は腕を組みながら、しばらく見つめ、やがて口を開く。
「なるほどな……先ほどの攻撃は、斥侯だったって事かね~。ははは。ちょっと手こずったから、一気に仕掛けてきたってとこか―――知恵……つけやがったな」
「二階堂!」
「な~によ。花沢クン」
「……行けます……か?」
「答えを聞かずとも分かってる顔して、それ聞いちゃうか~。……でも、残念ながら生憎、この腕じゃ~ムリだ」
「……そう……ですか」
フロアに重い沈黙が流れる。
先ほどまでのお気楽な感じの空気は消えていた。
どんなスキルがあるのかは、知らないけど、エースと呼ばれていた二階堂の現在の腕の状態ではとても戦闘はできないという事実、そんな絶望の中、何となく感じた。
そう。部屋中の視線が僕に集まっているのを感じたんだ。
『そうか……そう言う事か……この状況。そうだ。そうなるよな』
心の中で、そう思うと僕の中で、全てが繋がって行くような感覚があった。
僕が何故ここにいるのか……。
キッカケは偶然、いや!勘違いだったとして、こうやって、気絶させられて、拘束されて変な注射を打たれかけ、絶体絶命のピンチに、エースの登場……そして、僕を勧誘する話。
そこからの、この敵の襲撃……そうだ!この流れは間違いない。
『絶対に間違いないっ!!』
心の中で強くそう叫び、確固たる自信を持ちつつも、僕はゆっくりと言葉を発した。
「ま、ま、まさか……ですよね。そうなりますよね。ここまで来たら、そーゆー流れになりますよね。突如襲ってきた敵に対して、対抗する手段がない!でも、そんな時に残る『希望の光!』いや『最後の希望!』そう!わかりますとも!この流れ!」
変な高揚感が勝りすぎて、思わず饒舌になってしまったが、僕が言い終わると、ずっと腕組みしていた二階堂が告げる。
「行けるか!?」
その言葉には、正にエース!歴戦の猛者、戦いの天才と言われるだけある、重さと深みが込められているのが、戦士ではない僕でも、ハッキリとわかった。
映画やドラマ、漫画やアニメでも、散々見てきた流れだ。
いつの世も、民間人がエースになるものである!
僕は思わず唾をのみ込み、次の言葉を出す―――その直前だった。
「はい!見せてやりますよ!今こそ、オレの本気を見せる時ってヤツっしょ。二階堂さん!」
「そうだ!カンバヤシ!その言葉を待ってた!」
謎のやり取りが、目の前で繰り広げられた。
しかも、めちゃくちゃ簡単な感じで。
「まて、まて、まて、まて!!おい!この茶髪!カンバヤシ!!そこは僕でしょ!」
「まぁ、見とけ」
「ダメだって、お前、さっき2体でヒーヒー言ってたでしょ!」
「あの時のオレと思うなよ」
「思うよ!あの時のお前だよ!お前のままだよ!」
カンバヤシは、しっかりとしたサムズアップを見せると、巨大モニターの前にある席についた。
「違う、違う!話を聞けよ!カンバヤシ!」
僕の声だけが、フロアに響き渡った。
つづく