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06:彼は戦いの天才である

その声は入口の方から聞こえ、とても明るい雰囲気で、よく通る声だった。

全員が入り口の方を向く……僕は首の可動域が限界なので、見る事はできなかった。


「なっ!―――だれ?」

「あれ~?本部から聞いてないかな?二階堂ってんだけど。それとも、エースとか、戦いの天才とでも言えばいいかな?」

「……あなたが……。なるほど……意外とチャラいわね」

「いや、チャラいは余計だけど。とりあえず、遅れてゴメンね~。ちょっと、ここに来る前に子供を助けてさ。右手をポッキリ、やっちゃったからさ、病院行ってて遅れちゃった。ははは。ゴメンね~」

「は?」

「で、そこのグルグル巻きにされてる人だけど―――」


そんな言葉の後に、二階堂は目の前に現れた。

帽子を被り、丸いサングラス。首からは銀色のアクセサリーがジャラついていて、何か全体的にチャラさは、確かに出ていたし右手には、しっかりとギプスが装着されていた。



「えっと、佐藤ちゃんだっけ?災難だったね~。そして、花沢クン。良く解ってない薬を使うのはダーメ。話を聞けばコッチの落ち度が明白じゃないの。そーゆーのを無視して強引に進めるのは良くないよ。悪者のやり口じゃんか」

「えっ?聞いてた……の?」

「まぁね。ちょっと前から。……あぁ、それと、カンバヤシくんだっけか。ナイスシューティング!」

「う、うっす」

「で、花沢クン。返事は?」

「……いくらでも誤魔化しきくのに……」

「それでもダーメ」


そんなやり取りを聞いて、僕は思わず呟いてしまった。



「やっと、まともな会話ができる」

「そうそう。佐藤ちゃん!まともな会話をしよう」

「はい!」

「……で、キミ……今日は何をしてたの?」

「え?」

「だーから。今日は何をしてたの?」

「バイトの面接……の、予定でした」

「で、コレに捕まったから、面接も間に合わないって感じかな」

「……まぁ、そうなります」

「ホントに?」

「いえ、いや、あ、その、行きたくなかったので……丁度良かったって感じです」

「だよね。うんうん。正直、正直…でも、何となく仕事辞めるのは良くないかなぁ。辞めたら変われる!なんてのは幻想だし、変われる機会なんて、受身じゃ来ないからね。ははは。…って事で、ちーーーーっとも正直でないお前!花沢クン!」

「な、なによ」

「コッチの落ち度は、ちゃーんと認めとこう。大人なんだし」

「……うっ」

「その上で、どう責任取る?」

「………それは……」


あの、無茶苦茶な事を言っていた花沢が押されている。

本当に、やっとまともな人が出てきた。

そう思っていたのだが、魔法少女のミナミが口を開く。


「ちょ、ちょ、エース!!……あれ?エースでいいの?あれ?……うーんと、二階堂さん!待ってください」

「ん?どうしたのかな?ミナミくん」

「その……なんて言うか、勘違いしてただけなので、ここは穏便にして頂きたいかな~って。その、花沢さんって、根は良い人なんです!真面目って言うか―――ぶっ飛んでるとこもあるけど。その、何て言うかアホなくらい真面目なだけなんです!―――なので、どうか!」


ミナミの言葉に、眼鏡のモモタと、茶髪のカンバヤシが言葉を続ける。


「僕からもお願いするっす!花沢さんって、純粋なアホなだけなんっす」

「あーまぁ……同じく、頼んます。花沢さん―――基本ヤベェだけなんで、ヤベェんですよ」

「みんな……何か、悪口がチクチク来るけど…………ありがと」


その花沢の姿を、腕組みしながら二階堂は、しばらく無言で見つめてから口を開く。


「ふーん……なるほどね。みんなの気持ちも伝わったよ。で、どうすんの?」

「………わかってるわよ。謝る!謝ります!謝らせて頂きます」

「それだけ?」

「え?」

「新しい仕事を紹介してあげたら?」

「はい?」

「だって、佐藤ちゃんって、インベーダーの事を知ってるし、単純に即戦力なんじゃ~ないの?」

「うっ、でも……まだ……」

「人間だよ。どう考えても人間。ヤツらなら、そんな拘束なんて、一瞬に引き千切るっしょ」

「そ、そうなの!?」

「いや、一度も見た事ないから、知らないけどさ~」

「ないのか!?二階堂!!!」

「って事で!即戦力として受け入れてやんなよ。佐藤ちゃん。キミもそれでいいだろ」


まさに思ってもいない急展開だった。

言葉が、回答が、頭の中をグルグルと高速で回っているのがわかる。


「えっと……僕は―――」


何か言おうとしたその瞬間だった。

再びあのサイレンが、フロアに鳴り響いた。


つづく

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