01:どんな時でも物語は突然だ
「はい。じゃぁ、こちらにお掛けください」
「いや、あの……何か勘違いされてませんか?」
「まさかー。コチラで合ってますよ。ちゃーんと、正解でーす」
「じゃなくて、そっちが間違って―――」
大きな電話のベルが鳴る。
「あっ。ゴメンナサイね。電話―――ちょっと、失礼しまーす。―――あ、はい。もしもし、花沢です―――」
そう言うと、目の前の女性は、電話をしながら、入口の方へ移動していった。
しかし、突然なんなのだろうか。
初めての渋谷、ちょっとした予定があり、少し道に迷ってスマホを見ていたら、
いきなり、女性に腕を掴まれ『お待ちしてましたー』とだけ告げられると、そのまま強引な状態で、ここに連れ込まれてしまった。
今思えば、腕を振り払うのは簡単だ。
そう!簡単ではあった!……だがな、黒髪ロングの、色白のお嬢様な雰囲気……。
めっちゃタイプ。
タイプ過ぎて『都会って夢あるなー』って、ついつい、ここまで来てしまった。
……ここは何処なんだろ?
何か変な機械が、いろんな所にあって、アニメとか特撮とかで見たことある様な雰囲気だ。
中央には大きなモニター、その手前には大きな円卓がある。
そこには、3人が座っている。
一人は眼鏡の男性……くせ毛なのか寝ぐせなのか、わからん髪型だ。
もう一人は、茶髪にピアスの男性……首からは何かアクセサリーがジャラジャラしてる……チャラいんだと思う。
三人目は、魔法少女だな……あれは、あんなキラキラでヒラヒラした服装、カラフルな髪の毛……魔法少女だ。
ここは、何だろ?
とりあえず、声をかけてみるか。
「あの……すみません」
―――全然無反応だった。
この人たちは、三人グループなのかな?
それとも、それぞれでお店に来た人たちなのだろうか……。
そんな事を思いながら、また声をかけてみる。
「みなさん。すみません!」
すると、寝ぐせ眼鏡の男性が返事をする。
「えっ?あ……」
「あの。ここって何です?」
「え?何です……って?あぁ。ここ?『指令室』っす」
「しっ!指令室!?えっ!?なんの?」
「『地球防衛軍』のっす。―――って、ん?あれ?知らないっすか?」
「はい」
僕の返事に、魔法少女は机を叩いて勢いよく立ち上がる。
その勢いで、椅子は盛大に後ろに倒れる。
「うっそ!?知らないで来たの!?」
「はい。あの人。その、さっきの女の人に突然『お待ちしてました~』って、連れてこられました」
俺の言葉を聞くと、魔法少女と寝ぐせ眼鏡が暫く顔を見合わせ、やがて、茶髪男子の方を向くと、大きくため息をつき一言呟く。
「はぁ。マジかよ……。アイツ、そーゆーとこあるからなぁ」
茶髪男子が明らかに呆れた顔して、天井を見上げた。
本当に、ここは、何なのだろうか?
つづく