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83.威力諜報と脅迫

「苦労して手に入れた情報だ。出先を間違えるな」

 アイアンメイデンという異名で各国の軍首脳部、外人部隊、民間軍事会社、テロリスト等々から恐れられるのローザの、珍しく息の上がった声がトランシーバーから響いた。

「わかってるよ。こちとら現世顕在限界のギリギリまで消費してんだぜ」

「アラブでの二の舞は踏むな。戦術核の使用まで1時間もないぞ」

「1時間か…」

「こちらはエメトリア城でのやっかい事を片付けに行く」

「やっかいごと?」

「ああ、大したことはない。クレムリンの方は任せたぞ」

 ローザの方から一方的に通信が切られ、吉川が大きめのトランシーバーのスイッチを切った。

「また迷子になって戦車大隊のど真ん中に出るなってさ」

 沖田と小坂に振り返った。

「二人は無事なんだろうな?」

「ああ。カーラの方は消耗は激しいけど無傷だってさ。襲撃部隊の損耗も軽微らしい」

 それを聞いて頷いた沖田が、今度は忌々しそうに後ろを振り返った。

 森の中に直系10メートルはあろうかという黒い円が描かれていた。

 いや、正確にはそれは地面に穿たれた強大な穴だった。

 光を吸収してしまうのか、ほんの数センチの深さも見ることができない。そのため、地面に描かれた黒い円に見えるのだった。

「これがどうすれば魔法の絨毯として後生に描かれるんだかな」

 ひょいとその漆黒の円の中を覗き込む沖田。

「やれやれ、バカが核兵器とか使う前に、さっさとやっつけてこようぜ」

 そう言って、自分の右手で自分の左胸を押さえ、穴の縁に立った。

「俺ここ通るの嫌いなんだよなぁ」

 普段から冷静な小坂がぼそりと呟き、見えるはずのない穴の中を覗き込んだ。

「死者の河なんぞ、魂削って何度も渡るとこでもないしな」

 吉川も小坂と沖田と同じようにして縁に立つ。

「エンディングに向かってまっしぐらか」

「時計塔に雷が落ちる直前って感じ?」

「待ってるのは、皇帝とダース・ベイダーだろ」

「アイムユアファーザー」

「ノオ!ノォオオ!」

 沖田が映画のサビの部分を口ずさむ。

「最初から、こうしとけば良かったとか思わん?」

「それを言うなよ。ここに入って、また帰ってこられる保証もないしな」

 吉川の合図共に、沖田はジャイアントエントリー、吉川は水泳の飛び込み、小坂はすり足で歩くようにして、そのまま黒い深淵へと吸い込まれるようにして落ちていった。


 魔女と呼ばれる異能力者達が城の一角に集い、”聖戦”を発動しているエメトリア城内は厳戒態勢が敷かれていた。

 城内の中枢に入れるのは、革命前から身元の判明している者達で限定されていた。

 しかし、この混乱期にあって、革命軍に家族を人質に取られているスタッフまで洗い出すことは難しかった。

 祖母の代から王女の身の回り世話や軍務以外の秘書的な役割をこなす侍従であるドリス・アベニウスは、エリサより5歳年上で幼少の頃より親しかった。

 一昨年まで王女の侍従長を務めていた祖母と、城内の事務方に勤務していた母が革命軍とソビエト軍に拉致されたのは、沖田がエリサを救出して数時間後のことだった。

 ドリスは革命軍側からそのまま城内にとどまるように指示があり、その後、連絡役として父親に扮した工作員が、着替え等ともに次の指示を伝えてきた。

 鞄の中には、城内でよく使われている水差し瓶と中に透明な液体が入ったペットボトルほどの容器が入っていた。

「2300に女王の近くで中の液体を散布しろとのことだ」

 娘をいたわる父親を演じながら工作員が冷たく伝えた。

「この中身は?」

 恐怖と絶望に震える声でドリスに聞かれると、父親の顔をした工作員が笑いながら首を振った。

「命令が実行されない場合は、生きたまま二人の体の一部を切断して毎週、冷蔵便で送ると言っている」

 伝えるられる内容の残酷さに、ドリスは小さく悲鳴をあげて息を飲んだ。

「2300だ」

 再度時刻を伝えると、工作員はドリスを抱きしめ、慈愛に満ちた表情を残してその場を後にした。

 呆然とそこに置かれた鞄を見つめるドリス。

 やがて震える手で鞄を持ったドリスが、城門につくられた外部との面会所を後にした。


To be continued.

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