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65.核?!

 元来エメトリアは異能力者である魔女の存在もさることながら、有事の際は16歳以上の国民は兵役について戦う義務を有する。東ヨーロッパの中でも中立を維持するため、国民自らが犠牲になることを義務としてそれを標榜している独立国家だ。その歴史は各国からの侵略の歴史ともいえ、古くは中世まで遡る。ヒトラーの精鋭部隊に侵略された際も、国民全員が武器を取って戦い、多くの犠牲を出す一方で侵略を阻止した歴史を持つ。

 女王救出、そしてエリサ王女の奪還劇を広場や家のテレビで観ていたエメトリアの国民は、これまでの革命軍の圧政に対する反動が一気に噴出。国民が自ら武器を手に取って各地で革命軍との戦闘を開始した。

 各家に備蓄されることが憲法で定められている、兵役用のライフル、弾帯、ボディアーマー等の装備の多くは革命軍に接収されていたが、まだ残存している装備も多くあり、また有志で二次大戦中の兵器を保存していた者達が武器を放出。有事を想定したこれまでの訓練をふまえて部隊を組み、エメトリア国民軍と称して革命軍へと攻撃を開始した。

 中核となる指揮官メンバーは革命軍に強制参戦、もしくは革命軍内の特別警察に逮捕拘束を受けていたため、第二次大戦中に活躍した引退済みの老人達が率先して各部隊の連携と指揮とっていった。

 日頃から定期的なミリタリーキャンプへの参加が義務づけられ、政府を主体とした指揮系統が崩壊した際の訓練も行われていたため、装備の比較的手薄な革命軍の部隊から、反革命軍すなわち国民軍にたやすく撃破され、投降していった。

 一方で、最新鋭の戦車、装甲車、音速戦闘機や戦闘ヘリ、重機関銃や装甲を装備した重装備の革命軍部隊は、一般的な装備しか持たない国民軍の進撃を防ぎ、逆に大きなダメージを与えていた。

 しかし、国民軍に参加する二次大戦を経験した老人達は、どこに隠していたのか、大戦中の戦闘機、戦車、軽装甲車を持ち出して、その老練で巧妙な作戦によって革命軍の最新兵器を撃破する。

 博物館に保管されていた、イタリアからの払い下げのフィアット CR.42まで持ち出され、ソビエト製の最新鋭攻撃ヘリ、ハインドDへ空中戦をしかけ、大戦中に使用されていた戦車T-34の砲塔部では白髪の老人が指揮をとり得意のゲリラ戦法で革命軍のソビエト製戦車、T-90を翻弄する。

「わしらはアフリカでロンメルともやっとるのでの。あの時もナチどもを散々苦しめてやったわ」

 博物館に飾ってあった二次大戦中の戦車と装甲車を操縦して自ら囮となり、他の老兵達が道路に掘った溝に潜んで装甲の薄い戦車の底部に爆発物を仕掛けるという過激な戦法で、革命軍の精鋭戦車部隊の一角を見事撃破してみせた老人達が冥土の土産になったと笑った。

 家族を人質にとられ革命軍への参加を強制させていた兵士達も装備を持ったまま次々と国民軍へと寝返り、革命軍は各地で総崩れとなっていった。


 突然のフラッシュバン。

 激しい閃光が辺りを埋め尽くし、同時に革命軍の精鋭達がバルコニーになだれ込む。

 見覚えのある顔を目撃するも、沖田はエリサとともに倒れ込み、その身を守るようにして上から覆い被さる。

 襲撃はトラディッチの救出が目的だったようだ。

 発砲はあったが沖田と小坂を傷つけることはできなかった。

 追うようにして、吉川の放ったライフル弾が器用に曲がりくねりながら、しんがりの兵士の足を撃ち抜くも、部隊は素早く撤収していった。

「ちっ」

 舌打ちした沖田が起き上がる。

「大丈夫か?」

 よろめきながらエリサが立ち上がり頷いてみせた。

「追うか?」

 小坂が周囲を警戒しながら言った。

「第一目標はクリアしたしな」

 沖田が疲れたように首を回した。

「一旦、レジスタンスの連中と合流しよう」

 首に付けられたインカムのスイッチを押す沖田。

「長島、女王派の連中はどこまで侵攻している?」

「いやいや沖やん、見せつけてくれるねぇ~」

 にやけ笑いを浮かべた長島の声がインカムから響く。

「もう、ほんとこっちが恥ずかしくなっちゃうよ」

 一連の動きは城内の監視カメラを利用してモニターしていたらしい。

 沖田が恥ずかしそうにポリポリと頭を搔いた。

「反革命派は国民軍と名乗ってレジスタンスも合流したってさ。こっちはすでに彼らと接触しているよ。カミラ達が前戦を張っているポイントまでナビゲートするよ」

 何か端末をカチャカチャと打つ音がする。

 城内のサブ管制室を占拠しているアマチュア無線部、エレクトロニクス部部長の長島、長谷川は城内のほぼ全ての監視カメラ、放送施設、遠隔操作式のドアなどを管理化においていた。

「うん。なんだちょっと待って」

 長島の慌てた声が聞こえ、長谷川が慌てたように近くにいるエメトリア人に通訳を頼んでいる。

 暫く経って、

「やべえぞ。あいつら、核を使う気だ!」

 インカムの向こうで長島が叫んだ。

「核?!」

 沖田、小坂、エリサが顔を見合わせる。

「核なんてなんに使おうってんだよ」

「ちっ、そういうことか。あいつら始めからグルだったんだよ!」

 普段は温和な長島が珍しく怒気を含んだ声を上げた。


To be continued.

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