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54.ビーフ or チキン?

「ここかぁあああ!!!」

 両開きの豪勢なドアを吹き飛ばして、グルカナイフとベレッタを両手持ちした沖田が中に飛び込むと、そこは王族専用の食堂のようだった。

 銀色の豪奢なトレーが落ちる音と共に、メイド姿の女性の悲鳴がこだまする。

 トラディッチや革命軍幹部のものであろう。一般兵よりはるかに豪華な食事の準備をしていた執事とメイドが、殴り込んできた沖田達に驚いて逃げ出した。

「だぁあああ!また違う!!」

 全身、返り血やら焼け焦げやらでボロボロの沖田が、近くにあったこれまた高そう椅子を蹴り上げた。

「ふっざけんなよっ!マジで!どこいんだチクショウ!」

 暴れ回る沖田をほうっておいて、後から入ってきた吉川と小坂が、室内を見回す。

 数十名が座れる大きなテーブルの上には、出来たばかりの料理が並べられていた。

「まったく、戦闘やってんのにいい気なもんだな」

 まだ湯気を上げ、皮の焼ける香ばしい臭いを放っているローストチキンを一つ取り上げて口の中に放り込む。

「うっま」

 食べ物を物色し出す三人。そういえば、ここ数日、携帯食料以外ろくな物を食べていない。

 しばらく普段でもお目にかかれない豪勢な料理を思うまま食べていると、突然、城門のある方から鬨の声が上がった。

 城内に響く戦闘音が激しさを増していき、至る所で銃撃音や爆発音が聞こえ始めた。

「どうやら、反革命派が城攻めを開始したみたいだね」

 敵兵から奪ったトランシーバーをいじっていた小坂が言った。

「早いとこ、エリサちゃんとカーラの娘見つけてずらかった方が良さそうだな」

 もごもごと厚切りのローストビーフとチーズとパンを頬張って、ワインで流し込みながら沖田が言った。

「しっかし、”しらみつぶし”は作戦案としては、ちと無謀だったな」

 小坂が並べられた料理で器用にサンドイッチを作って頬張る。

「その辺りにいるの生け捕りにして聞いてみるなんてどう?」

「あ、それがあったか」

「一般兵がVIPの居場所を知っていればだけどな」

「そいつが知らなかったら、知ってる奴を答えさせれば良くない?」

「じゃあ、トラディッチかあのフォークって奴を捕らえるのが一番早いな」

 あーだこーだ言いながら、ひとしきり料理を腹に詰め込んでいく。

 ガチャリと音がして食堂のドアが開いた。

「生け捕りな!」

 吉川が怒鳴り、厚手のテーブル素早く引き倒してバリケードにすると、その影でライフルを構える。

 小坂は目にも止まらぬ速さで井上真改を引き抜くと、峰を返し壁を蹴ってドアへと突進していく。

 チキン片手の沖田は、椅子に座って足を組んだまま、左手のベレッタをめんどくさそうにドアに向けた。

「まて!俺だ!竹藤だ!」

 ドアの隙間から手が伸びてパスケースをひらひらと振ってみせる。

 銃とチキンを構えたままの沖田がドアの向こうを慎重に確認した。

「クリア」

 ドアを開け竹藤を引き込むと、すぐに閉じた。

「まったく、怖い高校生達だな」

 竹藤がまだ手を上げた状態で入ってくる。

 ”PRESS”と書かれたヘルメットとボディアーマーを着込み、今度は二台のカメラを携えていた。

「お前らなにやってんだ?」

 沖田達の様子をみてあきれ顔になる。

「飯食ってんだよ」

「腹が減ってはなんとやらだ」

 言いながら沖田が竹藤にグラスを渡し、ワインを注いでやる。

「いいワイン飲んでやがんな」

 竹藤がボトルを奪い、手酌でもう一杯注ぎ込む。

 聞けば、反革命軍が城門を破って侵入を開始するのに合わせて、各国のプレスもこれを機に城内へと入り込み始めており、竹藤もそれに紛れて来たらしい。

 反革命派は現在は優位を保っているが、戦力としての差は大きく革命軍の反転攻勢が始まるのは時間の問題らしい。

「ところで姫君とカーラの娘は見つかったのか?」

「見つかってりゃこんなとこで飯食ってねぇよ」

 吉川が両手を挙げて首をふった。

「なら、俺の取材が役に立ちそうだな。反革命派の連中から城内の情報を仕入れてきた」

 竹藤がプレス用ベストのポケットから地図を取り出してテーブルに広げると、三人が集まる。

「トラディッチのいるHQ(司令部)はこの辺りらしい」

 この場所からの経路と、城の奥にある一角を指さす。

 沖田、吉川、小坂の三人がうなずき合い立ち上がった。

「さてさて、そろそろクライマックスかな」

「やっぱラスボス倒さないと姫は取り戻せねぇんだな」

「悲しいけどこれ、戦争なのよね」

 どやどやと食堂の出口へと向かう。

 その三人の背中を見やった竹藤が、

「お前達、ここで引いて国外に脱出するってのはどうだ?」

 と、これまでに見せたことのない真剣な顔と声で言った。

「どうした?おっさん」

 振り向く三人。その三人共がニヤニヤと笑っている。

「おっさんも一緒に行くんだろ?」

 両手をあげ頭を振る竹藤。

「ああ、君らについていった方が良い画がとれそうだしな」

 そう言うと、カメラを構えた竹藤が後に続いた。

「ふんっ。ご苦労なこったな」

 竹藤を振り返った吉川が苦笑いして片手を振った。


To be continued.

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