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33.イラー・アルマウトと二匹の黒猫

「その電気椅子は、100年ほど前のものをわざわざうちの情報将校が集めて直させた代物だ。簡単には死ねんぞ。自分の肉体が焦げていくのを感じながらのたうち回るがいい」

 フォークのいかにもな言いまわしに、三人が思わず吹き出した。

「最近のアニメに出てくる悪役だってもう少し気の利いたこと言うぜ」

 沖田の悪態に、

「その余裕、いつまで保っていられるかな。この椅子に座らされた王室関係者はあっという間に慈悲を求めたぞ」

 王室関係者と聞いて沖田の様子が変わった。

「おい、おまえ。いい加減にしろよ」

 沖田が壁の一面にはめられている黒いマジックミラーの方を睨みつける。

「どうする?拘束具を食いちぎるか?」

「食いちぎって見せようか?」

 フォークの挑発に、沖田が低い声で応じた。

「おい、バカよせって」

 吉川が明らかに動揺した声を上げる。

「あー!バカよせって!!」

 小坂も慌てて止めようと叫んだ。

 ガチャリッと音を鳴らして沖田がゆっくりと立ち上がった。

 鉄製の拘束具の一部が赤く溶けて床に落ちていく。

「やべえ!おっさん、ふせろ!」

 沖田の全身から紅蓮の炎が吹き出し、一瞬にしてその体積を増した。

 赤い炎が室内を回り出し、吉川、小坂、竹藤の体を嘗め、拘束具を焼き切った。

 甲高い悲鳴のような悍ましい叫びと共に、巨大な炎の固まりが部屋を覆い尽くして爆発する。

 フォークのいる部屋のマジックミラーとコンクリート壁が一斉に吹き飛び、まるで生き物のよう這いずり回る数千度の炎が、一気にモニタールームに吹き込む。

 直撃を受けた護衛の兵士が一瞬にして蒸発した。

 フォークは軍服の一部と頭髪を焼きつつも、その細い体を鋭く動かして炎を避けると、転がるようにして室内から脱出する。

 人類が生きている間に決して耳にしない狂気の叫びが響き、炎に包まれた人型の何かがゆっくりとモニタールーム入ってきた。

 逃げ遅れた兵士が錯乱したまま腰の銃を抜いて乱射する。

 炎に吸い込まれた弾丸はそのまま溶解して地面にシミをつくった。

 失禁したその水分さへ一瞬で蒸発する中、弾倉が空になった銃の引き金を引き続ける兵士を一瞬で蒸発させる。

 部屋にいた他の兵士達は我先にと一斉に逃げ出していった。

 魂の根幹をわしづかみにされるような奇声が響くと、吸い込まれる様に炎の怪人の姿が消えた。


「あっツっ!炭化するかと思ったぜ!」

 黒焦げになった机の天板下から這い出てきた吉川が床に尻餅をついて座り込んだ。

 小坂、竹藤も続いて這い出てくる。

 炎と爆発の中心にいたはずの沖田は、服に焦げ一つ無い状態で、部屋の真ん中で膝を抱えてうずくまっていた。

「大丈夫か?!」

 這いずるようにして沖田の近くまでいった吉川が肩を手で叩いた。

 瞬間、ドキリとして少し後ずさる。

 狂気の残るうつろな目を向けて、沖田が虚のような口を開く。

「うっ」

 と言う声と共に、沖田の顔が正気に戻った。

「おい」

 吉川がもう一度声かけると、

「ああ、派手な首飾りを付けた二匹の黒猫が門のところにいてな」

 沖田がろれつが少しおかしい状態で話出す。

「『また来たのか。今度はもっと先に進むことになる』って言ってたさ」

 首を振って意識をはっきりさせようとする。

「お前がイフリートと入れ替わってこっちに戻れなくなったら、でかい消防車でひき殺してやるよ」

「やさしいな。おまえ」

 フラフラとしながら沖田が立ち上がった。

「なんだったんだ今のは」

 竹藤が高温で焼き切られた足かせを外すと、隣に座り込んでいる小坂に聞いた。

「粉塵爆発かなんかだったんじゃない?」

 めんどくさそうに竹藤を横目で見ながら小坂も立ち上がり、同じように鎖の付いた足かせを放り投げる。

「どこなんだここは?」

 沖田が爆発で空いた壁の向こうを覗き見る。

「連中が戻る前に早いところ脱出しよう」

 同じように覗き込んだ吉川がそのまま瓦礫だらけの隣室へと入っていった。


To be continued.

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