001
オレの名前はアキト。ごく普通の高校生。放課後、帰宅途中に大型トラックにはねられて死んでしまった。
目が覚めると神殿みたいな場所にいた。
「ここはどこだ?」
「アナタは死んでしまったのです」
俺は後ろを振り返る。
そして、息をのんだ。
そこには絶世の美女がいた。身長は160センチほどで、清楚感のある白の修道服を着ている。
銀髪ロングで、宝石のように綺麗なエメラルド色の瞳。
胸の起伏は少ないが、それもまた彼女の美術品のような品の良さに一役買っていると言える。
「び、美人だ!?」
「知っています」
「アナタほどの美しい女性とお会いできるなんて。もう死んでも構いません」
「ご安心ください。
その言葉通り、アナタは既に死んでいます。
大型トラックと追突したのを覚えていますか?
アナタはあの時で死んでしまったのです」
な、なんだってー。
大型トラックにはねられてからの記憶が一切ないので嫌な予感はしていた。
本当に死んでいたのか。
「泣かないでください、アキトさま。ささっ、私のハンカチを貸してあげますから、どうぞ涙をお拭きください」
「ありがとうございます。えーと、名前は……」
「私は女神のメリッサです」
「女神様!? どおりで美しいわけだ!死んでしまったのは残念ですが、最期にアナタのような美しい方とお会いできて幸せです。
アナタの美しさで後悔なんて全部吹き飛びました」
「ふふふ、アナタは本当に素直ですね。そんなアナタに女神から朗報です。このたびアナタは、死ぬまでにたくさんの善行をしたので、特別にあの世に行かなくてもよくなりました!」
「それは本当ですか!? やったー!!」
やったぜ。
俺はガッツポーズする。
メリッサ様は優しく微笑む。
素敵な笑顔だ。
笑うとよりいっそう魅力的になる。
「まず、詳しい理由を説明しますね。私たち女神は最近『異世界転生サービス』を実施しております」
「異世界転生サービス? 初めて聞いたな」
「地球では一般的じゃありませんからね。詳しい選考理由は話せませんが、アナタはそれに選ばれたというわけです」
「なるほど、理解理解」
「喜んでもらえてなりよりです。たまに発狂する方がいますからね。アキトさんは話が分かる方なので助かります」
メリッサ様はニコニコしている。
「異世界に転生したあとは何をすればいいんだ?」
「ご自由に過ごしてもらって結構ですよ。他の転生者も好き勝手に生活しております。暗殺者になったり、女の子を暴力で脅したり、テロリストに変貌したり、みなさんやりたい放題しております。前回送った方にいたっては、女神であるこの私に喧嘩を売ってきたほどです。私の送る転生者って、なんでこんな残念な方ばかりなんでしょうかね」
「メリッサ様の見る目がないだけなんじゃ?」
「なにかいいましたか?」
「いえ、メリッサ様の優しいお気持ちに感謝いたします」
メリッサ様はため息を吐いた。彼女も苦労しているんだなぁ。
というか、俺以外にも連れて行かれた人っているんだな。しっかりと記憶しておこう。
どうやら本当に好き勝手に暮らしてもいいようだ。
俺の気持ちを読み取ったのか、メリッサ様は苦笑しながら言葉を続けた。
いつもお読みいただきありがとうございます。