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特別犯罪課




チップにより犯罪率が激減したといっても、犯罪というものは、存在する。

しかも、チップのおかげで軽犯罪が減った代わりに、突発的、そして凶悪な犯罪が割合としては増えていった。



とある休憩室――――――――



「盧々宮ぁ・・・茶、零れてる。」

「あっ・・・!すみません!!」


気づけば、紙コップはすでにカラ。入っていた茶は、先輩のズボンと靴がすっかり吸い込んでしまった。

足元を指さしたまま、嵩原(かさはら)先輩はズボンの裾のようにじっとりした目をしている。

「ごめんなさい!クリーニング代は僕が・・・いや弁償をっ!」

「イヤ別にいいわ。どうせ買い替える予定だったしな。」

まぁ座れや、と僕はベンチに誘われる。サーバーから新しく茶を受け取り、僕は先輩の隣へと腰を下ろした。

「ヘコんでんのか?ボスに怒られてよぉ。」

ハッ、と先輩がシニカルに笑った。目も笑っているが、いかんせんその目つきが鋭いからか、微妙な緊張感が流れる。

「まぁ、あまり厳しくは言われなかったんですが・・・『俺たちは平和の支柱だ。少しでも欠ければ急激にそれらは崩壊する。集団の重要性を舐めるな。』と・・・」

先輩は、カハハッ、と声を出して笑った。

「ま、それでもボス―――咲村さんにしては抑えたほうなんだろ、何せ禁止区域への侵入だからな、いつもなら始末書何枚だ?」


そう言って、紙コップに入ったコーヒーを先輩は一息に飲み干した。アイスコーヒーの、ハリのある香りが僕の鼻孔をくすぐる。

嵩原先輩は知らないのだろうか、いや、知っているに違いないだろう。

あの日、僕は鹿毛さんに追い付くことができなかった。彼に縋り付いて、もうやめましょう、今はどうか逃げてくださいと泣きつくことさえできなかった。

階段で足を踏み外した間抜けな若造には、何も止めることができなかったのである。

そして、彼はもう二度と、その背中を見せることは無い。


「まぁ、色々あるわな、お前も、俺も。」

紙コップを握りつぶしながら、先輩はまた笑った。僕もつられて何故か笑った。面白くもなにもないのに。

すっかり原型を留めていないコップをゴミ箱に放り込んでから、先輩は、お前も飲んだらさっさと来いよ、と休憩室を出ていった。



その後ろ姿を見送りながら、僕はごくり、ごくりとゆっくりお茶を飲み干した。茶の温度が喉から全身に広がり、体を熱くする。

鹿毛さんが僕に残してくれたもの、僕がすべきこと。悲観的になっても、だれも助けてはくれない。僕は英雄ではない。英雄になりたいわけでもない。ただ、誰かを救うために、僕は――――


休憩室のドアを開け、僕は僕がいるべき場所に戻る。


【特別犯罪課】通称、トクハン。誰かの正義となるために、僕はここにいるのだ。



二話目となります。この作品が多くの人に読まれますように。


この前、シャワーが暴走して俺のパーカーとイヤホンをびしょびしょにしてしまいました。訴訟。


評価、レビュー等々、作者のやる気が上がります。


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