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スキル無しの少年A  作者: みやざー
2/2

二話

「…え」


 衝撃的な話を聞いた。


 スキル無しの人が今までいたわけじゃないし、今後スキルが手に入らないわけでもない。


 ただ、最初に手に入るスキルの熟練度は5。


 1から5段階あり、鍛錬すれば手に入ることもある。


 4から5に至るまでに一生かけても難しいと言われているため、スキルが無いって言うのは冒険者を志すアヤトにはかなり厳しい話になってくる。


「どう、驚いたでしょ。あなた同じスキル無しよ。でも、お父さんは落ち込みはしなかったわ。その分頑張って熟練度をあげてやるんだーって」


 残念なことに僕は父さんほどポジティブではない。


 だけど、父さんは剣術スキルが3にもなっていて、使える技も多かった。


 頑張れば僕も父さんのようになれるだろうか。


 ガチャ、


「母さん、父さんの装備ってまだあったっけ」


 立ち直るには早すぎるアヤトに驚いた様子の母さん。


「ふふっ、もちろんあるわ」


 母さんは寝室に防具立てにかけてある胸当て、肘当て、膝当て、腰当て、の重要箇所だけを守るための防具を持ってきた。


「はい、これがあなたのお父さんの装備よ。お父さんは大剣だったけど、あなたにはまだ重たいかしら」


 父さんは筋肉が程よく付いており、身長もあった。


 しかし、僕には大剣を振り回す程の十分な筋力がない。


 だが、


「いや、父さんの大剣をくれないかな。父さんと一緒に戦いたいんだ」


「ふふっ、そんなところもお父さんに似てるわね。お父さんも実はひょろひょろの頃から大剣を使ってたわ。これがかっこいいって言って買ってたわ」


「それとこれ、お父さんがあなたにって残したお金よ」


 麻袋に入っていたのは100000G、三人家族が3ヶ月ほど暮らしていける額である。


「え、こんなにいいの」


「安心しなさい。お母さんも稼ぎ口は見つけたわ」


 母さんは本気で応援してくれている。


 それに応えないわけにはいかない。


「ありがとう母さん。僕、頑張るよ」


 にっこり笑った母さんはとても嬉しそうだった。



 母さんに笑顔で送り出されて数時間。


 僕はサウザンドリーフにある冒険者ギルドに来ていた。


 カラン、と、扉に付いているベルが鳴る。


「ようこそ、サウザンドリーフギルドへ」


 建物の中はやや広めで、正面にカウンターがあり、左手にはバーみたいなのがある。右手には真昼間からビールを片手に飲み明かしている冒険者らしき人達がちらほら。


「こんにちは。冒険者になりたくて来ました」


「ご新規さんですね。ありがとうございます。少々お待ちください」


 受付嬢がにこやかな笑顔でバックに入っていった。


「お待たせしました。こちらに個人情報をご記入ください。読み書きにご不便はございますか」


 僕は母さんから大体の読み書き計算は教わっている。


「大丈夫です」


 近くの空いているテーブルに腰掛ける。


「よぉにいちゃん。新規か。これまた不釣り合いな剣をお持ちで」


 隣で飲んでいる酒臭いツルパッゲ冒険者に話しかけられた。


「えぇ、装備一式父の形見でして。まぁまぁ振れるのでご心配なく」


 やや冷たい返し方をしてしまったかもしれない。


「形見か、大剣で軽防具。なにか見覚えがあるな。もしかしてゲビンさんの息子か」


 なにやら興奮したハゲ冒険者が父さんの名を口にした。


「そうか。ゲビンさんのところの子か」


 まだなにも言っていないが、勝手に語り出す。


「ゲビンさんはな、そりゃいい人だったよ。あの人はお人好しでな、俺が駆け出しの頃は一時的にパーティに組んでもらったわ。そして分け前の3分の1を俺にくれた」


 どうやら父さんは人が良かったらしい。


 元々父さんが優しかったのは知っているが、なんとそこまでとは。


 駆け出しの冒険者が初っ端からパーティに入れることすら難しい。


 最初から共に冒険者の友達か、知り合いか、それこそお人好しぐらいだ。


 そして、いくらもらったかは知らないが、3分の1とは。


 父さんはパーティを組んでいなかったと聞いていた。


 いつも一人、クエストを地道にやり、ダンジョンに潜ったりしていたらしい。


「それでゲビンさんが、一時期冒険者を休止するからって言った時にパーティは解散。俺とゲビンさんの二人だけだったが、そりゃ楽しかった」


 父さんが冒険者を休止していたのは、母さんと出会い、僕が生まれ、育児を手伝うためだったと言っていた。


「とりあえず、お世話になったんだ。俺も恩返しができていない。恩を返したいんだ。どうだ、うちのパーティに入らないか」


 ハゲ冒険者こと、マルコさんからパーティの誘いがきた。


 駆け出しで、右も左も分からない俺には嬉しい誘いだ。


「うちには俺の他に二人いる。俺は盾専門で、あそこに座ってる優男が魔法使い。ソーラだ」


 マルコさんに指差される優男はソーラと呼ばれるイケメンさんだ。


「そして、あそこでソーラと一緒のちっこいのがルーだ。あいつはヒーラーだ」


「前衛がタンクのマルコさんしかいないんですね」


 剣士がいない。そんなんで今までどうやって戦ってきたのか。


「そうなんだ、先日やめちまってな。怪我が原因だ。魔物に肩を引っかかれてな。右肩が動かなくなっちまった」


 前いた剣士は腕は立つものの、おっちょこちょいで、戦闘中に不意をつかれたらしい。


「で、丁度空いてるんだわ。前衛をさ」


「そうですか。とても嬉しい誘いですがごめんなさい」


 そう、僕にはスキルがない。


 足手まといになるし、そんな奴に命は預けられないだろう。


「そうか、俺たちのことを思ってくれたんだな」


 結局パーティの誘いはお断りし、書き終えた書類を受付嬢に渡した。

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