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神秘の世界の見解

今回は序章的な扱いなので設定解説です

 今日も今日とて平和な一日である。 雲の海が月明かりに照らされとても幻想的だ。

 この雲の下に広がる世界では、100年ぶりの豪雨に襲われているらしい。

 500年。今日でちょうどそんな年月を迎えるこの場所は、人の知識がはるかに及ばない神秘の領域。


 空を漂う魔力の根源たる大木、世界樹ユグドラシルである。


 私はその空に浮かぶ神秘のほとりで月明かりが照らす雲を楽しんでいた。

 500年も永遠に雲だけを見つめていたら飽きるのが普通なのだろうが、どうにも私はこの景色が好きらしく、一向に飽きる気配がない。

 正確には、この雲の下に広がる人間の世界に興味が尽きないわけだが。


「まーたこんな場所に来て。宴会が終わってしまうぞ?」

「たった5人で何が宴ですか…」

「仕方ないだろー。5人しかいないんだから。ここじゃそれが当たり前だろ?」


 ふらりと現れた銀髪碧眼の少女。彼女の名前はシオン、この世界樹で暮らす住人の一人である。

 見た目のおしとやかさに反して言葉遣いが荒いのが非常にもったいない。


「正確には6人ですよシオン。クロ姉さまは今日も来なかったのですか?」

「クロノスはいつもこないだろ。まぁ、お前も早退常習犯だけどな。」

「ハハハ……」


 笑いを浮かべながらも申し訳ないという旨を伝えておく。

 なにせこの世界樹ではたった6人の少女しか暮らしていない。人間関係の悪化は今後の生活に大きく関わるのだ。


「…また人間のことを考えていたのか?」


 沈黙が気まずくなったからか、はたまた聞きにくいことだったからか。

 跳ねた髪をいじりながら少し小さな声で彼女は私にそう訪ねてきた。

 無理もない、私たちにとって人間とは忌むべき存在なのだ。


 世界樹が空を漂う理由。私たち6人が世界樹から離れられない理由。その全ては。

 人間の汚い欲望が犯してしまった禁忌キンキの罪滅ぼしの代行だからである。


 この世界には、神の名を冠するものにしか許されない7つの禁忌がある。

 概念の上書き、生命の蘇生、異界の召喚、嘘の具現化、境界の修正、時空旅行、神霊への昇華。

 人間はこのうちの二つ、概念の上書きと生命の蘇生を行ってしまい、神の逆鱗に触れたのである。


 神は人間から魔法を取り上げるため、魔力の源である世界樹を空へと飛ばし、二度と禁忌が行われないよう魔法に高い知識を持つ6人のエルフに禁忌の管理を一任した。

 これが物語の転末である。要するに、完全なとばっちりだ。


 私は彼女の問いに肯定の意を伝えると同時に、ひとつ疑問を投げかけた。


「シオン。あなたはまだ人間が憎い?」

「ああ憎いね。こんな小さな島じゃ何もできない。」

 即答。迷いのない返事だった。

「私たちの魔法を使えばできないことのほうが少ないじゃない」

「魔法があればいいってもんじゃないだろ?普通に生きる権利は最初から奪われてるんだ。しかもとばっちりでな。」


 これまた迷いのない…。しかし、言っていることはごもっともだ。いくらなんでも人間は勝手が過ぎる。

 私たちは魔法の、禁忌の、世界樹の守護者として500年も働いている。

 しかし、罪を犯した人間たちはそうとも知らず繁栄を続ける。こんな理不尽な話はおとぎ話にも早々出てこないだろう。


 それでも。私は。

「やっぱり、ほかに何か大切なワケがあると思うんだ。何か、重大な何かが…」


 と。口には出さず心でつぶやいた。シオンに人間を警護していると勘違いされるとめんどくさいからである。


「最後の酒がなくなっちまうぞ!ほら、早く行こう。」

 辛気臭い雰囲気にしびれを切らしたのか、シオンが本来の目的を思い出したようで、一言そう告げて先に戻っていった。


 わたしも戻ろうと振り返ると、淡く輝く世界樹が視界全体を覆っていた。

 はたしてこの木は一体何なのか。そんな漠然とした疑問が頭をよぎった。


「今日も今日とて平和な一日だ。」


そんな本音が口からこぼれるほどには平和なんだなぁ、と自覚しながら。

次回から、ちょいちょいギャグ入りますよーー!!

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