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第一章3  『ワイが勇者やと思ったのに』

昨日は出会い系でブス(友達曰く人間じゃない、化け物)を掴まされた友達の末路が気になって小説が書けませんでした。

「私の名前はエリノア。エリノア・ラザフォードと申します」


 ふむ、エリノア・ラザフォードか。


「エリノアか……。エリノアエリノアエリノア、よしOK」


 俺はエリノアの名前を三回復唱して覚えた。

 次は俺が名乗る番か。


「俺はxxxxx、三日も俺を看てくれてありがとう」

「こちらこそ、助けていただきありがとうございました! xxxxyさん!」


 ……xxxxy?

 少し発音が違うので、訂正しておこう。


「いや、xxxxxです」

「あっ。xxxxy、xxxxy、xxxxy……すみません、上手く発音できないみたいです……」

「マジか」


 エリノアは俺の名前を三回復唱したが、結局上手く発音することができなかった。

 もしや、異世界の住民にとって俺の名前は発音しづらいのか?

 あと、ミューズの奴は普通に発音してたが、あれは神だからなのか?

 他に異世界の住民が来たら試しに名前を呼んでもらうか。


「まあいいや、今までありがとうエリノア。そろそろ俺はナンセンブの港に――」


 ――行こうと思ったのが、よく考えたら今からナンセンブの港に行き、そこから船でシュミセンに行ってもしょうがないのだった。

 今の不良相手にボコボコにされる程度の強さでは、到底魔王に勝てるはずがない。

 俺は新たな行動方針を考える必要があった。


「――いや、やめておこう」

「その方がいいと思います! xxxxyさんはまだ怪我をしていますし、助けていただいた恩もあるのでしばらくここで休んでいってください」


 そういえば、俺は意識を取り戻したとはいえまだ少し怪我をしていた。

 不思議と疲れた感じはしないのだが、怪我はしっかり治して出発した方がいいだろう。

 それに、今はやる事にあてがないので、怪我が治るまでは情報を集めた方が良さそうだ。


「そうだな、ありがたくそうさせてもらうよ」

「本当ですか!? 子供たちも喜びます!」

「え、子供たち?」


 目の前に居るエリノアの年齢は高く見積もっても二十歳を超えているようには見えないのだが、まさか、その見た目で俺がここで休むことを喜ぶような年齢の子供が何人も居るのか?

 異世界やばいなと思っていたが、実際には


「はい、ここの孤児院で世話をしている子供たちです!」


 とのことだった。

 俺は少し安心した。


(それなら、子供たちに挨拶くらいはしておかないといけないな)


「そういうことなら、子供たちに挨拶してくるよ」


 と言い、俺がベッドから起き上がろうとすると、勢いよくドアが開く音と

 

「いや、その必要はないぜ!」


 という、子供のデカくてうるさい声が聞こえてきた。

 扉の方を見ると、先ほどの声の主と思わしき10歳くらいの男の子が居た。

 その後ろには、何やらぞろぞろと沢山の子供たちが居るようだ。

 向こうから挨拶しに来てくれたようだ。


「お、わざわざ挨拶しに来てくれたのかい?」

「そうだぜ! オレはゴン!」


まず子供たちのリーダー格と思わしきゴンが自己紹介をし、続けて他の子供たちも自己紹介を始めた。


「ワイはモンジャってもんじゃ!」

「ウチはツナカや!」

「わたしはマーガレット!」

「ボクちゃんはタチツテト」

「せっしゃはサイゾー」

「ぼくワタナベ」


 なかなか個性的だぞ、これは。

 案外覚えるのは簡単かもしれない。


「なるほど、よろしくな! 俺はxxxxxだ」

「おう、よろしく頼むぜ!」

「よろしくね!」

「にしても、xxxxy? ずいぶん言いにくい名前しとるんやなー」

「しかし、xxxxyどのは『異界より来たる者』だから、言いにくいのも当然だとせっしゃは思うぞ」

「そうか! xxxxyさんは勇者だもんな!」

「ワイが勇者やと思ったのに残念やわ」

「そんなわけないでしょ」

「「「わははははははははっ」」」


 楽しそうな子供たちだが、気になる単語が出てきた。

 まず、サイゾーが言った『異界より来たる者』という単語。

 この世界の住民には勇者が異世界から来ると伝わっているということだろうか?

 そして、そもそもの話だが


「ねえ、何でみんな俺が勇者だと知ってるの?」


 ということだ。

 自分が勇者であると名乗ったことは一度もないはずである。


「ああ、それは私が説明しますね」


 その疑問に答えたのはエリノアだった。


「これです」


 そう言って俺に差し出してきたのは、阪神タイガースのキャップだった。

 ああ、そういうことか。


「この帽子についている紋章は、この世界で見たことがありません」

「xxxxyさんが着ていた服も、私たちは一度も見たことがありませんでした」

「なるほどな」


 よく考えたら阪神タイガースのキャップのマークが紋章に見えてもおかしくないし、ジャージが異世界に存在するわけもない。

 女神に渡されたものは意外と役に立っていたのだ。

 これで大方納得できたが、あと一つ聞くことがある。


「それと、『異界より来たる者』とは何なのですか?」

「勇者に関する伝説があるなら、ぜひとも教えてください」

「なるほど、xxxxyさんはまだ知らないのですね……」


 エリノアは少し緊張しているのか、一呼吸おいてから口を開いた。


「異界より来たる者、それは――」

シャドウバースっていうじゃんけんゲームを始めました。

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