第一章2 『勇者死す』
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「ぐあぁッ!?」
不良の右ストレートが俺の顔面にクリーンヒット。
俺は鼻血を噴きながら壮大に吹っ飛ばされ、後ろにあったレンガ造りの民家の壁に衝突した。
「……!」
あの美少女は手で目を伏せながら、心配そうにこちらを見ている。
「手応えアリ!」
「ダセぇ」
「ほんとダセぇよな、ヒャハハ!!」
対する不良共はゲラゲラと下品に笑っている。
(くそッ、痛え……)
やっぱり、俺は全然強くなっていないようだ。
だが、ある程度は想定していたことだ。
(仮にこいつらから逃げてシュミセンに行っても、魔王は倒せない)
(なら、今はどうにかして目の前の不良三人組を倒して、美少女を助け出すべきか)
幸い、こちらにはたかが『ひのきのぼう』とはいえ武器がある。
喧嘩に武器を持ちこむのはよくないと思うのだが、1対3ではそうも言っていられない。
距離でアドバンテージを取れば、決して勝てない相手でもないはずだ。
俺はよろよろと立ち上がり、敵対する不良の目を見据えた。
「くっ……、油断はしたが、今度は俺の番だ!」
「ヒャッハー!」
俺は右手にひのきのぼうを構え、不良に向かって突進した。
対する不良も、右の拳を握りながら、俺に向かって突進してきた。
(同じ手では、やられないぞ!)
俺は不良と激突する寸前、左手に持っていた『おなべのフタ』を不良の右拳の前に突き出した。
すると、不良の右ストレートはおなべのフタによって俺の右側に受け流され、拳を空振りした不良はそのまま少し体制を崩した。
(割とやるな、おなべのフタ)
これを攻撃のチャンスとみた俺は、ひのきのぼうを不良に対して横薙ぎに振りかざした。
「ぐへッ」
ひのきのぼうを食らった不良はそのまま横に倒れ込んだ。
その後起き上がっては来たが、確実にダメージは通ったようだ。
「ひのきのぼうも結構イケるな」
「ちっ、い、意外とやるな」
「調子こいてんじゃねーぞ!!」
仲間をやられて冷静さを欠いた不良の一人が右の拳を握り締めて突っ込んできた。
単調な攻撃だった。
ここで俺にもう一つの人格が宿り、俺は上空にひのきのぼうを投げ、空いた右手で不良の攻撃を受け止めた。
「は?」
「どうした、その程度か」
受け止めた拳を俺は波動で前に突き飛ばした。
そして、上空から落ちてきたひのきのぼう……いや、勇者の剣を俺はキャッチした。
勇者の剣を持った俺からは魔王をも恐れる凄まじい光のオーラが溢れ出ていた。
この不良共は愚かにも俺に真の力を引き出させたのだ。
「俺に歯向かった罰だ、女神ミューズから授かった究極技をお見舞いしてやる」
「な、なんだ……?」
俺が勇者の剣を天に掲げると、勇者の剣に凄まじい量の光が集まった。
光は薄暗かったスラム街の全域を照らし、やがてその光は不良たちに向けて放出された。
「Delusion geek(訳:妄想オタク)」
「「「ぬわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!!!」」」
不良をボコボコにして俺の完全勝利。
「カッコいい!! ステキ、抱いて!!」
助けた美少女が俺に抱き着いてきた。
いやー、俺、これでもオタクですよ?
――となる訳はなかった。
実際のところ、俺はもう一つの人格が宿る前あたりから普通にボコボコにされていた。
死ぬ気で抵抗したので一応不良共を追い払うことには成功したが、もう身体が動かない。
視界が徐々に狭まっていき、意識もまた徐々に遠退いていった。
「――しっかりしてください!」
最後に聞こえたのは、美少女が俺を呼びかける声だった――
「…………はっ」
「よかった、目を覚ましたのですね!」
目を覚ますと、俺は何処かのベッドに寝ていた。
目の前には、俺がさっき助けた美少女が居た。
改めて美少女の容姿をよく見ると、やはり端正な顔立ちで、金色で内巻きのショートヘアとエメラルドグリーンの瞳を持っていた。
身長は160cmくらいといったところか。
衣服は質素な青色のチュニックと黒いズボンを身につけていた。
「先日は助けていただき、ありがとうございました!」
「いえ、俺は人として当然のことをしたまでです……」
美少女から感謝されて少し嬉しい。
しかし、先日か。
「俺はどれくらい寝ていたのですか?」
「そうですね……、おおよそ三日間寝ていたことになります」
「なるほど、三日ですか」
三日か、そこそこ寝ていたことになるな。
「……お怪我をさせてしまって申し訳ありません」
「ああいや、気にしないでください」
気を使わせてしまったようだ。
そういえば、まだ肝心なことを聞いていなかった。
「ところで、あなたのお名前は?」
「あ、まだ自己紹介がまだでしたね……」
「私の名前はエリノア。エリノア・ラザフォードと申します」
ポケモンオタクはなろうで評価を付けてくれ。