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第33話・流星群ツアー

 春樹どのは、毎日のように二人の時間を作ってくれるようになっておった。


「夏休みは、何処か海外へゆっくりと旅行へ行きませんか。」

「異国は初めてだが、春樹どのも一緒であるならば心強いな。よろしく頼む。」

「ふふ。しっかりとエスコートさせて頂きますね。」


行き先は任せて下さい、とのことであった。今から夏休みが楽しみだ。


「かぐやさん、大好きです。」


軽く抱き締めるよう腕の中に閉じ込められたかと思うと、優しい笑みを浮かべながら軽い口付けを落とされ、屋敷へ送って貰った。ドキドキしながらも、ほんのり心が温かくなるような幸せを日々感じておった。


 ある日、学食でいつものように皆と食べておった時、松乃どのが流星群を見たいと言い出した。


「確か7月6日だったかな~♪みんなで一緒に見に行かない?」

「ほう。流星群とは珍しいな。」

「あっ!でも、かぐやちゃんの誕生日の前だね。二人で過ごすかな?」


ちらっと春樹どのを見ると、特に気にしてはおらぬような、にこやかな顔であった。


「二人きりの時間は夏休みに楽しみますので、みんなで行きましょうか。」

「何か邪魔しちゃってごめんね~♪」

「大丈夫ですよ。スキー場近くの別荘でしたら、かなり綺麗に見れると思います。」

「修学旅行の前に行ったところだよね!懐かしい~♪」

「ただ、日付が変わる時だけは、二人きりにして下さいね。」

「了解♪って、かぐやちゃん顔赤いよ!大丈夫?」

「ま、松乃どの…気にするな。」


話をしながら、テーブルの下で、キュッ!と手を握られておるなど、言えぬ…

接吻を交わした後も、春樹どのの趣味は健在のようだ。


残念ながら、冬馬どのと小梅どのは教育実習が入っておるとのことで、行けぬようだ。

みんなで楽しんできてね!と快く送り出してくれた。



 そして、流星群が見られる日、4人で春樹どのの家の車にて別荘へ行った。


「満月なので少し月が明るいかもしれませんが、丁度、夜の11時くらいによく見えるそうです。」

「そうか。では、夕食の後に皆で出掛けるか。」

「近くにレストランもありますので、そこへ行きましょう。」


4人でレストランへ行き、その後、スキー場へ出掛けた。

冬とは違ってこの時期は芝生の広場のようになっており、そこへ4人並んで寝そべった。


「かぐやさん、大丈夫ですか?腕枕しましょうか?」


「ひゅ~♪らぶらぶだね!」

「秋人!からかったら駄目だよ!かぐやちゃんが真っ赤になっちゃうでしょ!」


既に手遅れだ…


春樹どのが広げてくれた腕におずおずと頭を乗せた。


「重たくはないか?」

「このくらい大丈夫ですよ。」


こうして4人で星空を見上げた。


「あっ!流れた!」

「本当だ♪」

「お!こっちにもあったぞ!」


「秋人とずっといれますように、秋人とずっと…あぁ~!やっぱり三回お願いって難しいや!」

「松乃どの、それは何だ?」

「流れ星が光っている間に、三回お願いごとを言えると、叶うらしいよ♪」

「ふふ。あの速さなら無理であろうな。」

「言いながらそう思ったよ!」


「大丈夫!松乃ちゃんの願いは、僕が全部叶えるから♪」

「秋人!ありがと~♪」


たぶん今って、横を向いたら駄目な気がする…



 そして約束どおり0時前に、秋人どのと松乃どのは先に別荘へ帰っていき、草原のスキー場に二人だけが残された。


丁度0時になった時、春樹どのは体を起こして小さな箱を取り出した。私も同じく起き上がった。


「かぐやさん、20歳のお誕生日おめでとうございます。」

「ありがとう。それは何だ?」

「開けてみて下さい。」


小さな可愛らしい箱を開けると、一つの指輪が入っておった。


「これは紅玉だな。」

「そうです。普段から付けて頂けるよう、小さめでシンプルなものにしてみました。」

「しかし、何故いつも紅玉なのだ?」

「ルビーはかぐやさんの誕生石なのですよ。」

「え?初めてのクリスマスパーティーの時も紅玉であったよな。」

「はい。その時からかぐやさんの事だけを想って用意しました。」

「そ、そうなのか…」


そんなに前から、私の事を想ってくれておったのか。嬉しいような、恥ずかしいような…


「右手を出して下さい。」


そっと右手を差し出すと、薬指にはめてくれた。

指にしっくりと収まった。小さな紅玉が控え目に輝く、流線型が美しい指輪であった。


「本当は左手の薬指に用意したいのですが、それは追々ですね。」

「左手には何か意味があるのか?」

「はい。婚約指輪や結婚指輪は、左手になります。今はまだ学生なので結婚は難しいですが、ここは予約させてくださいね。」


春樹どのはそう言いながら左手を持ち上げ、薬指の付け根に口付けを落とした。


「ふふ、私は果報者だな。」

「それは私の台詞です。ずっと傍に居させてくださいね。かぐやさん、愛しています。」


どちらからともなく微笑み合い、そっとお互いの顔を寄せた。


その時であった。

キラッ!と流れ星とは違う光の筋が、山へ落ちて来たのが視界に入った。


「え?隕石?」

「いや、たぶん…」

「隕石なら、山火事になる可能性があります!すぐに逃げましょう!」


立ち上がって手を引っ張る春樹どのであったが、私にはそれが何かが分かっておった。


「…天界の使者だ。」

「え?かぐやさんの故郷の?」

「たぶんだがな。」


暫くすると、山の中から数人の殿方達が現れた。先頭は義兄上であった。



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