表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/169

第28話・お見合いとは?

 マスコミとやらが屋敷に押し寄せ、春休みはまったく外出が出来ずに過した。

クロードとの結婚は誤報だと弁解し、大学が始まる頃にやっと落ち着いてきた。


皆も何事も無く2年生に上がれたようだ。

そろそろ春樹どのの誕生日も近いし、また何処か部屋を借りて皆で祝うとするか。


学食で久しぶりに皆と会えたが、丁度良く春樹どのはまだ来てはおらぬようだ。


「あ!かぐやちゃん!大変だったね~!」

「松乃どの、元気であったか?春休みは一歩も外へ出られなかったぞ。」

「だろうね~!連日ワイドショーが凄かったもん!クロードも意外と強引な手法を取ったもんだね。」

「元々は私が108本の薔薇の意味を知らずに受け取ったのが、誤解されてしまったようだ。」


「108本?やっぱり王族はやることが違うな。」

「一体、いくらするんだろう…」


冬馬どのと小梅どのの気がかりはそこか…


「して、そろそろ春樹どのの誕生日も近い故、また皆で祝いたいのだが、いかがかな?」


あれ?皆の反応が薄いか?…と思ったら、秋人どのに恐る恐る尋ねられた。


「かぐやちゃんは、それでいいの?」

「何がだ?」

「いや、みんなで一緒がいいならモチロン協力するよ♪」

「また会場となる部屋を用意する故、よろしく頼む。」


そこへ春樹どのが定食を持ってやってきた。


「かぐやさん、久しぶりですね。春休みはなかなか会えず、寂しかったです。」

「は、春樹どの、その趣味は止めてくれと…」

「ふふ。諦めてください。赤くなるかぐやさんを見るのが楽しみなのですから。」


ほとんど諦めておるけどな…


誕生日を祝う会場は、去年と同じスイートという部屋がよかろう。

そうだ!春樹どののお父様が経営するホテルはいかがであろうか。週末、ロイヤルインフィニティホテルへ行くことにした。



 週末、爺やにホテルまで送ってもらい、フロントでスイートルームの予約の手続きをしておった時、珍しくラウンジで着物を着た姫君を見かけた。


「ほう、珍しいな。着物はあまり見かけぬが。」


私の呟きに、フロントのスタッフが反応した。


「左様でございますね。今ではお見合いの時くらいでしょうか。」

「お見合い?」

「恐らくですが。」

「お見合いとはどんなものなのだ?」

「結婚を前提にして、その相手とお会いするのが、お見合いでございます。」

「そうか。」


天界で言えば、求婚の後の顔合わせみたいなものであろうか。手続きが終わる間、何気なく相手の殿方を待っておるらしいその姫君を見ておった。



え?!



目を疑った!現れた殿方は春樹どのであった!遠目だが間違える筈がない!


「竹野塚様?お支払いですが…」


はっ!

スタッフに声を掛けられ、我に返った。


「す、すまぬが、急用を思い出した。キャンセルをお願い出来るか?」

「かしこまりました。またのご利用をお待ちしています。」


急いでその場を走り去り、爺やのリムジンに乗り込んだ。


「爺や、すぐに出してくれ!」

「かしこまりました。」


ホテルから出来るだけ遠くに行きたかった。

まさか、春樹どのが他の姫君と婚姻とは…


----------


 はぁ…今日は気が重い。父から形だけでいいからと、お見合いを頼まれたからだ。


『悪いな、春樹。一度だけ会えば、相手も引っ込みが付く筈なんだ。』

「分かりました。その後はちゃんとお断りして下さいね。」

『かぐやさんだったかな。その後もうまく行っているのか?』

「もちろんです。今はお互い学生ですが、そのうち父さんにも正式に紹介しますね。」

『分かった。母さんも楽しみにしていたよ。』


国際電話でわざわざ私にお願いをしてくる程だ。父の顔を立てる為に仕方ない。重い腰を上げてホテルへ向かった。

ラウンジに着き、着物を着ている相手へ挨拶をした。


なるほど。新しい提携先にと父の会社を考えている相手のお嬢様だと言っていたな。

このお嬢様も可愛そうなものだ。恐らく少しでも有利な条件を得ようと、娘を差しだしているのだろう。

同情するように、優しくやんわりと断りを入れた。


私の父は、このような政略結婚は反対の立場を取っている。自分達が大恋愛の末に結ばれたからだろう。

だから私がかぐやさんの事を言った時も一言も反対しなかった。その点はとても感謝している。


早くかぐやさんに会いたいな…

見合いをしながら、そんな事を考えていた。


しかし、週明けから、かぐやさんの様子がおかしくなった。

私を遠ざけるようになったのだ。みんなも様子がおかしいことに気付いて聞いて来るが、何の覚えも無い。


「春樹、本当に何もしてないのか?」

「まったく身に覚えがないのだが…」

「今度、小梅と松乃に探りを入れるよう頼んでおくよ。」

「よろしくな。」


今年はせっかく20歳という記念の誕生日だ。かぐやさんと過ごしたいのだけど、叶わないのだろうか…


----------



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ