第21話・温泉へご案内
年明けから、学食にはいつものメンバーが揃った。ひとつだけ変わったことと言えば、クロードどのが皆と同じテーブルで本を見せてくれるようになったことだ。
皆にもユーリシア王国を知って貰ってはいかがかと言ったところ、席に加わるようになった。
そして今日は写真集を持って来ておった。
「コレガ、ユーリシア王国ノ大自然デスネ。」
「ほう、雄大で美しい国なのだな。」
「ハイ、イツカ、カグヤサンヲ招待シタイデスネ。」
「異国は行った事が無い故、一度行ってみたいものだ。」
「え~!かぐやちゃん、海外に行ったこと無いの?」
松乃どのがびっくりしておる。
「今までに一度も無いな。旅行といえば、いつも温泉であった。」
「オンセン?ソレ何デスカ?」
「簡単に言えば、みんなで入るお風呂ですね。日本は火山列島なので、地下からお湯が湧き出る箇所が多いんだよ。」
春樹どのが代わりに解説してくれた。
「皆デ裸デスカ?恥カシクナイノデスカ?」
「外国人は驚くようだが、気に入る人も多いし、一度行ってみたらいいよ。」
「デハ、カグヤサン、一緒ニ行キマショウ!」
は?私か?
「いやいや、男女は温泉も部屋も別であるぞ!」
「ソレデモ良イデス!一緒ニ行キマショウ!」
困って春樹どのを見たら、久しぶりにみんなで旅行へ行こうと話がまとまった。
助かった…
「旅行なんて、久しぶりだね♪かぐやちゃんと小梅ちゃん、女子トークで楽しもうね♪」
「ふふ。楽しみにしておるぞ。」
後日、春樹どのから連絡が来た。温泉宿は小さなところを貸し切ったそうだ。王族であるクロードどのの警備を考えてのことらしい。敷地の周りにSPとやらを配備するそうだ。王族も色々と大変なのだな…
旅行当日、春樹どのの家の車に皆で乗り込んだ。
「オウ!チョット狭イデスネ。」
「流石に7人も乗れば狭く感じてしまうな。」
「でも、こういうのも久しぶりで楽しいね♪」
「みんなで車に乗るのは、遊園地以来だな。」
皆も今回の旅行を楽しみにしていたようだ。いつもより口数も多く、楽しい旅となりそうな予感がした。
温泉宿に着いて部屋に荷物を置き、早速大浴場へ行った。
----------
クロードは楽しそうにはしゃいでいるな。クリスマスの一件以来、気持ちに余裕を持って接することが出来ていた。
「オンセン!オンセン!」
「クロード、楽しそうだな。」
「ハイ!皆デ背中ヲ洗ウト、ネットニ書イテアリマシタ!」
「はは。それは温泉というよりは銭湯だな。」
冬馬と秋人は先に入って行き、遅れてクロードと私が入った。
「ここで先に身体を洗うんだよ。」
「ホウ。汚レヲ落トシテカラ、入ルノデスネ!」
「温泉の泉質によっては、洗わないで入ることを推奨している箇所もあるから、脱衣所の注意書きを見ておいた方がいいよ。」
「ナルホド!」
身体を洗い終わり、湯船に浸かろうとした時だ。
「うわっ!」
先に入っていた秋人が驚いたような声を上げた。
「どうした?秋人、何かあったのか?」
「い、いや…クロード見てたら、自信無くしそう。」
「俺もだ…」
冬馬まで何を言っているんだ?
「二人トモ、ドウシタ?」
「だから、自信無くすから、堂々と寄ってくるな!」
ふふ。そういうことか。
「二人とも、彼女が満足しているんなら、それでいいだろう。」
「ま、まぁな♪」
「しかし、春樹もクロードに張り合えるな…」
「冬馬!これ以上言うな!惨めになるだけだ!」
褒めて貰ったと思っておこう。
----------
「ふう!気持ちいいね~♪」
「ほんと!温泉なんて久しぶり!」
「そうだな。」
皆でゆっくりと湯に浸かった。美肌にも良いらしく、肌がすべすべとしてくるような泉質であった。
「ところで小梅ちゃん!最近色気が出てきたよね~♪」
「え?」
「もしかして冬馬とうまく行った?」
「う、うん…」
「良かったね~♪ねぇ、かぐやちゃんも、小梅ちゃんが色気出て来たと思わない?」
ゴホ、ゴホッ!
むせてしまった。私に聞くでない…
「そんなことないよ!松乃ちゃんって細いのに胸は大きいし、羨ましいな。」
確かに松乃どのは大きいな。
「え~!肩凝っちゃうし、服も大きめを買わないといけないから、結構不便だよ~!それよりも、かぐやちゃんって美乳だよね!形がいいと言うかさ♪」
「ホント、ホント!」
ゲホッ!ゲホッ!
更にむせた。
「だから、私に聞くな!」
「肌も綺麗だし!ちょっと触らせて♪」
「ホント、すべすべ!」
「いや、そんなに触るでない!」
二人が満足するまで、腕を触られた。意識しておらなかったが、春樹どのよりも心臓に悪い会話であるな…
まだ盛り上がる二人を置いて、早々に脱衣所へ逃げ込んだ。
----------
隣の女湯の声がよく響いて聞こえてきた。ふふ、慌てるかぐやさんが目に浮かぶようだな。
ここでクロードが不思議そうに秋人と冬馬を見始めた。
「ン?皆サン、ドウシマシタ?顔ガ赤イデスネ!」
「い、いや、気にしなくていいよ。」
「オウ!ノボセタラ大変ト聞キマシタ!早ク上ガッタ方ガ良イノデハ?」
「今は無理だ…」
ぷっ!
思わず笑ってしまった。
秋人と冬馬は、それぞれ恋人が隣で入っているからな。
湯船から上がれない二人を尻目に、クロードと先に上がらせてもらった。
----------