第20話・お守りに込めた想い
パーティーも終わり、クロードどのに屋敷まで送ってもらった。
「カグヤサン、今度ニューイヤーパーティーガアリマス。新年ノカウントダウンシマスネ。」
「そうか。」
「一緒ニ行キマショウ。」
「遠慮しておく。毎年春樹どのと初詣に行っておるのだ。」
「ハツモウデ?」
「神社に行き、神様に新年の挨拶をする行事だ。」
「オウ!私モ行キタイデス!」
「私も春樹どのに連れて行ってもらっておる故、春樹どのに聞いてくれるか?」
「ワカリマシタ!ニューイヤーカラ、カグヤサント会エルナンテ、幸セデス!」
「ふふ。相変わらずクロードどのは大げさであるな。」
年が明け、二人が揃って屋敷まで迎えに来た。
「かぐやさん、明けましておめでとうございます。」
「アケマシテ、オメデトウゴザイマス。カグヤサン。」
「春樹どの、クロードどの、明けましておめでとう。クロードどのも着物なのだな。」
「ハイ。ハルニ借リマシタ!イカガデスカ?」
「よく似合っておるぞ。」
「ヤッタ!カグヤサンニ褒メラレマシタ!」
思わず春樹どのと顔を見合わせて笑ってしまった。クロードどのが日本に滞在するのも3月までらしい。それまでは日本を楽しんで貰いたいと、春樹どのと電話で話をしたのだ。
「では、いつもの神社に行きましょうか。」
春樹どのの家の車へ3人で乗り込んだ。
神社に着いて車を降り、まずクロードどのの目を引いたのは、屋台のようだ。
「ワオ!賑ヤカデスネ!」
「クロード、まずは神様へお参りをしよう。屋台はその後だ。」
「ふふ。」
「何か可笑しいことがありましたか?」
「初めて一緒に来た時も、同じことを言われた気がしてな。」
「かもしれませんね。」
春樹どのと顔を見合わせながら、はしゃぐクロードどのの後をついていった。
お賽銭を投げいれ、手を合わせた。
パン、パン!
<天界の皆が幸せでありますように。>
<クロードどのの夢が叶いますように。>
<春樹どのが幸せになりますように…>
お参りの後は、おみくじを引いた。
「おお!大吉であるぞ!」
「かぐやさんの恋愛運、絶好調ですね。」
「春樹どのはどうだ?」
「私も想い人を大切にすれば叶うと書いてあります。」
「クロードどのはどうであったか?」
「夢ハ信ジテ努力スレバ叶ウソウデス。」
「それは良かったではないか。留学した甲斐があるというものだ。」
おみくじの横にお守りが売っておったので、二人に幸運の鈴というものを買った。
「二人にプレゼントだ。」
「ナンデスカ?」
「開けてみるがよい。」
二人が袋から鈴を取り出した。
「わあ!幸運の鈴ですね!」
「神様にも、春樹どのの幸せと、クロードどのの夢が叶うよう祈っておいたが、お守りの鈴も良いかと思ってな。」
「ワオ!カグヤサン、優シイデス!感激デス!」
うわっ!また抱きついてくる!
さっと鞄を盾に身構えると、春樹どのの背中が視界を遮った。
「クロード、また脳震盪を起こす羽目になりますよ。」
「オウ、ソウデシタ。カグヤサン、強イデス…」
その後三人で屋台のたこ焼きや焼き餅を食べ、クロードどのがお手洗いへ行っておる間、春樹どのと二人でベンチに座って待つ事となった。
「ところで、かぐやさんは自分の事をお祈りしていないのですか?」
「そういえば、忘れておったな。」
「ふふ。自分の事よりも人の幸せを願うなんて、お優しいですね。」
「い、いや、うっかりしておっただけだ。」
面と向かって褒められると、凄く照れてしまうな…
「実は、私もかぐやさんにお守りを買っていたのです。」
そう言いながら、春樹どのが袋を渡してくれた。
「ありがとう。開けても良いか?」
「どうぞ。」
中には、普通のお守りよりも小さめな赤いお守りが入っておった。
「これは『幸』と書いてあるのだな。」
「はい。かぐやさんにも沢山の幸せが訪れますように。」
「ふふ。嬉しいものだな。」
「そういえば、春樹どのは、何を願っておるのだ?」
「秘密です。人に言ったら願いが叶わなくなるそうですよ。」
「え?そうなのか?さっき二人に言ってしまったぞ!」
「ふふ、大丈夫です。かぐやさんが私の幸せを願ってくれていると分かっただけで、私は幸せになりましたから。」
「そ、そうか…」
春樹どのの発言は、新年早々、心臓に悪いな…
冷え込んでおる日だというのに顔だけ熱を帯びてしまい、誤魔化すように手で扇いだ。
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新年早々、かぐやさんの頬が赤く染まる顔を見れて幸せだな。
私がかぐやさんと出会ってから、願っていることは毎年同じだ。
『毎年、かぐやさんと一緒にここへ来れますように。』
そう言ったら、どんな反応をするのか興味があったけど、やはり想いが通じるまで秘密にしておこうと思った。
かぐやさんに渡したお守りは、二人の愛が育ち、幸せが訪れますようにと願う、ペアのお守りの片方だ。大事にしてくれるといいな。
来年も、再来年も、50年後も一緒に来れますように…
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帰りは、クロードどのが着物は疲れると言っておったので、そのまま帰宅した。屋敷に帰ってからも、春樹どのに貰ったお守りを、幸せな気分に浸りながら眺めておった。