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第18話・初めての喧嘩

 銀杏や紅葉が色付き、秋の気配を楽しむ季節になった頃、松乃どのから華道の展覧会に誘われた。


「かぐやちゃんもどうぞ♪って招待券だよ!もう一枚あるから、誰かを誘って来てね♪」

「もう一枚か。小梅どのを誘ってみるか。」

「小梅ちゃんにも渡してあるから、きっと冬馬くんを誘うんじゃぁないかな。」

「そうか。では春…」


言いかけたところで、後ろから声を掛けられた。


「カグヤサン!」

「クロードどの。今日も一人か?」

「ハイ。ソレヨリ、ソノチケットハ何デスカ?」

「これは、華道の展覧会だ。」

「オウ!私モ行キタイデス!」

「いやしかし…」


「モシカシテ、ハルデスカ?カグヤサンノ恋人デスカ?」

「ち、違うぞ!」

「ソレトモ、出掛ケル時ハ、ハルノ許可ガ必要デスカ?」

「そんな事は無い!」

「デシタラ問題アリマセンネ!私ト一緒ニ行キマショウ!デハ楽シミニシテイマス!」


嵐のようにクロードどのは去っていった。何だか断る暇も与えられなかった気がするな…

松乃どのが気遣いながら私に寄ってきた。


「かぐやちゃん本当にいいの?」

「断る暇も無かった故、仕方あるまい。」

「まぁね…」


二人でため息をついた。



 華道展当日、会場であるロイヤルインフィニティホテルの前でクロードどのと待ち合わせをした。


「ハイ、カグヤサン。今日モ綺麗デスネ。」

「そのような世辞はいらぬ。では参ろう。」

「オウ!厳シイデスネ!」


展覧会の受付でチケットを見せ、会場へ入ってすぐに飾ってある花に目を奪われた。


「ほう!これはまた凄いな!ただ飾るだけでなく、壁を使ったり、天井から吊り下げられたりと会場全体が生け花の空間のようだ!」

「さっすがかぐやちゃん♪目の付けどころが違うね!」


振り向くと、秋人どのと松乃どの、松乃どののご両親が揃っておった。


「これは、松乃どののご両親、ご無沙汰しております。この花はご両親が飾られたのですか?」

「飾りは私達流派の者だけど、空間全体を使うアイディアは秋人くんだよ。」


「ほう!秋人どのは多才であるな。」

「ちょっと大学で勉強した空間デザインっていうのに興味があってさ♪提案してみたら、面白い!って松乃ちゃんのご両親が即決してくれたんだ♪」


聞くところによると、全国にあるインフィニティホテル系列のエントランスやロビーなども、松乃どのの流派が飾っておるらしい。


「では早速見せて頂こうか。」

「ちょっと待って!かぐやちゃんもう少し話しようよ♪」

「しかし、クロードどのが先に行ってしまったので、ここで失礼する。」

「あ、待って!」


秋人どのが珍しく引き止めておったが、クロードを追いかけて展示会の中へ入っていった。

少し奥へ入ると、クロードどのが立ち止まっておった。


「どうかしたか?」


視線の先を見ると、春樹どのが立っておった。


「かぐやさん…」

「春樹どの、来ておったのか。」

「かぐやさんこそ、クロードとデートですか。少し前までデートはトラウマがあると言っていましたのに。」


むむ!


「成り行きだ!」

「成り行きでデートですか。」

「そんな言い方は無いだろ!」

「ではどう言えばいいのですか。」


「ハイ!私トデートスルノニ、ハルノ許可ガ必要デスカ?」


私達の言い争いをクロードが割って入った。


「別に、私の許可など必要ないでしょう。」

「ソレヲ聞イテ安心シマシタ。カグヤサン、来月、大使館主催ノクリスマスパーティーガアリマス。一緒ニ行キマセンカ?」


チラッと春樹どのを見たが、聞こえておる筈なのに明後日の方を向いておった。

もう良い!


「行くぞ!」

「え?」


春樹どのが反応したが、それには答えなかった。


「私が出掛けるのに春樹どのの許可などいらぬ。パーティーは参加させて貰おう。」

「ソレハ良カッタデス!ハルモ後デ招待状ヲ送リマスネ!」


「あ、あぁ…」

「今カラ、トテモ楽シミデス!」


----------


「秋人、何だかややこしくなっちゃったね。」

「でも大使館のパーティーは、僕達の手の届く範疇じゃぁないしね。」

「それはそうだけどさぁ。まさか春樹がお父さんの招待券で同じ時間に来るなんてねぇ…」

「でもさ、ヤキモチで怒る春樹なんて珍しいじゃん♪二人にはいい刺激かもよ♪」


----------


はぁ…売り言葉に買い言葉で、初めて春樹どのと言い争いになってしまった。

しかも、クロードどののパートナーとしてパーティーへ出るだなんて…


はしゃぐクロードどのの隣で、益々気が重くなっていった。


翌日から、学食に春樹どのは顔を見せなくなった。代わりにクロードどのが毎日異国の本を見せてくれた。


「カグヤサン、今日ハ珍しい王族ノ本ヲ持ッテ来マシタ!」

「クロードどの、ありがとう。」

「カグヤサンノ為ナラ何デモコイデス!」


皆からは深いため息が聞こえてきたが、意地になっておった。

そして、春樹どのと関わる事も無く、時間は過ぎた。



 クリスマスも近くなった頃、クロードどのからドレスが送られてきた。

ふりふりのレースがたっぷり使ってある薄いピンクのドレスだが、私に似合うであろうか…

爺やと婆やに見て貰ったが、やはりイメージが違うとのことであった。


そうだ!卒業パーティーの時、春樹どのに頂いたドレスはいかがであろうか。深紅なので、クリスマスにも合う筈だ。何となく一緒に居る気分になれるかもしれぬな。


ん?何故一緒に居る気分になる必要があるのだ?

いやいや、春樹どのはいつも初めての場所はエスコートしてくれておる故、その癖が抜けぬだけであろう。


一人納得しながら、洋服用に買い増したクローゼットを開いた。



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