第13話・恋人達の夜
「キャー!」
ん?
「今の悲鳴は?」
「小梅さんの声だ!秋人、行くぞ!」
「かぐやさんは残っててください!」
「私も行くぞ!」
「松乃ちゃんは、家に入って、鍵を全部締めて!」
「分かった!気を付けて!」
春樹どの、秋人どの、私の三人で勢いよく走り出した。確か岩を挟んだ隣のビーチから悲鳴が聞こえた筈だ!
道路の脇を走っておると、数人の輩に囲まれた冬馬どのが、小梅どのを背中に庇いながら後ずさりしておるのが見えた。多勢で襲うとは卑怯な奴らだ!
「全部で8人か!秋人、3人はいけるか?」
「任せておいて~♪」
秋人どのの手には、いつの間にか流木が握られておった。
「かぐやさんは、すぐに小梅さんを保護してください!」
「分かった!」
砂浜に下りるとすぐに、ガラの悪そうな奴らの背後から飛び蹴りを見舞ってやった!
「おりゃっ!」
その勢いのまま、小梅どのの近くまで走り、手を掴んだ。
「冬馬どの、小梅どのは任せろ!」
「恩に着るぜ!かぐや!」
「何だ?こいつら!」
春樹どのは、襲いかかる奴らをすぐにねじ伏せておった。
秋人どのは、流木を剣のように操り、冬馬どのは、蹴りを入れ見事になぎ倒していった。
おお!皆凄いな!
密かに感動しておったら、女を狙え!との声が聞こえた。
「貴様ら、正念が腐っておるわ!」
小梅どのに手を伸ばそうとした奴をかわし、鉄拳を振り下ろした。
バキッ!
あっという間に、ビーチに屍が転がった。
「なんだ、あっけないな。」
「ふふ。かぐやさんに掛るとそんなものですね。」
「冬馬、小梅ちゃん、大丈夫?」
秋人どのの声で小梅どのを見ると、小さく震えておるようだ。
すぐに傍へ行こうとしたが、冬馬どのが先に駆け寄り、小梅どのの肩を抱き寄せておった。
「ごめんな、怖かっただろ。」
「大丈夫…」
相当怖かったのであろう。声が震えておるな。
「じゃぁ帰ろうか♪」
皆でその場を後にした。
「しかし、秋人どのまで強かったのだな。」
「まぁね♪モデル始める前の中学まで剣道やってたし!かぐやちゃんが居ない一年生の時は、当時の三年生からよく絡まれてたんだ!」
「そうなのか?」
「そそ♪それで返り討ちにしてたら、似たようなのが僕以外にも二人いてね!それが冬馬と春樹って訳♪」
その頃からの絆であったか。
この三人衆がキング3と呼ばれる由縁がやっと理解出来た気がした。
別荘に戻って玄関を開けるとすぐに、松乃どのが秋人どのに飛びついた。
「秋人~!」
「松乃ちゃん、一人にさせちゃってごめんね♪」
「心配したよぉ~!」
グスッ…
松乃どのは相当心配したのであろうな。涙ぐんでおるようだ。
小梅どのの震える肩を抱きながら、冬馬どのが皆を見た。
「悪いけど、二人で一部屋使わせてもらっていいか?」
「ああ、安心させてやれよ。」
春樹どのと軽く微笑みを交わし、冬馬どのは小梅どのを気遣いながら、二階の寝室へ上がっていった。
「あのさ、僕達も一部屋使っていいかな。」
「分かった。」
涙ぐむ松乃どのを促して、秋人どのも二階へ上がっていった。
----------
部屋に入って、冬馬君は私をベッドに座らせ、安心するよう抱き締めながら頭を撫でてくれた。
「もう、大丈夫だから。」
「…うん。」
暫くすると震えも止まって、ちょっと頭が冷静になった。
え?もしかしてベッドの上で抱き締められてる?急に恥ずかしさが勝ってきた!
「と、冬馬くん…」
念のため、松乃ちゃんに選んで貰った下着を付けてはいるものの、ちょっとまだ覚悟が…
あまりの急な展開に一人で動揺していると、冬馬くんの優しい声が聞こえてきた。
「今日は、このまま抱き締めて寝てもいいか?」
「う、うん…」
「大丈夫。怖い目にあったばかりで、手を出すようなことはしないから。俺達は俺達のペースでいこう。」
「…ありがとう。冬馬くん。」
冬馬くんは何度も頭を撫でてくれた。大きくて温かい手に促されて、そのまま安心して眠りについた。
----------
涙ぐむ松乃ちゃんを連れて、寝室に入った。泣かしちゃったのに、泣くくらい心配してくれた事が嬉しいって言ったら怒るだろうな~。
「ごめんね~!心配しちゃった?」
「凄く心配したよ!部屋の中に一人で居たら、秋人が帰って来ないんじゃぁないかって、悪いことばっかり考えちゃうしっ!」
松乃ちゃんの頬に流れる涙をそっと拭いた。うわっ!うるうるした目が可愛い過ぎっ♪
「大丈夫♪まだ松乃ちゃんと一緒にやりたいこといっぱいあるし、それが全部終わるまでは頼まれても離れてあげないからね♪」
「やりたいことって?」
「ん~♪例えば、僕の為に泣いてくれる松乃ちゃんに、今すぐキスしたいとか?子供を作りたいとか?更に孫もできたらいいなとか?」
「もう!バカ秋人!」
チュッ!って軽くキスをして、ベッドになだれ込んだ。
「あ、秋人!駄目だってば!みんながいるじゃん!」
「可能な限り、声を我慢してね♪」
「…もう♪」
そのまま濃厚なキスを落として、甘い夜を過ごした♪
----------