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第6話・かぐやちゃんの屋敷

 水族館の次の日、足首の痛みはかなり引いたが、婆やに念の為に学校を休むよう進言された。

海の魚の本などを読みたかったが、治りが遅くてはクラブで稽古も出来ぬと言われ、仕方なく受け入れた。


退屈だ…


----------


 先生が今日はかぐやちゃんが休みだと言っていた。


「今日はかぐやちゃん休みかぁ。」

「何かつまんないね…」


やっぱりみんなも物足りないみたいだ。かぐやちゃんの斜め上を行く発想と、謎の生態は面白いからな~。


「そうだ!試験前で部活もないし、みんなでお見舞いに行ってみない?」

「いいな。」

「駅前のケーキ屋に寄って行くか。」


早速先生に住所を聞いて、お見舞いへ行くことになった。初めて行くかぐやちゃんの家を楽しみに、はしゃぎながら歩いていたけど、着いた途端、屋敷を前にみんな黙り込んだ。


「やっぱりというか、何となく分かってはいたけど…」

「家ではなく、屋敷だな。日本庭園までありそうだ。」

「春樹の家も凄いが…」

「こっちは重厚感溢れる寝殿造りだな。」

「だって、お弁当も漆塗りの重箱だし…」


キョロキョロと探してみたが、インターホンらしき物が無い。


どうしようかと迷っているうちに大きな木の門が、ギギっと音を立てて開き、中から着物を着たふくよかで糸目のお婆さんが出てきた。


「かぐや様のご学友じゃな。学校から連絡は受けておる。入りなされ。」


丁寧に手入れされた松が門の上を横たわり、玄関まで続く石畳、未だに使っているだろう井戸に桶。

何処かタイムスリップしたかのような感覚に陥るような屋敷だ。


「このお屋敷の防犯対策はどうされているのですか?」


春樹がお婆さんに話し掛けた。


「何故そのような事を聞きなさる?」

「私の家ではセキュリティ会社と契約していますが、これだけ大きなお屋敷なのに防犯カメラもインターホンも見当たらないようなので。」

「そんなもの結界を張っておけば問題無い。」


お婆さんは当然のように答えた。


結界?

きっとみんなの頭の上に?クエスチョンマークが浮かんだだろう。


「…はは。さ、さすがはかぐやの家だ。」

「そ、そうね…さすがね。」


深く考えるのはよそう…


屋敷の中へ案内されると、見事な枯山水の日本庭園前の縁側で、かぐやちゃんが座っていた。憂いを帯びた横顔は、まるで絵画のような美しさを放っていた。


----------


 縁側に座って退屈な時間を過ごしていると、クラスの皆の姿が見えた。


「皆、来てくれたのか!」


嬉しくなって思わずにっこり笑ったが、皆の顔が若干引きつっておる。


「ん?何かあったのか?」

「な、何にも無いよ!」

「いや、かぐやちゃんはやっぱり着物が似合うなぁと思ってね♪」

「そうそう、その黒髪に映えてるよ!」


何だか皆の様子がよそよそしいのは、気のせいであろうか…

その場の空気を取り繕うように、春樹どのが手に持つ箱を上げて見せた。


「それよりケーキ買ってきたので、一緒にいかがですか?」

「ありがとう。では、婆やにお茶の用意を頼むとしよう。」


立ち上がろうとすると、冬馬どのが手を出してきた。


「ほら、掴まれよ。」

「すまぬ。借りるぞ。」


冬馬どのも意外と気が利くではないか。

そして、客間にてケーキという洋菓子と紅茶を頂いた。


「あの…かぐやちゃんも結界って…」


松乃どのが、恐る恐る私に尋ねてきた。


「ああ、結界か?婆やのようには出来ぬが、半径3メートルくらいなら人の気配を察知することができるぞ。」

「あ、人の気配のことね!」

「なんだ。ちょっと安心した♪」


何故か皆がほっとした顔をしておる。

天界の者は人により使える能力が違う。大人になってから備わるものなので、私には何が使えるのかはまだ分からぬが、下界のものには能力が無いのかもしれぬな。


皆が帰る時、春樹どのがノートと本を差し出してきた。


「これ、今日の授業をまとめたものです。良かったら使ってください。こっちの本は海の生き物の図鑑です。昨日見たいと言われていましたので、持ってきました。」


おお、春樹どのも気が利くな。意外とこの三人衆は気が利く…


いや!騙されるな!不細工なくせに皆からチヤホヤされている三人衆だ!

必ず裏がある筈だ!



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