表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/169

第48話・卒業と恋の始まり

 竹水門学園高校では、外部の大学入試の日程を考え、1月中旬に卒業式が行なわれる。今日はその卒業式だ。

厳かな音楽が流れ、一人ひとりが壇上へ上がり、卒業証書を受け取った。


下界に落とされて一年半を越えた。

最初は不細工三人衆と呼んでおった者達も、今では良き友となったな。

小梅どの、松乃どのに会えて、本当に良かった…

天界では味わえない充実した日々が過ごせたと思う。


感慨深いものを感じながら、小梅どのと松乃どのの三人で学校の廊下を歩いておると、小梅どのが一人の見掛けぬ殿方に呼び止められた。


「有栖川さん、ちょっと宜しいですか。話があるのですが…」

「はい。何ですか?」

「ここでは何なので…」


小梅どのが殿方と連れ立って行った後、出掛ける約束をしておった三人衆がやってきた。


「あれ?小梅ちゃんは?」

「話があるって、呼ばれたの。ほらそこ。」


松乃どのが指さす先には、少し離れた場所へ行き、俯きながら話す殿方と小梅どのの姿があった。


「あちゃ~!これは告白だね♪冬馬どうする?」

「ダンスパーティーのお誘いじゃぁないかな。冬馬どう思う?」

「…」


秋人どのと春樹どのはわざと煽っておるな。

その時、殿方が小梅どのの肩に手を置き、小梅どのが一歩引いた。


「小梅どの、嫌がっておらぬか?」

「ちょっと行ってくるよ!」


冬馬どのが素早い反応を見せて、二人の元へ行った。


----------


 秋人と春樹の挑発に乗るつもりは無かったが、勝手に身体が動いてしまった。


「おい!嫌がってるだろ!」

「ダンスパーティーのお誘いをしているだけです。空手部の部長さんには関係ないですよね。」

「関係あるよ!俺と行くんだしな!」

「え?約束があるのなら、早く言ってよ。」


声を掛けていた男はすぐに去っていった。


「冬馬くん、今のって…」

「まだパートナー決まってないのか?」

「う、うん…」

「なら、俺と行くか?」

「ありがとう。よろしくね。」


あれ?俺、ホッとしてる?どういうことだ?俺ってかぐやが好きなんだよな?

自分自身が理解出来ないなんて初めての経験だ。かなり戸惑った。


----------


 卒業式の後は、皆で最後の制服を写真に収め、その後は浦和グループのレストランの個室で食事を頂いた。


「そういえば、さっき、冬馬焦ってただろ?」


ぶっ!

冬馬どのがいきなり噴き出した。


「な、何を言い出すんだ!秋人!」

「だってな~。凄い勢いで小梅ちゃんのところへ走っていったし♪」

「嫌がっているように見えたから、助けただけだ。」

「ふ~ん♪」

「何だ!その疑いの目は!」


「だったら小梅ちゃんに彼氏出来ても構わないよね!秋人の知り合いを紹介してあげてよ♪イケメンのモデルでもさ!」

「松乃ちゃん、ナイスアイディア♪」


「ちょ、ちょっと待て!それとこれは話が違うだろ!」


おお、冬馬どのがかなり焦っておるようだ。


「冬馬、素直になれよ。」

「春樹まで…」


小梅どのは倒れるのではないかと思うくらい、真っ赤になっておる。

そんな小梅どのに冬馬どのが向き直った。


「ま、まぁ、パーティードレスはレンタルするんだろ?」

「うん。」

「俺も一緒に行くから、空く日を教えてくれ。」

「冬馬くん一緒に来てくれるの?」

「ある程度タキシードも合わせた方が、見栄えもいいだろうからな。」


「って、お前らニヤニヤするな!」

「二人とも真っ赤になっちゃって可愛い~♪」


ふふ。小梅どのも幸せになると良いな。



 帰りは、最後だから歩いて帰りましょうと言われ、春樹どのと徒歩で帰宅することとなった。


「かぐやさん、パーティーまでの間はいかがされるご予定ですか?」


推薦で大学が決まっておる皆は、受験というものが無いので、次に用事があるのは、3月の終わり頃にある卒業ダンスパーティーのみである。それまで二カ月程、暇な期間があるのだ。


「師範の道場に通うことになってな。昇段試験がある故、しばらくは稽古が続くだろう。」

「そうですか。私は車の免許を取りに行くつもりです。免許が取れたら一緒にドライブへ行きましょうね。」


「春樹どのは自分で運転をするのか?」

「運転できた方が何かと便利ですからね。」

「何だか大人だな。」

「ふふ。かぐやさんの発想は、いつも面白いですね。」


屋敷の前まで送ってもらったが、春樹どのはなかなか帰ろうとはしなかった。


「明日からかぐやさんとお会いできないなんて寂しいですね…」

「そうだな。私も皆と会えぬのは寂しいぞ。」

「その皆の中に私は含まれていますか?」

「当然だ。」


春樹どのは何故か嬉しそうに微笑んでおった。


「それを聞けただけで、嬉しいものですね。」

「そうか?」

「ではまた、連絡しますね。」


そう言って、手を振りながら帰っていった。

やはり、春樹ども皆と会えなくなるのが寂しいのであろう。


何となく…何となくだが、胸がキュッとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ