第47話・妊娠騒動
「かぐや様、明けましておめでとうございます本年もよろしくお願い致します。」
「爺やと婆やもおめでとう。今年もよろしく頼むぞ。」
今年も天界から爺やが取り寄せたお節料理を頂いた。一緒にやよい姉様からの手紙も受け取った。
<明けましておめでとう。
爺やや婆やからも聞いておりますが、楽しい学校生活を送っておるようで、何寄りです。
今日は嬉しい知らせがあります。
先月、弥蔵どのとの間に、赤子が産まれました。
弥蔵どのによく似た女の子で、名前は『雪美』。
美しい雪が舞い踊る日に誕生しました。
下界もまだまだ寒い日が続くようです。
かぐやも風邪を召されぬよう、身体には気を付けて下さいね。
やよいより>
「爺や!婆や!」
「かぐやさま、いかがされましたか?」
「やよい姉様が姫君をお産みになったそうだ!」
「それはめでたい!すぐにお祝いの準備を!」
「早速、赤子の服を買いたいのだが、下界では何処で買えば良いのだ?」
「それは下界の者に聞いた方が宜しいかもしれません。」
「それもそうだな。」
丁度良いタイミングで、春樹どのが初詣のお迎えに来た。
「かぐやさん、明けましておめでとうございます。」
「春樹どの!聞いてくれ!やよい姉様が赤子をお産みになったのだ!」
「それはおめでたいですね。」
「それで、赤子の服を買いに行きたいのだが、案内してはくれぬか?」
「分かりました。親戚のお姉さんに、去年子供が産まれていますので、どんなものがいいか早速、聞いてみますね。」
「よろしく頼む。」
春樹どのはすぐに電話で聞いてくれた。
「服に関してですが、新生児用はすぐに使わなくなるので、90サイズくらいが良いとのことでした。」
「90サイズとはどんなものなのか?」
「たぶん身長だと思います。お祝いを買うのなら、ショッピングモールよりも、デパートの方がいいそうですよ。」
「分かった。ありがとう。」
初詣へ行った後、春樹どのと一緒に爺やを連れて、デパートという店へ行った。
赤子の服が沢山だ!
「おお!何だこの小さい靴下は!」
「ふふ。凄く可愛いですね。」
「赤子というのはこんなにも小さいものなのか?」
「こちらの手袋を見てください。まるでおもちゃのようですよ。」
「本当だな!何と可愛らしいのだ!」
「やはり姫君となると、ピンクになるか。」
「こちらのジャンパースカートはどうですか?おむつ交換もしやすそうですよ。」
「春樹どのは詳しいな。」
「はい。先日、親戚の姉のところへ遊びに行きましたので、その時に見ました。」
「なるほどな。」
春樹どのと一緒に色々選びながら、赤子の服とおもちゃを購入した。
舐めても大丈夫だというおもちゃも多数あり、若干買い過ぎたようだ。次の満月の頃、天界の使者に頑張って運んでもらおう。
冬休み明け、学校へ行くと、何やら生徒達が私を避けておる。やはり私が美人だというのは真っ赤な嘘であろうか。きっとそうであろう…
ふう…と、ため息をついた。
「おはよう。」
教室に入ったが、級友達からの反応はない。
「ちょっと、かぐやちゃん!」
私の姿を見掛けるや否や、駆け寄ってきた小梅どのと松乃どのに引っ張られて、教室の隅へ連れて行かれた。
「かぐやちゃん、あの噂、本当なの?」
「小梅どの、噂って何だ?」
「春樹くんと一緒にベビー服を買ってたって噂だよ。」
「ああ、正月に行ったぞ。良い品が沢山あってな。買い過ぎてしまったので反省中だ。」
「っていうか、いつの間にそんな仲になってたの?全然知らなかったよ♪」
「そんな仲とは何の仲だ?松乃どのも買い物くらいは以前から行っておったであろう。」
「違うよ!赤ちゃんってことよ♪」
「赤ちゃん?やよい姉様の赤子のことか?」
「…」
「え?」
「まさか赤ちゃんって、かぐやちゃんのお姉さんなの?」
「そうだが、松乃どのがどうしてそんなに驚いておるのだ?」
「今、かぐやちゃんと春樹くんの間に赤ちゃんが出来たって、すごい噂だよ!」
「へ?小梅どのまで何を言っておるのだ?冗談がきついぞ。」
「本当だって!」
そこへ、走って登校してきた冬馬どのが、叫んだ。
「春樹はどこだ!まだ来てないのか!」
「冬馬どの、どうしたのだ、そんなに大声を出して。」
「いや、すまん。お腹に響くよな。」
「…?何を言っておるのだ?」
「大変大変!」
今度は秋人どのか。
「いやぁ、かぐやちゃんおめでとう♪」
「ありがとう。」
「男の子か女の子か分かってるの?」
「姫君だ。」
「楽しみだね♪」
「秋人どのまで、やよい姉様の赤子を喜んで頂けるとは、嬉しい限りだ。」
「…」
「へ?かぐやちゃんのお姉さんなの?」
「そうだが、さっきの松乃どのも同じ反応をしておったぞ。」
「おはよう。」
のんびりと、春樹どのの登場だ。と思ったら、冬馬どのがいきなり突っかかっていった。
「春樹!どういうことか説明して貰おうか!」
「冬馬落ちつけ!一体何の話だ?」
「煩い!かぐやをいつの間に!」
「これは止めた方が良いのではないか?」
「面白いから見ていようよ♪」
「秋人どのも人が悪いな。」
小梅どのが冬馬どのの腕にしがみついて、必死に止めておる。
「冬馬くん!赤ちゃんできたのは、かぐやちゃんのお姉さんだよ!」
「え?!そうなのか?」
「あぁ、もうネタばらししちゃった♪」
「完全に遊んでおるだろう、秋人どの…」
その後、春樹どのと二人で職員室に呼ばれ、やよい姉様の出産の説明をさせられた。
何やら皆がおかしな反応をすると思ったら、とんだ噂が立っていたものだ。
「春樹どのにも迷惑を掛けたな。」
「光栄ですよ。デパートでは新婚夫婦みたいにお買い物が出来て楽しかったですからね。」
その楽しみ方が、噂の原因であろう…