第46話・夜の観覧車は危険がいっぱい
冬馬どののお説教は春樹どのが仲裁に入り、終了した。その後、お化け屋敷へと行った。
「かぐやさん、お化けは平気ですか?」
「大丈夫だ。所詮は作り物であろう。」
迂闊であった。お化け屋敷とは怖いところではない。驚かされるところなのだ。
お化け屋敷に入ってすぐ、横からいきなりヒュッ!と何かが飛び出してきた!
「何奴!」
咄嗟に鉄拳を振るうと、首が取れた人形がぶら下がっておった。
あれ?もしかして、私が壊したか?
まぁ気にしないで先へ進もう…
井戸の前を通り過ぎると、いきなり「殺してやる!」と人間が!
咄嗟に回し打ちをしようとすると、春樹どのに止められた。
「かぐやさん、それは人形です!器物損壊になりますよ!」
そのまま進むと、角からいきなり地べたを這う輩が!
「うわっ!貴様!」
「かぐやさん、止めて下さい!この人は生きています!暴行罪になります!」
春樹どのに羽交い絞めにされた。
お化け屋敷を出て皆を待っておる時、春樹どのはぐったりしてベンチに座り、休んでおった。
後から出て来た冬馬どのが不思議そうな顔をして見ておる。
「どうした?春樹。そんなにお化けが怖かったのか?」
「いや、どちらかと言うと、いつ臨戦態勢に入るか分からないかぐやさんの引き止めに…」
「そうか…ご苦労だったな。」
先ほど見えた火花は気のせいだったのだろう。肩を叩き合って何か頷きあっておる。これが男の友情というものか。
周りも暗くなり、花火が打ち上がる時間となった。
「この辺りが絶景ポイントですよ。」
春樹どののお勧めだけあって、古城と重なって打ち上がる花火は圧巻だった。
「素晴らしい!良い眺めだ!」
「ふふ。かぐやさん、今日は感動しっ放しですね。」
「遊園地がこんなに楽しいものだとは思わなかったぞ!」
「また来ましょうね。」
「そうだな!」
「では、最後に観覧車から夜景でも眺めましょうか。」
「分かった。」
これも二人一組で乗り込んだ。
ゆっくりだが、少しずつ高くなる夜景を眺めておったら、小梅どの達が乗る籠が見えた。
「お?小梅どのと冬馬どのは写真を撮っておるな。」
「私達も撮りますか?」
「そうだな。」
当然そのまま撮り合いをするのかと思っておったのだが、向かい合って座っておった春樹どのが私の隣に移動し、乗っている籠がグラッと揺れた。
「うわっ!」
「すみません。揺れましたね。」
「て、っていうか、どうやって撮るのだ?」
「こうしますよ。」
春樹どのは腕を伸ばしてスマホを持ち、顔を近づけてきた。
「ち、近過ぎるであろう!」
「顔を離すと、二人一緒に写りませんよ。」
「春樹どのは私の心臓を壊す、確信犯か…」
「さあ、どうでしょうね。」
にっこり笑ってはぐらかされた。たぶん、引きつった顔で写真に収まったことであろう。出来ればその場で消去してもらいたいものだ…
「そ、そういえば、松乃どのたちも写真を撮っておるのか?」
話を逸らすために松乃どの達が乗っておる籠へ目線を向けた。
え?
あ、秋人どのが、松乃どのの頭を抱え込んでおる!も、も、もしやあれは、接吻ではないか?!
見てはいけないものを見た気がして俯いていたら、春樹どのがクスッと笑った。
「ふふ。ジンクスを実践しているようですね。」
「そ、そ、そのようだな…」
夜の観覧車は危険がいっぱいのようだ…
観覧車から降りて皆でホテルへ戻ると、部屋の中に食事が用意されておった。
その後は皆で食事をしながら話を楽しみ、トランプをしながら夜更けまで遊んだ。
チュン、チュン…
朝起きると、皆、リビングのソファーや床で寝ておった。ベッドルームなんぞ必要なかった気がするな…
帰りは、皆で春樹どのの車に乗り込み、帰宅した。
車の中では、成績順にパートナーの指名ができる卒業ダンスパーティーの話題となった。
「一位は頂きましたので、私の指名は、かぐやさんです。」
「春樹どの、私はダンスは…」
「大丈夫です。無理に踊らなくても、充分楽しめますよ。」
「それならば参加しよう。」
「しっかりエスコートさせていただきますね。」
「んじゃ、二位の僕はモチロン松乃ちゃんね♪」
「秋人、楽しみにしているね♪」
「ドレスとタキシードもお揃いを一緒に買いに行こうね!」
相変わらず仲良しである。
「じゃぁ、俺は四位だから…」
冬馬どのの言葉を皆で待った。
「まぁ、考えておくよ。」
ガクッ!
「え?そこは小梅ちゃんじゃぁないの?」
「小梅にも選ぶ権利があるから、無理強いは出来ないしな。」
冬馬どのは、本当に気付いておらぬようだな…
皆が小梅どのに同情の目を向けると、小梅どのは苦笑いしておった。
皆をそれぞれの自宅まで送り届け、最後に送ってもらったのは私であった。
「かぐやさん、今年のお正月のご予定はありますか?」
「いや、特にないぞ。」
「では、去年と同じように初詣へ行きませんか。」
「分かった。予定を空けておく。」
最近、春樹どのからよく誘われるな。そんなに私は暇な人間に見られておるのであろうか…