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第45話・初めての遊園地

 ホテルの人に付き添われて最上階へ上がり、部屋へ入ると、窓ガラス一面に遊園地が見えた。


「おお!凄い!これが遊園地か!」


あまりの眺めの良さに、すぐに窓際へ走って行ってしまった。


「かぐやさん、遊園地は初めてと言っていましたね。」

「そうだ。何やら楽しそうなものが沢山だ!あの動いておる車のようなものは何だ?」

「あれは、ジェットコースターですよ。後で一緒に乗りましょうね。」

「勿論だ!」


「夜の花火もとても綺麗ですよ。特に古城と重なって上がる花火は幻想的です。」

「それは楽しみだ!」


「そして、あの奥にある丸い円が、観覧車です。観覧車には幸せなジンクスがあります。」

「どんなジンクスだ?」

「頂上を通る時、キスした恋人は幸せになれるそうです。」

「そ、そうか…」


キスとは、接吻のことであったよな。恋人とは確か、松乃どのと秋人どののようにお互いを好き同士で仲が良いこと…


ふと気が付くと、春樹どのの顔がすぐ横にあった。


うわっ!


瞬時に顔にかぁっと血が上るのが分かり、咄嗟に離れてしまった。

春樹どのは苦笑いしながら、私から距離を取った。


「すみません。びっくりさせてしまいましたか。頬が赤く染まるかぐやさんを見ていたいですが、先に部屋の中を案内しますね。」

「ああ、頼む…」


「…まだまだか。」

「ん?何がまだなのだ?」

「いえ、みんなの到着が遅いなぁと思っただけです。」


バスルームやベッドルームなどを案内してもらった。中々の広さがある部屋であった。色々と見てまわっているうちに、冬馬どのと小梅どのがやって来た。


「電車で来ると遠いな。」

「ご苦労であったな。」


ちょこちょこっと小梅ちゃんが寄ってきて、小声で私に話し掛けた。


「かぐやちゃん達はどうだったの?」

「何がだ?」

「ここに着いてからだよ!」

「部屋を案内してもらったぞ。」

「それだけ?」

「それ以外に何かあるか?」

「いや…何でもない。」


変な小梅どのであるな…


暫く四人で秋人どのと松乃どのを待っておったが、冬馬どのが退屈そうに声をあげた。


「そろそろ夕方になりそうだけど、秋人たちはまだ来ないな。先に四人で遊びに行くか?」

「そうだな。」


「かぐや、遊園地初めてだったよな。案内してやるよ。」

「冬馬どの、案内は春樹どのにお願いしておる故、大丈夫だ。」


バチバチッ!


ん?今、何か火花が見えたような…気のせいか?


 四人で外へ出たところで、丁度秋人どのと松乃どのがやって来た。


「予定より遅かったな。」

「近くの海岸でデートしようかと思ってたんだけど、ファンの子達に囲まれちゃって、走り回ってきちゃった!」

「それは大変だったな。変装用サングラスはあるか?」

「もう暗くなるし、遊園地に入っちゃえば大丈夫だと思うよ♪」


ふと、松乃どのの顔が心なしか暗いように感じた。


「松乃どの、何かあったか?」

「ううん。ちょっと走り疲れちゃっただけ!」

「なら良いが無理はするなよ。」

「ありがとう、かぐやちゃん♪」


そこへ、見知らぬ姫君数人が寄ってきた。


「あの~。モデルの秋人さんですよね?」

「そうだけど、今日はプライベートで来てるんだ♪ごめんね!」

「もしかして長い黒髪の人が、彼女さんですか?」


わ、私か?


「違うよ~!こっち♪」


秋人どのが松乃どのの肩を抱き寄せると姫君たちは、ふ~ん、普通なんだ、と言いながら去っていった。


松乃どのの顔が一層暗くなった。


「本当に大丈夫か?」

「だ、大丈夫!ちょっとお手洗いに行ってくるね♪」


言い終わらないうちに走りだしてしまった。


「すまぬが、私も行ってくる!」


そう皆に告げて、松乃どのの後を追いかけた。


お手洗いで追いつき、もう一度声を掛けてみた。


「松乃どの、本当に大丈夫か?」

「かぐやちゃん…私、秋人の側に居ても良いのかな…」

「え?あんなに仲が良いではないか。」

「今日ね、ファンの子に彼女って普通だねって言われちゃったんだ。やっぱモデルしてる秋人の傍には綺麗な人が相応しいのかなぁと思ってね…」


「秋人どのがそんなことを求めておるとは思えぬが。」

「…」

「そなた達なら大丈夫だ。先に戻っておるぞ。」


何の根拠も無いが、何となくそう思った。

お手洗いを出たら、壁際に秋人どのがもたれ掛かっておった。話が聞こえていたのであろう。大丈夫だと頷いておるようだったので、そのまま先に皆の所へ戻った。


----------


松乃ちゃんがトイレから出てくるのを待っていたら、中からかぐやちゃんに愚痴る声が聞こえてきた。


秋人の傍には綺麗な人が相応しいのかなぁって、何だよ!

無性に腹が立った。僕に言ってくれない松乃ちゃんにも、言って貰えない自分にも!


出てきたところを捕まえて、建物の裏側へ連れて行き、逃げれないように壁に背中を押し付けた。


「…秋人、怒ってる?」

「めちゃめちゃ怒ってる。」


怒りをぶつけるように噛み付くようなキスをした。


息さえも絡み取るように何度も重ねた後、静かに離し、思いの丈をぶつけた。


「何も言えないくらい、僕は頼りない?」

「そ、そんな事は無いよ。ただ私に自信が無いだけで…」

「僕に相応しいかなんて、他人が決める事じゃぁ無い!僕が松乃ちゃんに、傍に居て欲しいんだ!」

「秋人…」

「不安になったら、何度でも言って。不安が無くなるまで何度でも愛しちゃうから♪」

「うん♪」


微笑み合いながらもう一度軽くキスをして、みんなの所へ戻った。


----------


 秋人どのと松乃どのが、いつもどおりの仲良しで戻ってきた。というよりは、いつも以上に仲良しな気がするのは気のせいか?

冬馬どのは相変わらず、バカップル!と言っておるが、いつもの光景が見られることに、安心した。



 さて、それでは初めての遊園地を楽しむとするか!

まずはジェットコースターだ。


「春樹どの、これはどんな乗り物なのだ?」

「凄く早く走りますよ。大丈夫ですか?」

「かなり楽しみだ。」


順番を待って、二人ずつ乗り込んだ。ガシッと肩から安全バーが下りてきて、いざ出発!


「ゆっくりと頂上に上がるのだな。」

「はい。下りる時に急加速しますよ。」


カタンカタン、ガン…ピューン!


おお!これは速い!面白い!

きゃ~♪と叫びながら、楽しく絶叫した。


「これは面白かった!もう一度行くぞ!」

「待って下さい、かぐやさん。小梅さんと松乃さんが無理そうです。」


見ると、二人ともぐったりとしておった。


「大丈夫か?」

「う、うん。かぐやちゃん平気なんだね。」

「凄く楽しかったぞ。」

「そ、そう…」


二人が疲れておるようなので、コーヒーカップのような乗り物へ行った。ここは冬馬どのと小梅どのも合わせた四人で乗ることとなった。


「中心にある円盤状のものを回すと、コーヒーカップがくるくると回りますよ。」

「ほう!おもしろそうだ!」


軽快な音楽が流れ、勢いよく回した!


「それ~!」

「うわ~!かぐや、回し過ぎだ!」

「かぐやちゃん、止めて!」


降りてから冬馬どのに、はしゃぎ過ぎだと怒られた…

春樹どのは苦笑いしておった。



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